盗まないで投資すれば良かったかも
最終回である【第7回】では、2016年に造幣局職員が金塊を盗んだ事件をベースに、「もしも盗まずに同額投資していたらどうなっていたのか」というもしもの話をする。
結果論ではあるが、投資においては、あのときもっと買っておけば良かった、早めに損切りしておけば良かった、といったことが多々ある。今回の内容はその極端な事例だ。血迷わずに冷静な判断ができていれば、逮捕されず、なおかつ稼げていたことだろう。
本人にとっては後の祭りだが、ある意味後世の投資家に貴重なサンプルを提供している。今回のもしも話を読んで、反面教師として参考にすると良いだろう。
お堅いイメージがまとわりつく公務員といえども、1人の人間には変わりない。時には理性をコントロールできなくなるのだろう。
事件が発覚したのは2016年6月。なんと、造幣局の職員が展示品の約15キロの金塊を1つ盗み、逮捕されたのだ。硬貨や勲章を製造する権威ある機関での事件で、盗み出したものが金塊だったことも関心を高める効果があったと言えそうだ。
盗み出された金塊の評価額は約6384万円。決して少額ではない。しかし、金塊を盗んだ理由は「FXでの損失」だとしているが、もし金塊を盗むのではなく、金投資をしていれば、穴埋めできていたかもしれない。今回は、犯行時からの金価格の推移とともにシュミレーションしてみる。
有事の金、政府も資産として保有
紙幣や株式は、国家や会社の破産、スーパーインフレにおいては紙くず同然になってしまう。そんな恐れがある一方で、「有事の金」と言われるほど、金はインフレや国家破たんのリスクに備える現物資産として、ポートフォリオに組み込まれることもある。
各国の政府や中央銀行も外貨建ての資産である外貨準備に加えて、金を資産として保有する例も一般的だ。日本政府も2016年6月末時点で、2400万6000トロイオンス(1トロイオンス=約31.1グラム)を所有している。歴史的にも金は貨幣、貴金属として用いられ、世界各地でその価値が共有されてきた。年間約3000トン産出されており、原油や穀物などといった他の商品先物と同じく、市場で価格が決められる。
金投資にはさまざまなスタイルがあり、毎月定額での純金の積み立てや、金ETFも証券会社で取り扱っている。株式からの配当や債券の利息などのインカムゲインはなく、購入時より高い値段で売却したときのキャピタルゲインを狙うのが基本的な仕組みだ。
またオーストラリア・パース造幣局のカンガルー金貨、オーストリア造幣局のウィーン金貨ハーモニー、カナダ王室造幣局のメイプルリーフ金貨も人気で、10分の1オンス(約3.1グラム)単位から購入が可能だ。