英ロンドン大学のリンダ・グラットン教授が『LIFE SHIFT』で提唱した人生100年をどう生きるかという命題は、日本でも2017年に話題となり大きな衝撃をもたらした。

いきなり「今後は、100年生きるのが当たり前になる」といわれると、多くの人は戸惑うはずだ。その中の代表的な声は、「定年後の40年近い人生をどうやって生活していけばよいのか……」ではないだろうか。

その老後に備えるためにまず知っておくべきは、「退職金」と「公的年金」の知識だ。受け取り方一つで手残りの金額は大きく異なる。オトクに受け取るためにはどうすれば良いのだろうか。

退職金の受け取り方(一時金か年金か)

貯める,増やす
(画像=Ruslan Guzov/Shutterstock.com)

定年後の大切な生活原資である退職金。受け取り方法は会社によって異なるが、一時金か、年金か、その併用かなどを選択出来ることも多い。そこで考慮すべきは、手取りの金額だ。

まず、退職金にも税金がかかるが、その計算方法は、今までもらってきた給与や賞与とは異なる。退職金は、所得税法上退職所得とされ、基本的には次の計算式で課税される。

(退職金額-退職所得控除)×1/2=退職所得

【勤続年数と退職所得控除額の関係】
・20年以下:40万円×勤続年数 (80万円未満の場合は、80万円)
・20年超:800万円+70万円(勤続年数-20年)

ここで計算された退職所得を国税庁発表の速算表に当てはめて税額を計算していく。

【速算表】

退職一時金が3000万円で勤続年数35年のケースで計算する。

{3000万円―(800万円+70万円×(35年-20年))}×1/2=575万円

所得税:575万円×20%-42万7500円=72万2500円
住民税:575万円×10%=57万5000円
復興特別所得税:72万2500×2.1%=1万5172円

すなわち手取り額は3000万円ー72万2500円ー57万5000ー1万5172=2868万7328円となる。また、一時金には社会保険料は、全くかからない。

次に、年金として受け取るケースを見てみよう。

年金で受け取る場合、所得税法上は雑所得として計算される。

(退職年金-公的年金等控除額)=公的年金等にかかる雑所得

【速算表2】

ここで考慮すべきは、退職年金とその他に公的年金、不動産所得などがあれば、それらを合算した金額で総合課税として所得税、住民税が計算されるということだ。さらに年金で受け取る場合、税金だけでなく国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療保険など社会保険料も徴収される可能性があることを考慮する必要がある。

では、一時金と年金、どちらの方法でもらった方が得なのであろうか。厳密には、自分の条件に合わせて計算する必要があるが、まずは以下の方法を軸に考えてみると良いだろう。

(1)退職所得控除を超えない範囲で、一時金でもらう
(2)それでも余る場合は、65歳までは70万円以内で受け取る
(3)それでもまだ余る場合は、一時金の金額を増やす

繰り返すが、厳密にはご自身の条件によって、一時金か年金かどちらで受け取る方が得かは変わってくる。しかし、一般的には、退職所得となる税務上のメリット、さらに社会保険料がかからない、などの理由で、一時金でもらう方が有利だ。

公的年金の受け取り方 「繰り上げ」or「繰り下げ」どっち?

国民年金などの老齢基礎年金と厚生年金からの老齢厚生年金の受給開始時期は、原則65歳となっているが、あくまでこれは原則であり、60歳から前倒しで受け取ることが出来る「繰り上げ支給」と66歳以降に繰り延べて受け取ることが出来る「繰り下げ支給」を選択することが出来る。

繰り上げ支給の場合、本来65歳からもらえる金額から月額0.5%減額されるので、仮に60歳からもらう場合、0.5%×12か月×5年=30%すなわち本来の70%の支給金額となる(特別支給の老齢基礎年金は少し条件が異なる)。さらに繰り上げ支給の場合、障害基礎年金が受けられないなど、いくつかのデメリットが発生する。

一方、繰り下げ支給の場合、本来65歳からもらえる金額に月額0.7%加算されるので、仮に70歳からもらう場合、0.7%×12か月×5年=42%すなわち本来の1.42倍の支給金額となる。また繰り下げ支給の場合、老齢基礎年金、老齢厚生年金のそれぞれで選択が可能で、例えば一方を65歳から、もう一方を70歳からといった受け取り方法もできる。

では、繰り上げ支給、繰り下げ支給の損益分岐点は一体何歳になるのだろうか。60歳でもらう繰り上げ支給を選択した場合、76歳8か月までは、65歳から受け取るより受け取り額が多くなるが、それ以降まで生きると通常通り65歳からもらう方が、支給金額が多くなる。

一方70歳からからもらう繰り上げ支給を選択した場合、81歳11か月を超えると、65歳でもらうより支給金額が多くなる。

厚生労働省が発表した最新の平成28年簡易生命表によると、60歳の人が今後何年生きるかを表した平均余命は、男性が23.67歳 女性が28.91歳となった。ということは、男性は83.67歳 女性は88.91歳まで生きるのが平均だということだ。この数字は今後さらにのびていくだろう。

いつからもらうのが正解なのか、それはその人たちのシニアライフの過ごし方に左右される。健康に不安はないのか、何歳まで働くのか、今いくらの資産があるのか、など変数要素は数多い。最後は、皆さんの決断次第ということになりそうだ。

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マネーデザイン代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。