順風満帆で2018年をスタートした株式市場だったが、雲行きが怪しくなっている。最近の株価急落の主犯はボラティリティとの指摘が多く、相場の安定に賭けてきたファンドほど大きな損失を被った様子だ。他方、株価が不安定になると輝きの増すのが有事に強い「金(ゴールド)」である。そこで、今回は2018年の金価格見通しについて、専門家の意見を紹介しよう。

2018年の金価格、専門家24名の見通しは?

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(画像=PIXTA)

1月30日、LBMA(ロンドン貴金属市場協会)は毎年恒例となっている専門家による貴金属市場の価格見通し「2018 Precious Metals Forecast Survey」を公表した。調査には34名の専門家が参加し、金価格については24名が見通しを示している。

結果を見ると、2018年の金価格の1トロイオンス当たりの平均値は1318ドル、高値は1510ドル、安値は1120ドルとなった。ただし、安値の平均が1215ドル、高値の平均は1381ドルであることから、1215ドルから1381ドルをコアレンジと見ることもできるだろう。

ちなみに、2月7日現在の金価格(ロンドン値決め、午後)は1324.65ドル、年初来の高値は1月25日の1354.95ドル、安値は1月9日の1311.00ドルである。つまり、2018年の予想平均価格1318ドルは最近のレベルを下回っており、専門家の見方はかなり慎重と見ることもできるだろう。

昨年の予想を振り返ると、2017年1月前半の平均価格が1181ドルだったのに対し、2017年の予想平均価格は1244ドルと予想時点での水準を63ドル上回っていた。今年は2018年1月前半の平均価格が1320ドル、2018年の予想平均価格は1318ドルとほぼ同水準であり、平均的にみると今年は上昇が見込まれていないと解釈することも可能だ。

昨年の予想では安値の平均は1101ドル、高値の平均は1379ドルとその差が278ドルあったが、今年はこの差も166ドルへと縮小しており、価格の変動も昨年より小さくなることが見込まれている。

昨年、価格を的中させた人物の予想は?

驚くべきことに、2017年の金価格の平均は1257ドルと予想された1244ドルをわずか1%ほど上回ったに過ぎず、事後的に見るとかなり正確な予想となっている。

その中でも、2017年の平均価格を1256ドルと予想したTD証券のバート・メレク氏が誤差1ドルとほぼ的中させている。次点は1259ドルと予想したGFMS(ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ)のロス・ストラチャン氏だった。

正確無比な予想に敬意を表して、メレク氏の2018年の予想を最初に見ると、平均価格が1313ドル、レンジは1195~1433ドルとなっている。平均では、現在の価格水準からは上がりも下がりもしないと予想していることから、スタンスとしては「中立」と考えてよいだろう。

メレク氏によると、実質金利が低いこと、米財政赤字の拡大が見込まれること、地政学的リスクへの警戒感といった点が金価格のサポート要因だ。また、減税でも米景気は過熱せず、したがってインフレ圧力も高まらないことからFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを急ぐ必要はないと述べている。

強気派は「株価の調整」に注目

平均値で最も高い予想は1381ドル(レンジは1297~1440ドル)で、予想したのはプレシャス・メタルズ・インサイトのフィリップ・クラップウィック氏だ。同氏はGFMSの元会長で同社のリサーチ部門の責任者として豊富な経験を積んだベテランである。

クラップウィック氏は、FRBを始めとする主要国の中央銀行は引き続き緩やかな金融引き締めを実施することが見込まれており、その結果、少なくとも現在予想されているよりは速いペースでインフレ率が上昇すると予想。これは実質金利がほぼゼロもしくはマイナスを維持することを意味しており、金にとっては追い風だ。また、米ドルの下落がドル建て金価格を押し上げると考えている。

さらに、投資家は株価や債券価格が高過ぎると考えており、もし価格の調整が始まるようだと金が資金の逃避先を提供することになると指摘。また、米国の外交政策は安定よりも破壊をもたらしているようにうかがえることから、政治的な緊張感の高まりも金の支援材料になるとしている。

続いての強気予想は、1370ドル(レンジは1275~1450ドル)を予想したメタルズ・フォーキャストのニコス・カヴァリス氏だ。

カヴァリス氏によると、2018年も過去2年と同様に好スタートを切っており、今年も上昇基調を続けることを匂わせている。年内に1450ドルまで到達した上で、平均は1370ドルになるとした。

強気の材料はドルが引き続き弱いという点にある。年内に2回もしくは3回の利上げは既に織り込まれていることから、実際そうなった場合には金利の上昇が金価格に与える影響はほとんど無視できるだろうと述べている。

加えて、大事なことは、遅かれ早かれ米国もしくはどこかの国で株価の調整が起き、金の追い風となることだと指摘。最近の株価急落を見事に言い当てている。

弱気派「好景気では金は輝かない」

弱気派に目を向けると、ソシエテ・ジェネラルのロビン・バー氏が平均価格1215ドル、レンジは1150~1400ドルと予想した。今後1年間の平均値は現在よりも100ドル程度低いとみているわけだ。

弱気の理由は低インフレにもかかわず、FRBが利上げを続けていることだ。金利を生まない金にとって金利の上昇は逆風になるとの見解だ。バー氏は、FRBは3月に追加利上げを実施した後、年内にあと2回(合計で年3回)の利上げがあるとみており、金利の上昇が金の保有コストを高めると述べている。

また、「地政学的リスクの高まりや景気の先行き不安が金をサポートすることもあるかもしれないが、現在の循環的な好景気、マーケットでのリスクオンの動き、株価の上昇などから金価格の上昇は続かないだろう」とも指摘している。

同様に弱気派として、ナティクシスのバーナード・ダダ氏が平均価格1250ドル、レンジは1120~1350ドルと予想している。ダダ氏の見通しでは、現在の価格からの上値余地はほとんど残されていないようだ。

ダダ氏によると、米国経済と世界経済の改善が金価格には逆風となり、2018年の金価格は低下すると予想。ただし、地政学的リスクや金生産高の減少が価格を下支えるので、下がるといっても下値余地は限定的だろうとも述べている。

「株価調整リスク」で金への関心が高まるか?

平均価格が2017年を下回ると予想したのは24名中、バー氏とダダ氏の2人にとどまっており、2人を除くと弱気派でも昨年とほぼ同じレンジでの推移を見込んでいる。したがって、総じていえば、専門家の価格見通しは上向きと解釈することもできるだろう。

また、24名中19人が高値で1400ドル以上を見込んでいることにも留意したい。そして、何よりも強気派のクラップウィック氏やカヴァリス氏が株価の調整を視野に入れている点に注目だ。

ダウ平均が過去最大の下げ幅を記録するなど、最近の株式市場は非常に不安定となっている。投資家が金融市場の先行きに不安を感じるようだと、カヴァリス氏が指摘する1450ドルも現実味を帯びてくるだろうし、今回の予想の上限である1510ドルも視野に入ってくるかもしれない。

最近の不安定な金融市場の動きを受けて、専門家の金市場に対する見方がよりポジティブになっても不思議ではない。1400ドル以上を目指すのであれば、10%近い上昇がまだ期待できるということになる。

いずれにしても、株価急落の余韻はしばらく続く恐れがあり、金投資を見直す動きが広がるのか注目されるところだ。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)