英語を避けて通ることはできない

上野巨志,英語上達の秘訣
(画像=The 21 online)

「あなたは英語を勉強しますか?それともビジネスマンを廃業しますか?」

これは、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリング社長である柳井正氏の言葉です。ご承知の通り、「社内の英語公用語化」はユニクロや楽天から始まりました。そしてこの動きはこの2社だけに終わらず、今や日本人全体の課題としてクローズアップされています。柳井社長のインタビューをもう少し詳しくご紹介します。


日本人のほとんどは、これまで追い詰められてこなかったのです。今、何か日本の中だけでいろいろなものが完結すればいいという風潮が、若いビジネスマンの間にあるようですが、しかし私は、「アナタは、それでは生き残れませんよ。ビジネスマンを、廃業しますか?」と言いたいですね。(「2020 VALUE CREATOR」302号より)


ユニクロの英語公用語化において、各人の目標はTOEIC700点以上に設定されています。これはかなりの高レベルで、本気で勉強しないと追いつかないでしょう。「英語公用語化」について異を唱える評論家もいますが、現実的には、これが企業トップの考え方です。

もちろん一般のビジネスパーソンには、それほどの危機感はないのかもしれません。それでも「これからは英語ができないとヤバイかも?」と不安に感じている人は少なくないでしょう。現実問題、現代のビジネスパーソンが英語を避けて通ることはできないのです。

何から手をつけたらいいのかわからない

仮に現在は英語を必要としない仕事をしていたとしても、いつ英語が必要な部署に配属にならないとも限りません。突然、上司が外国人になった、などという話も珍しくなくなっています。

私が代表を務める(株)東京SIM外語研究所には、今まで全く英語を使ってこなかったのに6ヵ月後に海外赴任することが決まった、どうすればいいのか、といった類の相談が多く寄せられています。いつかやらなければと思いつつ、多忙な日常に追われて英語の勉強まで手が回らないという方が少なくないようです。

しかし、もうすでに英語スキルの取得は待ったなしのところまできています。英語の勉強を後回しにする余裕などないのです。ではどうすれば良いのでしょうか。何から手をつければ良いのでしょうか。英語を勉強しなければならないのはわかっているけれども、何をどうすればいいのかわからない、というのが多くのビジネスパーソンにとっての実情のようです。

多くの日本人が、学生のときのように参考書を破れるまで読み込む、単語をできるだけたくさん覚える、英会話スクールに通うなど、思いつく限りの方法で勉強をします。それでもほとんど成果をあげられずに途方に暮れてしまっているという現実があります。

ネイティブ思考法を身につける

もちろん、参考書を読んだり単語を覚えたりすることは悪いことではありません。英語を使いこなすのに、文法や単語を覚えるのは必要なことです。ただ、その知識を実践の場で発揮するにはどうしても身につけておかなければならないスキルがあります。それはずばり、「ネイティブ思考法」です。

ネイティブ思考法とは、ネイティブが自然とやっているように、英語を英語の語順のまま理解することです。英語を聞くときも読むときも、耳に入ってくる、あるいは目に入ってくるものからどんどん自分の中で消化し、理解する思考法のことです。

ただし、語順が英語と正反対の日本語が体に染みついている日本人がネイティブ思考法を身につけるのは、簡単なことではありません。英語を聞くとき日本人はとかく、一文を最後まで聞いてから「いま何と言ったのかな?」と戻って考える傾向があります。英文を読む際も、まず一文を最後まで読んでから、最初に戻って理解しようとします。

例文をあげてみましょう。

I was reading a book which my father gave me yesterday.

という英文があるとします。これを、「私は昨日、父が私にくれた本を読んでいた」という整った普通の日本語にするためには、以下のような順番で読まなければなりません。

上野巨志,英語上達の秘訣
(画像=The 21 online)

これではじめて、普通の日本語になります。このように、日本語と語順の違う英語を、日本語の語順に置き換えて、行ったり来たりしながら読む読み方を、「返り読み」と言います。

「返り読み」は、一般の日本人が学校で習う英語の読み方ですが、実はこれには致命的な欠陥があります。それは、文頭から文末まで行ったり来たりするので、「あまりにも時間がかかる!」ということです。

ビジネスで手紙やメールを読むにしても、また、TOEICの膨大な問題を読むにしても、私たちは、時間をかけてはいられません。

語順通りに読めば、理解スピードが格段に上がる!

この「返り読み」の問題を一挙に解決し、ネイティブ思考法を身につけるのに役立つのが、私が提唱している「SIM同時通訳方式」です。「SIM同時通訳方式」は、東京SIM外語研究所が開発した英語学習メソッドで、「外国語学習システム」の名称で特許を取得しています(特許第6231510号)。

先の例文に戻りましょう。「SIM同時通訳方式」ではこの英文を下記のようにセンスグループ(意味のまとまり)ごとに区切り、その都度、内容を理解していきます。

上野巨志,英語上達の秘訣
(画像=The 21 online)

このように英文をセンスグループ(意味のまとまり)ごとに区切り、そのセンスグループごとに、「英語の語順」に沿って読み進むので「返り読み」をすることなく、文頭から文末まで一直線に理解でき、一文を読み終わると同時に全体の意味が取れているのです。

これはリスニングのときも同じです。耳に入ってきた英語をフレーズごとに意味をとっていけば、一つの文を聞き終わってから「いま何と言ったのかな?」と戻って考えるのではなく、聞き終わると同時に内容が理解できているという状態になるのです。

そもそも、「いま何と言ったのかな?」と考えているうちに、相手は次の発言に移っているので、これでは会話についていけないのは当然です。「ネイティブ思考法」を身につけることが必須だということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

効果的なトレーニング方法とは?

ではいったいどうすれば「ネイティブ思考法」が身につくのでしょうか。それは簡単なことではありませんが、トレーニングを積めば比較的短期間で身につけることができます。

そのための方法として我々は、強制的に英語の語順で考えざるを得ないように工夫された教材である「Hop,Skip&Jump音声」を用意しています。

こうした専用の教材を使わない場合は、英語を聞くときにフレーズ毎に意味を取ることを心がける、またフレーズ毎に意味をとりながらの音読など、英語の語順を意識した学習方法をすることで、時間はかかりますがネイティブ思考法を身につけることは可能です。これは今すぐにでも始められますから、ぜひトライしてみてください。

結局、日本人はネイティブ思考法が身についていないから英語が上達しないのです。逆に言えばネイティブ思考法を身につけさえすれば、どんどん上達するのです。

ただしそのためには、どうしてもトレーニングを積むことが必要になります。残念ながら1日5分聞き流すだけではダメなのです。

一人でも多くの方がネイティブ思考法を身につけることで、英語を自由に使いこなすことができることを願ってやみません。

上野巨志(うえの・たかし)東京SIM外語研究所所長
ロングセラーの英語教材「スーパーエルマー」シリーズを展開する(株)東京SIM外語研究所所長。同教材で勉強した受講生からはTOEICテストリスニング満点者が多数出ている。自身はTOEICテスト総合990点満点保持者。著書に『ネイティブ思考英語勉強法』『ネイティブ思考英会話トレーニング』『ネイティブ思考TOEIC L & Rテストスコアアップ完全対策』(ペンネーム:ダン上野Jr. /あさ出版)がある。(『The 21 online』2018年01月26日 公開)

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