3月4日(日)には、注目のイタリア総選挙の投開票が行われる。今回のイタリア総選挙はどのような展開を迎えるのだろうか。ここでは確認しておくべきポイント5つを紹介する。

イタリア,総選挙
(画像=PIXTA)

これまでの欧州諸国の選挙動向

これまで2017年3月に行われたオランダ下院選では、急進右派のオランダ自由党が第2党へと躍進し、続く4、5月のフランス大統領選でも、極右である国民戦線のルペン党首が決選投票にまで進んだ。また、9月のドイツ下院選では極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党となった上、10月にはオーストリア下院選で極右の自由党が第3党となって政権入りし、副首相をはじめ重要ポストのいくつかを手に入れるに至っている。

さらに同月に行われたチェコ下院選でも、「不満を持つ市民の行動(ANO)」が勝利し、「チェコのトランプ」の異名を持つバビシュ氏が首相の座に就いた。傾向としては、極右の台頭や躍進が目立つようだ。

(1)新しくなった選挙制度

今回のイタリア総選挙において、まず注目しておくべきなのは、今回の総選挙が2017年11月に施行された新選挙法に基づいて行われることだ。従来異なっていた上下院の選挙制度がほぼ統一され、上院の議員定数315および下院630について、いずれも36.8%が小選挙区制、残りが国内の比例と若干の在外選挙区に割り当てられることになる。要は「小選挙区・比例代表並立制」が採られるということだ。

(2)五つ星運動を狙い撃ち

新選挙法で見逃せないのは、同法が「五つ星運動」を実質的に狙い撃ちにしているとみられる点だ。かつてはEU離脱の是非を問う国民投票の実施を主張していたこともあるなど、大衆の持つ不満を率直に支持するポピュリズム政党として「五つ星運動」は国民の中・下流層から圧倒的な支持を得てきた。ちなみに「五つ星」とは、発展、水資源、持続可能性のある交通、環境主義、インターネット社会という、社会が守り抜くべき五つの概念を指している。

(3)政党連合を作ることが認められた

新選挙法は、事前に「提携宣言」をすることにより、各政党が「政党連合」を作ることを認めている。これにより小選挙区では複数政党の中で候補者の一本化が図れる上、比例区についても、単独では最低得票率と定められている3%を確保できない政党も、政党連合によって議席の確保が可能になったのだ。

また、小選挙区で投票する対象となる候補者は、比例区の政党・政党連合と一致していなければならない。もし小選挙区で「馴染みの候補」を選んだ場合には、比例区でもその候補が属する政党・政党連合を選ぶ必要がある。いかに「五つ星運動」が単独政党としては支持率トップだったとしても、「北部同盟」などの地方政党に代表される「顔の見えやすい政党」と比べれば、不利な状況に置かれていることに間違いはないだろう。

(4)どの政党・政党連合も単独過半数には届かない?

今回の総選挙で候補者を擁立している政党は30近くに上るが、有力なのは「右派連合」「中道左派連合」「五つ星運動」、および左派の「自由と平等(LeU)」の4グループとなる。この中で支持率を徐々に高め、現在では37%以上を占めていると見られるのが「右派連合」だ。

新選挙法の下での議席獲得数を推測することはなかなか困難だが、どの政党・政党連合も単独で過半数を占めることは出来ないだろうという見方が大勢を占めている。それぞれのイデオロギー面での相違を考慮すれば、左右の中道政党による大連立くらいしか過半議席を獲得できそうな組み合わせが考えられないのが現状なのだ。

(5)従って組閣まで長期化する可能性も

2013年2月に行われた前回の選挙では、結果として左右大連立内閣が組閣されるまでに約2カ月を要した。今回はさらに組閣が長期化する可能性も否定できない。選挙の結果次第で「大連立政権」や「右派主導政権」など、様々な可能性が考えられる。もし五つ星運動と北部同盟の連立による「ポピュリスト連合政権」が生まれるようなことになれば、将来ユーロ離脱の国民投票が実施されることも考えられ、いきおい政権が不安定化する懸念が高まることになる。(ZUU online 編集部)