昨日の海外時間には、トランプ米大統領が鉄鋼とアルミ製品に輸入制限をし追加関税をかける方針、としたことからNYダウが下落し、米長期金利が低下する中ドル売りが強まりました。

今後の見通し

FXプライム,高野やすのり,市況解説
(画像=PIXTA)

トランプ米大統領は、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明しました。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課します。主な対象は中国ですが、日本、韓国など他の国々に関しても対象となる見通しです。今回の措置は今秋の中間選挙に向けて、保護主義的な姿勢を打ち出すことで支持拡大を狙った物と考えられます。しかしこうした措置はアメリカ国内の鉄鋼、アルミメーカーにとっては恩恵がある一方、自動車メーカーなど製品購入側には大きなマイナスの要因となります。その結果昨日のNYダウは420ドルと大幅安となって、米長期金利も低下してドル売りとなりました。アメリカの保護主義の高まりは、世界経済にとってもマイナスの要因と考えられることから今後世界的な株価の下落、リスク回避の動きで円買いが強まると考えられます。

一方週末には欧州で政治イベントが控えています。ひとつはイタリアの総選挙です。反EU的な「5つ星運動」が主導する政権となった場合は比較的大きくユーロが売られると考えられます。ただしその確率は非常に小さく、実際にはベルルスコーニ元首相(本人は立候補できず)率いるフォルツァ・イタリアとレンツィ前首相の民主党と大連立の可能性が高いとされています。

またドイツではメルケル首相のCDU/CSUの大連立の相手であるSPDの大連立の是非を問う党員投票の結果が判明する予定で、もし否決されれば再選挙の実施か少数は政府の誕生となって、ドイツの求心力が低下してやはりユーロ売りが強まると考えられます。

ポンド円での売り持ちを継続

148.50円でポンド売り円買いのポジションを作りましたが、引き続き148円乗せに損切りラインを置いて、142円程度での利食いを目指しています。

昨日の海外市場動向

欧州時間、ドル円は106.80円付近のもみ合いが続きました。一方欧州株が軟調な取引となったことからユーロ売りが優勢となって、ユーロドルは1.2160台まで、ユーロ円は129.80円台まで下落しました。

NY時間にはいると、発表された米・1月個人所得、米・新規失業保険申請件数、米・2月ISM製造業景況指数が予想よりも良い結果だったことから米長期金利がやや上昇し、円売りが優勢となって、ドル円は107.20円付近まで、ユーロ円は130.70円付近まで上昇しました。この間ユーロドルは1.2150台まで下落したあと1.2200台まで反発しています。

その後パウエルFRB議長が「賃金インフレが加速点に達していることを示すものは何もない」と述べたことから米長期金利が低下を始め円買いが強まりました。NY時間午後にはいって、「ECB来週の理事会で緩和バイアス削除を検討」と報じられたことからユーロ買いが強まって、ユーロドルは1.2220台まで上昇しました。

さらにトランプ米大統領が「鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品には10%の追加関税を課す方針」としたことから各国株価が下落し、米長期金利が低下してドル売りが優勢となって、ドル円は106.10円台まで下落し、ユーロドルは1.2270台まで上昇しました。この間ユーロ円は129.70円台まで下落したあと130.40円台まで反発しています。

今日の予定

今日の海外時間には、独・1月小売売上高指数、英・2月製造業PMI、英・2月建設業PMI、ユーロ圏・1月生産者物価指数、米・2月ミシガン大学消費者信頼感指数の発表が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp