急速に進んでいるのは円高ではなくて "ドル安 "
急速に進んでいるのは円高ではなくて "ドル安 "
急速に円高が進んでいる。
これは円高というより、ドル安だ。
その背景は、「トランプ政権が減税を決めたり、インフラ投資の拡大や予算教書に見られるような拡張的な財政政策を行うことに対して、アメリカの財政赤字急拡大への懸念が強まってドル売りに繋がっている」という解説が見られる。
その解説は間違っていはいないが、ただそういった懸念からドルが急落しているというのは誤っている。
将来的な財政赤字を心配してのドル急落という事態を避けるために、事前に、高すぎたドルを調整しておくという動きが今マーケットで起きているという風に解釈するのが正しいと考える。
ドル安でも、米国大統領はそれを口にしてはならない
トランプ政権による今回の減税は、レーガン政権以来30年ぶりといわれているが、そのレーガン政権で思い出されるのが1985年のプラザ合意だ。
それも同じくアメリカの財政を心配して、将来的にドルが暴落するの防ぐ為に政策協調でドル安にもっていったのがプラザ合意だ。
今年1月のダボス会議でムニューシン財務長官がドル安容認発言をした直後、トランプ大統領が強いドルを望むと打ち消したことは記憶に新しい。
ドル安でも、アメリカの大統領はそれを口にしてはいけないのだ。
プラザ合意の文言は『ドルを安くする』ではなく『非ドル通貨の上昇が望ましい』だった。
ドル高の是正は十分になされている
それと比較すると、ドル高の水準は比較出来ないくらい低いが、トランプ政権誕生でドル高になってきたことは間違いない。
ドル高を是正してここまでドル安円高にもってきた。
ドル高になる前の水準まで水準訂正は済んでいる。
ここから一段の円高ドル安になるということは考えにくい。
トランプ米政権は鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限案の具体的な検討に入ったと伝わった。
高関税にドル安の組み合わせでは、米国は外国からモノが買えなくなる。
困るのは米国の国民なのだ。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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