不動産投資では、通常の戸建てやマンション投資に加えて「楽器可」などの音楽物件への投資も考えられる。「ペット可」と並んで「楽器可」「演奏可」であることは、その物件を特徴づける要素といえる。入居者としては音楽を専攻している学生や、音楽愛好家、ミュージシャンらが考えられ、需要は一定以上はありそうだ。

音楽物件に入居する、音楽関係者・愛好家は、仕事や趣味で演奏、練習など音を出す機会が多く、継続的に部屋が必要となる。そのため一度賃貸契約を結ぶと「近隣とのトラブル」など、よほどのことがなければ住み続けてくれるだろう。

想像するに、数は多くないかもしれないが、一定のニーズはありそうだ。特別な設備が必要なため賃料を高く設定しやすいことなど多くのメリットがあるが、それは物件の価格が高いということの裏返しでもあるし、実際に入居者を迎えてからの運営・管理においても、騒音問題が発生しやすいなどデメリットもあるだろう。

楽器可・音楽物件への投資を考える際のポイントを整理してみよう。

楽器可、音楽物件への投資とは?

不動産投資,マンション投資
(画像=PIXTA)

不動産投資対象の「音楽物件」を細かく分類すると、以下のようなものがあるようだ。

  • 楽器相談マンション
  • 楽器可マンション
  • 音楽専門マンション
  • 防音マンション

注意したいのは、一般に、前者の2種(楽器相談、楽器可)は防音設備が整っていない通常のマンションと同じ構造の場合も少なくないことだろう。この場合、「昼間の時間帯のみ演奏ができる」などの条件が決まっており、いつでも演奏ができるような設備が整えられているわけではないことが多い。

それに対して、後者の2つ(音楽専門、防音)は、壁や床が防音構造となっており楽器や音楽機材などの演奏がしやすい。

当然、設備が整っているほうが物件の価格としては高くなるため、家賃も高くなる。家賃が安ければ入居者は決まりやすいだろうが、設備がないことから騒音がトラブルのもとになる可能性はあるとみておいたほうがいい。

たとえばある建設会社の関係者は、こうした物件は、通常の物件と比べて建設に5%ほど高く費用がかかる。しかし設備のおかげで、家賃を通常の相場より1割ほど高くできると指摘している。こう考えると初期投資はかかってもしっかりと回収はできるのではないだろうか。

楽器可などとうたっていても、楽器により可否の線引きがされている物件もある。賃貸物件を探すWebサイトなどで物件を絞り込みをする際にピアノ、管楽器などで分けられていることもあるようだ。さらに、ピアノといってもアップライトしか置けない物件もあれば、グランドピアノが置ける広さの物件もあり、実は種類はさまざまあるのだ。

入居したい人は大手の不動産情報サイトで絞り込み検索ができるだけでなく、音楽物件の検索サイトもあるので、効率よく物件を探すことができるようだ。2016年12月に誕生した「楽器可」「楽器“相談”」の物件のみを集めた検索サイト・カナデルーム(エフ・ディ・エス)には約2万8000件の物件情報が掲載されている。

ちなみに物件は音楽大学の近くに多く存在するようだ。音楽大学でなくても、芸術学部を抱える大学であれば音楽関連の授業をしており、大学の近くには楽器可のマンションなど物件が乱立しており、投資する物件を探しやすい。

例えば、関東圏では東京音楽大学がある豊島区に投資対象となる物件が多くある。関西圏では、大阪音楽大学がある豊中市が投資対象エリアとなるようだ。

音楽関係者・学生以外のニーズ

こうした物件に住むのは、何も「楽器演奏」の目的で入居した「音楽関係者」だけではない。たしかに一般的な用途としては、「プロのミュージシャンのスタジオとして利用」「作曲家のプライベートスタジオとして使用」「趣味で楽器を楽しむ一般ユーザーの本宅」「プライベートで楽器や音楽機材を利用する一般ユーザーの別宅」「音楽先行の学生のレッスン場」などだろう。

