■ドル円予想レンジ106.00-108.80
「両国で話し合うことが先決だ」-。これは4/4の菅官房長官による見解である。鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして、トランプ米大統領が輸入制限を発動する方針を3/1に表明して以降、米中両国が貿易関税で報復措置の応酬を繰り広げる事態に発展。世耕経済産業相からは対抗措置の応酬は「どの国の利益にもならない」と諫言に似た意見が示されている。
■ドル円の進退合図を打ち鳴らすトランプ陣太鼓
ポイントは一点。トランプ政権が今年11月の中間選挙を意識し、大統領選挙中に掲げた公約を果たすためにも「米国第一主義」を先鋭化させる、と読み込んで良いのか否か、だ。
そこで筆者が刮目したのが、米CNNによる3/22-25期間調査でのトランプ大統領に対する世論支持率である。支持率は42%と過去11ヶ月で最高水準だったが、対外貿易についての不支持率は50%。就任2年目入りでの実行段階の局面として、一定規模の貿易赤字削減に努める構えや強硬な姿勢を国民・有権者向けにアピールする一方で、中国を輸出先とする産業・農業団体などの意向も汲む、とした和戦両構えをせざるを得ないデータといえよう。
米商務省が2月に発表した2017年貿易統計(通関ベース)で、モノの貿易赤字は7962億ドル(約85兆円)と9年ぶりの膨らみとなり、全体の約47.2%(3752億ドル)を占める対中赤字は過去最大だ。これを看過する訳にはいかないだろう。既に3/2には、トランプ大統領がツイッター投稿で、“tradewarsaregood,and easytowin(貿易戦争だって構わない、勝つのは簡単だ)”と、貿易不均衡是正に向けた陣太鼓を打ち鳴らしているのだ。
しかし、実際に貿易戦争となれば米国経済のマイナスになるのは明らかであり、避けたいのが本音の筈だ。その証拠としてロス米商務長官や経済政策の司令塔となる国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は対中制裁とした関税措置の発動に猶予を示しており、妥協の余地は十分に読み取れる。最終的に両国は歩み寄り、貿易戦争に陥る事態は避けられるのではないか。問題は米財務省が今月中にでも公表するであろう為替報告書での円安誘因批判や、日米首脳会談を控えた安倍首相に対する対米貿易黒字の削減要求などの、鳴っていなくても聞こえるような“トランプ陣太鼓”の幻聴だ。陣太鼓が日本に向けられれば円安は抑制される、と読んでいる。
■4/9週のドル円
上値焦点は日足雲上下限(107.15-109.31)抵抗、本年高安の38.2%戻し107.98、50%半値戻し109.01意識。2/27高値107.69、2/22高値107.78、2/21高値107.92。越えれば2/13高値108.79、2/12高値108.90、2/9高値109.31。下値焦点は4/5安値106.70。割れると4/4安値105.98、4/2-3安値圏105.65、3/27-28安値圏105.35を推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト