今年の春節(旧正月)休みでは、少なくない人がスキー場での新しい体験を楽しんだ。往年に比べ、滞在レジャー型となっている。休暇中、各地スキー場の入場者数は、前年比15%以上伸びた。また北京市が春節休暇中に行った、2022年冬季オリンピックに向けた55項目の組織的活動のうち、17項目はスキー、スケートに関するものだった。
一方、平昌オリンピックの中国メダル獲得は、金1、銀6、銅2、国別ランキングでは16位に終わった。目立ったスター選手は存在せず、盛り上がりを欠いた。しかし産業としては順調な発展を見込んでいる。ニュースサイト「騰訊体育」などが、今後の見通しを伝えている。2022北京冬季オリンピックは大丈夫だろうか。
各地とも活況だが……
有名なハルピンの冰雪大世界(氷まつり)では、旧正月3日の入場者数が4万4800人を超え、1週間のトータルでは20万人に及んだ。スノーモービル、ソリを始め30種にのぼる無料施設を用意したこともあり、人気は爆発した。高齢者と子どもたち、が仲良く凍結した川でスケートを楽しむ姿があった。
新疆地区のスキー場でも、火山の噴火状態となった。阿勒泰市将軍山スキー場には、休暇中1万3600人が訪れた。1日の最高は2200人、期間中の収入は272万元に達した。駐車場は全国各地からの車で常に満杯であった。
中国体育報によれば、中国は世界スキー人口の2.8%を占める。しかし国民への浸透率は0.4%に過ぎず、とてもウインタースポーツの先進国とは呼べない。それを2022年の冬季オリンピック開催までに、5000万人、3.6%まで引き上げるよう提言している。
各種データは良好
別資料(国家統計局)によれば、2017年のスキー人口は全体の1%である。これは海外に比べ大幅に低い。韓国6%、米国8%、日本9%、フランスは13%である。さらに中国スキーヤーの80%は初級レベルにすぎない。
しかしスキー場の数は着実に増えている。2012年の348カ所から、2016年には646カ所と5年間で1.85倍に増加している。21世紀以降、廃業や休場が続いた日本とは、真逆である。
その2016年、中国のスキー産業規模は3647億元だった。これは5年後の2020年には6152億元と、1.69倍になると見積もられている(1元=16.61日本円)。
スキーの目的地をみると、地域的偏りが大きい。黒竜江省18.6%、北京市18.5%、河北省12.9%、吉林省8.4%、遼寧省4.6%、新疆ウイグル自治区4.2%、の上位6省市で全体の3分の2を占めている。東北三省と北京周辺に集中している。
2017年8月、スキー旅行に行く計画のある人にインタビューしたところ、5000元以上という高い予算を立てている人は24.3%いた。その他1000元以下41.8%、1001~3000元23.0%、3001~5000元10.9%であった。かなりの額を消費する一群なのは間違いない。
リーダー不足
しかし、1980~90年代のスキーブームを経験した日本人の目から見れば、中国スキー産業基盤はまだまだ不十分である。スキー場の設備もたかが知れている。どうやってスキー人口を増やすのか。記事は3つを挙げている。
1 スキーに興味を持ち、積極的にスキー場へ通う人たちのうち、熟練者の比率は45.4%だった。腕が上がれば継続して来場するようになる。彼らを核として初心者を引き付けるのがカギである。そのため、初心者優待活動を行うなど、長期的な販促活動を続けるべきある。
2 趣味としてのスキーを継続させるためには、“スキー旅行”のスタイルを確立する必要がある。そのためにスキー場周辺に、娯楽産業を配置しなければならない。買い物、飲食、ホテルなどとともに、スキー旅行経済を発展させる。
3 スキー旅行は、同級生や同僚、家族など、強い結びつきのあるグループで出かけることが多い。旅行社や旅行アプリは、この点を考慮し、食事や宿泊など団体扱い(割引き)にするのが望ましい。近しいグループの満足度が高ければ、リピーターとなる可能性は極めて高い。
中国人は具体策になるとアイデアは尽きない。この点の心配は何もない。しかし算盤勘定だけでは、まだ夜明け前ともいうべきこの業界は、簡単に先へ進めない。例えば、上海以南の住民は全く興味を持っていない。冬季スポーツを象徴するスター選手や、スキーライフ魅力を発信するリーダー、シンボルが必要だ。選手強化以外にも、思い切った手を打たなければならないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)