頭金にする貯蓄もでき、将来を考えていざ自分の住まいを購入しようと考えたとき、一戸建てにするかマンションにするか悩む。購入価格や維持費、資産価値、立地、プライバシー、セキュリティ…。さまざまな面からマンションと一戸建てを比較する。

土地が含まれる一戸建ての方が購入価格は高い

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(画像=PIXTA)

立地や広さなどの条件が同じ一戸建てとマンションを比べる場合、基本的には一戸建ての方が値段は高くなる。マンションには土地代が含まれていない一方、一戸建ての場合は土地も資産の一部として購入することになるからだ。

一戸建てを購入する場合は大きく分けて2種類のタイプがある。1つ目は設計から携わって購入者の好みを反映させる「注文住宅」、2つ目は既に設計済みもしくは完成済みの「建売分譲」だ。一般的に注文住宅の方が建売分譲よりも販売価格が高くなる。一方、建売分譲で一戸建てを購入する場合もマンションよりは価格が高くなる傾向が強い。

マンションを購入した場合は管理費と修繕積立金を毎月支払い

一戸建てかマンションを購入した場合の維持費を比較してみる。決定的な違いは、マンションを購入した場合は管理費と修繕積立金の支払いが毎月発生する点だ。

管理費は管理人の人件費のほか、エレベーターやエントランスドアなどの維持費、清掃費、ごみ処理費などでの用途で徴収される。修繕積立金はマンションの共用部分に修繕が必要になった場合に備えて積み立てておくお金のことだ。ちなみに管理費と修繕積立金の用途はそれぞれのマンションの管理規約で規定されている。

一戸建ての場合はマンションのように、決められた額の管理費や修繕積立金は徴収されない。もちろん修繕などのための費用は計画的に貯めておかなければならないが、マンションを購入した場合よりは支出のタイミングに融通を利かせやすいという特徴がある。

一戸建ては建物のほかに土地も資産価値に入る

資産価値を考える上で前提となるのが、マンションは「建物の価値」のみが資産価値になり、一戸建ての場合は「建物の価値」と「土地の価値」を合計したものが資産価値になるという点だ。

一般的には、建物よりも土地の価値の方が時間が経っても価値が下がりにくい。そのためマンションよりも一戸建ての場合の方が、時間が経過したあとの資産価値は比較的高めにとどまっている。一方で一戸建ての場合もマンションの場合も、建物の価値は管理状況次第で査定価格が大きく変わる。維持・管理が疎かになっている場合、一戸建てでもマンションでも30〜40年経つころには建物の査定価値が0円になることもある。

土地の価格はその地区の人気度が変化するかによって資産価値は大きく変動する。駅から近かったり、商業地区が近かったりする場合は、将来的にも土地の資産価値は落ちにくい。土地付き一戸建てを購入する際は、その街の発展計画なども確認しておきたい。

立地が良い一戸建ては販売価格がマンションより高くなる傾向

立地はマンションの方が良い場所にあることが多い。集合住宅は駅などに近い場所に建設されることが多いからだ。駅に近いということは、スーパーや飲食店、病院なども近くにあることが多く、生活するにも便利なケースが多い。

一戸建ての場合も駅から近くにあるケースももちろんあるが、一戸建ての場合はそれなりに土地も広い必要があるため、立地が良い場所に建てる場合は販売価格が高くなる傾向にある。そのため、同じ販売価格であるなら一般的にマンションの方が一戸建てより立地が良いケースが多いと言える。

そうすると、価格が安い一戸建てはおのずと郊外に多いことになる。郊外の一戸建て物件の購入を検討する際には、最寄り駅との距離やスーパーや商業施設、教育施設、文化施設などとの位置関係も必ず確認したい。子供の成長や老後のことも考慮すべきだ。

マンションの高層階に住むならの日当たり・眺望は良好

マンションと一戸建てを比較した場合、一般的にはマンションの方が日当たりや窓からの眺望が良いことが多い。ただ低層階に住んだり、周りに高層マンションが建ったりしているケースは別だ。さらに、購入した時点では近くにマンションが建っていなくても、その後に新しくマンションが建設され、日当たりや眺望に影響が出てくる可能性はある。

一戸建ての場合は建物自体の高さが無い分、窓からの景色はマンションのように見晴らしが良いとは決して言えないものの、庭のガーデニングなどを見て楽しむことができるなどの魅力もある。日当たりは物件によってさまざまだ。それぞれの部屋の位置や隣の住宅との近さによっても異なる。

日本には「日照権」という考え方が定着している。日照権は環境権の一種であるとも言われ、建物の日当たりを確保する権利のことを呼ぶ。新たにマンションを建設することにより一定程度を超えて周辺住宅の日当たりに影響を及ぼす場合は、民事訴訟の結果、建設側が損害賠償を負う場合がある。