しかし、このほかにも「AV機器を揃えて大音量でプライベートシアター(映画鑑賞)を楽しみたいユーザー」「都会の騒音に備えて防音設備を求める一般ユーザー」もいると考えられる。

さらに、楽器可マンション投資のポイントとして、ダンス授業が中学校で必修化されたことも見逃せない。ダンスの必修化にともない、ダンス教室やダンススクールに通う児童生徒も増えているはずだ。防音対策が施されたマンションではダンスの練習がしやすく、賃貸契約の際のプラス条件になりやすい。またダンスでは専門のダンスミュージックを視聴することが多く、楽器可の時間帯があるマンションもアドバンテージとなる。

次に防音構造についても考えておきたい。まず賃貸マンションの構造を大きく分類すると、次の3種がある。

  • 木造
  • 鉄骨造
  • 鉄筋コンクリート造

木造が1番音漏れしやすく、鉄筋コンクリート造りが最も防音に優れている。防音対策がなされている窓や玄関ドアが導入されている部屋も音漏れが少ない。防音室を置くことで対応している物件もあるが、一般にこうした専門マンションの防音・騒音対策としては、二重サッシや遮音性の高いドアを使ったり高密度のコンクリートを採用したりしているようだ。

実際、プロ仕様の音楽専門マンションでは、生ドラムを思いっきり部屋の中で叩いても、防音ドアを閉めると廊下や隣の部屋にはほとんど音が響かない状態になる。「三重防音構造」となっているマンションもあるため、投資を行う際には詳しく確認しておく必要がある。

こうした設備がある物件を選ぶほかにも、騒音対策は必要だろう。良い防音設備を導入しているマンションに投資するのが安全だが、投資金額は高くなってしまう。投資費用を抑えて楽器可マンションに投資するには、「夜間は演奏禁止」を条件としているマンションに投資することになるだろう。

専門の不動産業者を選ぶ

楽器可マンションなど音楽物件への投資のポイントとして、音楽専門の不動産業者を選ぶという点も考えておきたい。

一般的な不動産投資会社でも楽器可の物件は取り扱っているが、物件数が少ないところもある。また防音の技術などは音楽業界のジャンルとなり、建築業界の企業である住宅メーカーでは大手でもノウハウを持っていない場合がある。

このあたりはWebサイトでも似たようなことがいえそうだ。不動産検索サイトでも多くの物件が検索できるが、専門物件に特化して紹介しているWebサイトのほうが物件の種類は豊富と考えて差し替えないだろう。

東京都内など都市部には、この手の物件を専門とする不動産業者が多いので実際に投資をおこなう時には問い合わせてみると良い。

人との関わりを生む音楽物件

楽器可・音楽物件の魅力は、実は人とのかかわりを生む物件であることも挙げられる。

よく都市部では人間関係が希薄とされ、賃貸マンションに住んでいても「隣人の顔さえ知らない」、「あいさつをしたこともない」ことが多いといわれる。

その点、音楽物件では音楽という共通の話題があるため交流が生まれやすい。共通の音楽スタジオがある賃貸物件などでは、入居者同士でも会話をする機会があるだろう。

入居者同士に限らず、一緒に住む家族の間でも、一緒に楽器演奏をするチャンスも生まれるなどコミュニケーションを図ることができそうだ。入居者が自宅にプライベートスタジオを構築すれば、知り合いや友人が訪れ、このことも人との関わりや交流を深めることになる。楽器可マンションなど音楽物件に投資することは、このような音楽を間に挟んだ人の交流を生み出す可能性があり、売り上げを生みながらも社会貢献となる。

楽器可、防音など音楽物件への投資は初心者にはハードルが高いと思われるかもしれないが、入居者が入りやすいなどのメリットもある。音楽に興味がある方なら、リスクにさえ十分に注意すれば、楽しみながら不動産投資・管理ができるかもしれない。(ZUU online編集部)

【お詫びと訂正のご案内】記事公開時、楽器の演奏可能な物件を「音楽マンション」と総称しておりましたが、こちらは越野建設株式会社の登録商標であるとのご指摘をいただきました。同社および関係者の皆様にお詫びし、表現を変更いたします。