2018年2月、株式市場を突如襲った大幅な株安。米国長期金利が急上昇したことによって、低金利と企業業績の拡大が共存する「適温相場(ゴルディロックス相場)」が終わってしまうのでないか、という不安から株式が売られたと言われている。

ボラティリティが高まっている昨今において、個人投資家が知りたいことは「結局、米国をはじめとする世界景気は、いつまで景気拡大するの?」ということではないだろうか。この問いに対して、ソニーフィナンシャルホールディングス(以下、ソニーFH)チーフエコノミストの菅野雅明氏が非常に分かりやすく、ロジカルな意見を述べている。

今回は、ソニーFHの菅野氏の意見を確認しながら、米国経済はいつまで景気拡大するのか考えてみよう。

ソニーフィナンシャルホールディングス,菅野雅明
(画像=ZUU online編集部)

業界を代表するエコノミストの菅野氏

金融業界の人でなくとも、菅野雅明氏の名前や顔は目聞きしたことがあるのではないだろうか。日本銀行、JPモルガンを経て、現在はソニーFHのシニアフェローおよびチーフエコノミストを務めている。

同じくソニーFHチーフアナリスト尾河眞樹(おがわ・まき)氏とともに、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」のレギュラーコメンテーターとしても活躍している。まさに業界を代表するエコノミストのひとりだ。

景気の転換期はまだ訪れていない

そんな菅野氏によると、米国の景気拡大を考えるうえで重要なのが「米国の長期金利」だという。過去のデータによると、実質長期金利(名目長期金利マイナス期待インフレ率)が潜在成長率を上回ると、景気が転換点を迎えてきたという。菅野氏の主張を以下にまとめてみた。

【過去の米国景気循環の転換期】
「実質長期金利>潜在成長率」になったとき

【2018年3月現在】
「1%弱<1.7%」でまだ転換期を迎えていない

※直近の長期金利が3%弱、期待インフレ率が2%なので、実質長期金利は1%弱

このように見ると、2018年3月現在では、景気の転換期はまだ訪れていないようだ。それでは、いつ、これらの数字が逆転するのだろうか。

転換期の訪れはかなり先になる

計算の上では、長期金利が3%台後半に達すると、実質長期金利が潜在成長率を上回る。反対に言えば、現在3%を切っている米国の長期金利が、ここから1%前後上昇する必要がある、ということでもある。

菅野氏のよると、米国長期金利は今後上昇するにしても、ペースはかなり緩やかになると言う。FRBは段階的な利上げに着手しているものの、日銀やECBはマイナス金利政策を続けており、米国債の金利が上昇してくれば、利回りを求めて日本や欧州の投資家が米国債を買いにくる可能性が高いためだ。

戦後最長を更新する可能性が高い

結論して、菅野氏は、米国長期金利が3%台後半に至るのはかなり先になると見ているようだ。米国景気の回復は9年目に入り、戦後最長である1990年代の10年に迫ってきたが、それを更新する可能性が強まっていると言う。

気をつけておきたいのが、上記はあくまで景気拡大の話ではあり、株式のはじめとするリスク資産の見通しではないということだ。株価は景気の先行指標とも言われるように、景気拡大のピークを察知したら、先回りして下落することもある。

とはいえ、景気の大きなトレンドを読み解く際には、菅野氏の彗眼は大きな味方になる。今後も菅野氏の発言に注目したい。(ZUU online編集部)