マンションはオートロックや防犯カメラで二重、三重セキュリティ

一戸建てとマンションをセキュリティ面から比べた場合、一般的にはマンションの方が安全面では配慮が行き届いている。最近のマンションにはオートロックや防犯カメラなどが基本的には取り付けられている。正面玄関とエレベーターの両方にオートロックがついているマンションもあり、防犯性を高めている。管理人が常駐しているケースもある。

一戸建ても設備次第ではマンション並みのセキュリティに近づくが、自費で防犯カメラやオートロックなどを導入する必要があるほか、警備員を24時間常駐させるのはあまり現実的とは言えない。ただ、侵入経路になりやすい窓にセンサーを設置することで不法侵入を防ぐなどのホームセキュリティを強化することはできる。

警視庁の調べによると、侵入や窃盗などの発生場所(2016年調査)では一戸建て住宅が41.2%と最も多く、3階建て以下の共同住宅が11.9%、4階建て以上の共同住宅が4.6%と続いた。マンションに比べて一戸建て住宅の方が実際に被害に遭っている件数が多いことが分かる。

間取りや増築の自由度で言えば一戸建てに軍配

家族構成の変化などに合わせて間取りの変更や増築をしたくなった場合、一戸建ての方が対応はしやすいと言える。土地が余っていれば増築もしやすいので、二世帯住宅にする場合にも費用をかければ可能だ。

マンションも間取りの変更は許容範囲内で可能だが増築はできない。マンションの場合は既に配管の位置などが決められており、間取りを変更する場合にもさまざまな制約を受ける。そういった点からも間取りや増築の自由度を比べると一戸建てに軍配が上がるだろう。

プライバシーに配慮した内廊下設計のマンションも

プライバシーの面では、マンションの方が懸念点は多い。

一戸建てに比べて隣の住宅との距離が近く、建物の設計によっては声や音などが漏れる懸念も出てくる。購入した部屋の窓から見える範囲にマンションが建っている場合は、カーテンをしっかり閉めるなどしてプライバシーを保護する必要も出てくる。

最近はプライバシー対策として、各階をホテルのように「内廊下」にしているマンションも多い。外廊下のマンションは外から住民がどの部屋に入ったか見えてしまうが、内廊下の場合は見られることはない。

一戸建てはマンションとは異なり、隣人との距離も離れている。目隠しとして塀を作ることもでき、プライバシーがマンションよりも確保されていると言えるだろう。ただ一戸建ての場合はマンションに比べて窓も多く、その分、遠くから覗き込まれるリスクは抱える。

マンションではペットの「サイズ」や「頭数」などにルールも

マンションでペットの飼育したい場合、物件によって飼うことが可能なペットのサイズや頭数などに制限が設けられていることがある。

例えば犬の場合は「中型犬まで」「大型犬不可」「小型犬のみ」など、猫の場合は「3匹まで」などだ。「廊下やエントランスではペットを抱きかかえること」などのルールを定めているマンションもある。ペットを飼うこと自体を制限しているマンションもあるので、事前の確認が必要だ。

一戸建ての場合は基本的にはペットを飼うかどうかは家主の判断で決められる。一方、屋外で犬などを飼う場合などは、首輪が外れて逃げた犬が近隣住民にかみついたり、訪問してきた人に向かって吠えて転倒してけがをさせたりするなどのリスクもある。鳴き声が大きいペットの場合は近隣住民とのトラブルにも結びつきかねないので、一定の配慮は必要であると言える。

子育て世代は「子供の足音」を気にして一戸建てが人気

子育て面を考えると、一戸建てを選ぶ人の方が多い。最大の要因は「子供の足音」で、マンションの場合は下の階の人に音で迷惑をかけることがあるからだ。その点、一戸建ての場合は子供の足音を気にする必要もない。

老後の生活を考えた場合は、マンションの方が住みやすいと言えるだろう。一戸建ての場合と違い、基本的には1階から2階への昇り降りなどをしなくて住むからだ。また、マンションの方がスーパーや公共交通機関とのアクセスが良いケースが多く、高齢になってからも買い物などにも行きやすいと言えるだろう。

一戸建てを購入する場合、注文住宅の場合は当初からバリアフリー化を考慮に入れておくことが重要だ。例えば階段に手すりを付けたり、段差を作らないようにしたり、最初から対応させておくことで結果的にはコスト的は安くなる。

マンションと一戸建てを購入した場合の違いについては、駐車場や清掃、地域活動や組合活動などにおいても差が出てくる。最近はマンションで民泊営業を行う人もおり、マンション管理規約で民泊の可否がどう定められているのかも確認しておきたい。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)