不動産投資では複数の物件を所有して運用している投資家も少なくない。不動産は投資・物件一件あたりの投資額が小さくないため、特に初心者やこれから投資を始めようという人の中には、数千万円、数億円の物件を複数持つと考えて驚く人もいるかもしれない。しかし、複数物件の所有には、空室リスクの軽減以外にも様々なメリットがある。むしろ複数持つほうが効率的とさえいえる。特にサラリーマン・OLとして給与所得のある大家は、そのメリットの恩恵を享受しやすいと考えられるという。不動産投資を始め、最初の物件でそれなりの成功を収めた投資家が、次の物件を考える時のポイントについて検証してみた。

利益がさらに利益を生む

不動産投資,コツ
(画像=PIXTA)

OLも含むサラリーマン大家は給与所得があるので、不動産投資で得た収益は副収入としてプールできる。不動産投資を勧める人のなかには「むしろそうでなければサラリーマン大家になる意味がない」とまで言う人までいる。将来のために貯蓄する手もあるが、収益を新たな物件に投資するために活用する手もある。

たとえば、最初の物件で年間100万円入ってくれば5年で500万円を貯蓄できる。それを頭金にして次の物件の投資に移ることができる。

ここでポイントなのは、自己資金ができたことだけでなく、5年の経験と実績があることだ。一つの物件がうまく回せている点については金融機関から評価されるため、新たな融資が受けやすくなる。単純に同程度の収益物件を得て回せるとすると、キャッシュフローが2倍になるわけだ。所有物件が増えれば管理などの手間も増えるが、管理運営の専門業者を活用すれば然程の負担にはならない。

しかしこれは、2件(2軒)とも収益性の良い物件であることが前提である。もし2件目の収益性が悪化すると、まったく逆の結果になって負のスパイラルに陥るリスクがある。そうならないためには、以下の点を考慮して物件選びをする必要がある。

築年数の違う物件を選ぶ→修繕リスクを軽減・補てんできるから

まず築年数や程度の違う物件を選ぶことが大切だ。なぜなら建物はつかっていると修繕費用が必要になる(経年劣化)。同じくらいの築年数や程度の物件に投資すると、出費時期が重なり資金繰りが悪化する可能性がある。

しかし築年数が異なる物件であれば、修繕リスクを分散できる。物件ごとに計画的に修繕費を積み立てることが原則だが、場合によってはA物件の修繕費用をB物件の収益で補てんすることも可能になる。

たとえ1物件目、2物件目と別々の時期にかっても、それらの物件の築年数や程度が同じではあまり意味がないので注意しておきたい。ここでポイントなのは投資時期の分散ではなく、投資対象の分散なのである。

複数の物件からのキャッシュフローが生み出されるようにしておけば、いずれかの物件で不測の事態が生じても対応可能な資金ができるし、それは精神的な余裕にもつながるだろう。

エリアの異なる物件を選ぶ→自然災害などのリスクが分散できるから

自然災害を受けるリスクを下げられる点も物件を複数持つことによる利点といえるだろう。数ある災害のなかでも、たとえば火災は人為的な努力や工夫である程度は防ぐことができるが、地震などの自然災害は限界がある。1物件しか持っていないと、その物件が被害にあうなどして住めなくなれば、収入が途絶えてしまう。

しかし複数の物件があって、同じように被災していなければ、そちらからの収入は継続するわけで、収入がゼロになるわけではなく、傷は浅くて済む。

さらに被災後の対策でも考えておかなければいけないことがある。たとえば大地震で被災した物件を修復する場合を考えてみよう。区分所有なら一棟物に比して修繕費用が少なくて済む。しかしほかに所有者、関係者がいるわけで、意見をまとめるのが難しい。一方、一棟物は費用が掛かるがオーナーの判断一つで事を進められることもある。一長一短ありそうだ。

