不動産投資に興味を持った初心者が最初にやるべきは、情報収集です。しかし、今日では書籍や雑誌だけではなく、インターネットでも膨大な情報を得られるため、どの情報を信用してよいのか、混乱してしまうかもしれません。そこで活用したいのが、不動産投資セミナーです。今回は、不動産投資セミナーのメリットや注意点、セミナーをうまく利用するために必要な事前準備や事後作業について解説します。

不動産投資・融資セミナーで得られる情報

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(写真=Matej Kastelic/Shutterstock.com)

不動産投資や融資のセミナーでは、不動産投資に必要な知識を直接専門家から学ぶことができます。不動産会社が主催するセミナーですと、集客目的で行われることから無料であることも多い傾向です。不動産投資についてほとんど知識や経験のない初心者でも、手軽に参加できるセミナーも数多く開催されています。女性向けのセミナーも少なくありません。

こうしたセミナーで得られる情報の特徴としては、「生の情報であること」「方針の絞り込みに役立つこと」の2点が挙げられます。まず、当然ながらセミナーに登壇するのは経験豊富な投資家の人や、不動産会社・投資会社などの専門家の人であることが多い傾向です。そうした人々の話す情報は、雑誌や書籍に載るような一般論とは異なり、経験に裏打ちされたリアリティにあふれるものであることが多いでしょう。

初心者向けのセミナーであれば、必要な情報を絞り込んで、内容もわかりやすく説明してくれます。多くの登壇者は話し慣れしているので、専門用語は極力減らす形で不動産投資の魅力や注意点を伝えてくれるので安心です。

また、方針を絞り込むのに役立つのも、セミナーの特徴の一つです。雑誌や書籍、ホームページや個人ブログなどを通じて、プロ顔負けの質量を備えた情報を素人が手に入れることも可能となりました。その一方で、初心者では消化しきれないほどなのも確かです。

情報に流されないための鍵となるのが、情報の絞り込みと自分なりの方針の確立です。たとえば、セミナーで「読むべき書籍・ブログ」などを教えてもらえることがあります。また、自分と似た年齢・地位の投資家の投資方針を尋ねることで、自分なりの方針が見えてきます。これも、氾濫する情報の中から本当に有益なものを選別するための基準となるわけです。

セミナーの種類(開催スタイル・目的・属性など)

一口に不動産投資セミナーといっても、多種多様です。自分に合ったセミナーを選ばないと、時間やお金を無駄にしかねません。セミナーの種類として最も分かりやすいのは、初心者向け・中級者向け・上級者向けといったランク別のセミナーです。

あまり「中級者向け」「上級者向け」と銘打たれたセミナーはないのですが、たとえば「資金調達セミナー」「2棟目投資セミナー」など、ある程度知識や経験があることを前提としたセミナーは中上級者向けといえるでしょう。それに対して、「初心者向け」はセミナーのタイトルに明記されていることも多いです。はじめての人であれば、こうしたセミナーを選ぶのが無難でしょう。不動産投資のイロハを説明してくれるはずです。

他には、開催スタイルが異なることもあります。数十名を対象に、セミナー会場の1室で行われる講義形式が一般的です。他には、参加者を絞って講師との双方向的なやり取りを前提としたクローズドなセミナー、軽食をつまみながらざっくばらんな雰囲気で行われるセミナーもあります。

属性(ターゲット)が限定されている場合もあるでしょう。「20~40代女性」「30代サラリーマン」など、性別や年代別が限定されているため、参加しやすいかもしれません。投資目的が年代や家族の有無などの属性によって異なってくるので、こうした属性限定セミナーは初心者にとって狙い目といえます。以上を踏まえると、不動産投資の初心者であれば「初心者向け」「自分と同じ属性だけの人を募集している」というセミナーがおすすめです。

セミナーに参加するメリット

不動産投資の経験者に話を聞けるというのは先ほど述べましたが、それ以外にもセミナー参加のメリットは多岐にわたります。まず、初心者でも気軽に参加できることです。生の情報というのは、セミナー以外でも直接不動産会社に行って担当者に相談したり、不動産投資コミュニティに参加したりして情報を得ることができます。