地震などの災害を想定すると、同じエリアで同じタイプの物件を所有するのはリスクが高い。その点を考慮すると、なるべく離れたエリアの物件を探すことになるだろう。また区分と一棟物の両方を持つということも考えるといいかもしれない。

もちろん管理がしにくくなるなどのデメリットも生じるため、そうした点も考慮して検討を進めるといいだろう。

エリアの異なる物件を選ぶ→固有の事情による需要減少のリスクも分散可

異なるエリアで物件を選ぶことで、最初の物件に固有の状況変化に対応することができる。例を挙げると、最初の投資物件は近くに大規模な事業所や工場、大学のキャンパスなどがあって安定した需要が見込めたとしよう。そのニーズを見込んで物件を買っても、企業がリストラしたり工場を閉鎖したり、大学が移転したりすると、その周辺に住む必要がなくなって転居する人も増えるだろう。当然、その物件の客付けが難しくなる可能性が高まる。

2番目以降の物件を最初の物件と同じエリアに持つと、プラス事情を同時に享受できるが、事情が変わった場合に両物件とも同じダメージを被ることになる。やはり同じエリアで複数の物件を所有するのは、この点においてはリスクがあるといえるだろう。

地域的な事情だけではなく、社会情勢の変化なども考慮に入れて物件を所有する必要がある。たとえば首都圏で考えた時、郊外の団地エリアなどは一昔前は人口が多かったものの、最近では空室の多い団地も増えているという。社会や住環境に対する意識の変化を見越して、大きな視点で物件を探すエリアを検討する必要があるといえるのかもしれない。

いずれにせよ異なるターゲット層にフォーカスした物件を所有することで、幅広いリスクヘッジが可能になるといえるのではないだろうか。「卵は同じかごに盛るな」という、分散投資をうながす格言は不動産投資でも通用するのだ。

複数のローンをまとめて借り換えできてお得になる

一般に不動産投資では、物件ごとにローンを組むことになる。しかし当然、借り入れをする時期や金融機関によって金利などの条件は異なる。昨今は長らく低金利状態が続いている。もしかしたらひと昔前に借りたローンも、今借り直すことで、低い金利での借り換えができるかもしれない。

昨今、投資用物件に対する融資は、物件の担保価値より収益性に審査の重点を置く金融機関が増えているといわれている。このため、収益性の良い物件を複数所有していれば金融機関の評価が高く、借り換えのハードルが低くなると考えられるのだ。

このとき、安い金利のほうに複数のローンをまとめて借り換えすることができれば、金利負担を軽減してキャッシュフローを押し上げることが可能になる。ただし、残債や借入期間によっては手数料が金利の減額分を上回ることがあるので、物件ごとに効果を検証する必要があることも忘れてはいけない。

相続や利回り向上を考えても複数所有は検討しておきたい

このほかにも投資不動産物件の複数所有を考えておきたい事情や理由はある。たとえば相続。一件しか持っていなければ相続できる物件は一つだが、複数持っていれば分配相続はしやすくなる。もちろんそれにも限界はあるだろう。相続させたい家族・親族の数だけ物件をもつわけにもいかないだろうし、そもそも資産価値にも差は出るだろうからだ。しかし、分配がしやすくなるという点では、複数所有を考えてもいいのではないだろうか。

またそもそも不動産投資は利回りに限界がある。低金利時代の現在、多くの金融商品よりは利回りは高めといえるかもしれない。しかし不動産を転売することで得られるであろうキャピタルゲインではなく、月々の賃料によるインカムゲインを期待して行う不動産投資においては、大きなマイナスはない反面、大きなプラスにもなりにくい。こう考えると、一つずつの物件から得られる収入を増やすというより、収入減を増やすことでトータルの収入を増やすという発想を持っても悪くない。

エリアや条件などの異なる物件に投資する際は、最初の物件への投資、運用で成功したノウハウが通じない場合もある。そうした点には十分気を配りながらも、複数物件への投資を検討するといいだろう。(ZUU online編集部)