そのため、セミナーでしか得られない情報はあまりないかもしれません。しかし、1対1で話を聞くのと、1対多人数で話を聞くのとでは気の持ちようが変わります。1対1だと、営業トークを繰り広げられそうで心配になる人もいるのではないでしょうか。セミナーなら参加者は多数ですから、気を張らずに話を聞けます。初心者にとって、気軽さというのは無視できないメリットです。

また、不動産会社の雰囲気や運用方針をつかむのにもセミナーは活用できます。担当者は「分かりやすく説明してくれるのか」「人当たりはどうなのか」「強引さはないのか」なども重要な情報です。実際に不動産投資を始めると、不動産会社および担当者との相性によって成否が分かれることもあります。明示的にもたらされる情報以外にも、セミナーで得られる情報はあるわけです。

先ほど説明した種類の多さも、セミナーのメリットに含めてもよいでしょう。書籍だと自分に合っているのかどうか分かりにくい場合も多いのです。しかし、セミナーの場合は、ターゲットの属性や経験の多さが限定されているため、自分に適した不動産投資を探すことができます。

セミナーに参加するうえでの注意点

セミナーを有効活用するためには、いくつか注意すべき点があります。まず、事前にセミナーの内容をよくチェックするということです。セミナーがターゲットとする層が自分と異なっていると、有益な情報を得られる可能性が低くなってしまいます。タイトルを確認することはもちろん、できる限り内容も吟味するようにしましょう。

また、自分の不動産投資の目的を確立することも重要です。こちらは、次の項で詳しく説明します。次に、セミナー中やセミナー後の営業活動には注意するべきでしょう。無料でセミナーを実施する目的は、不動産会社が見込み客を集客することに他なりません。当然ながら、不動産会社としてはセミナー来場者に対して繰り返し営業活動を行ってくるはずです。

担当者と何度もコミュニケーションを取ることで、その不動産会社とのコネクションが深まるメリットはあります。しかし、営業トークを聞きたくないようであれば、その意思表示をはっきり行った方がよいです。宅建業法(宅地建物取引業法)によって、悪質な勧誘行為は禁止されています。意思を明確に示せば、しつこい営業に辟易させられる可能性は低いでしょう。

最後に、セミナーの内容をすべて鵜呑みにしないよう気をつけましょう。不動産投資のセミナーに参加すると、自分でも不動産投資に成功できそうな気分になって、すぐに行動へ移りたくなります。しかし、それは危険です。不動産投資の失敗例に関する情報も収集することで、情報のバランスを取るようにしてください。自分の投資目的と不動産投資が合致しており、他人の失敗からよく学ぶことで、不動産投資の失敗のリスクを減らすことができます。

事前に考えるべき「投資の目的」

「不動産投資に失敗しない」「セミナーから有益な情報を得る」ために、投資・資産運用する目的を自分の中にしっかり確立しておきましょう。なぜなら、投資の目的次第で、取れるリスクの大きさや選ぶべき金融商品・物件などが変わってくるからです。

たとえば、会社員として勤めているが、副業として別の収入の柱を作りたい人は、不動産投資によって安定的な家賃収入を狙う手があります。一方、不動産の売却益で一攫千金を求める人は、選択すべき物件の種類が「値上がりが見込めて、流動性のある物件」となるでしょう。投資の目的によって、どんな物件にすればいいのか把握できるわけです。

場合によっては、不動産投資が適さないケースもあるでしょう。たとえば、「現在貯金は10万円、5年後に5,000万円の資産を形成したい」という非現実的なケースを考えてみましょう。こうした目標は、不動産投資によって実現することが難しい傾向です。その場合、よりハイリスクハイリターンな投資方法が適しています。

もちろん、資産運用の全体像がわかっていないと、目的と手段の対応関係がつかみにくいところはあります。Incomepressの記事や書籍などに目を通すことで全体像をつかみ、その後に投資目的を考えるようにしてください。投資目的が確立されていると、必要な情報の収集効率が向上します。

セミナー参加目的を再確認

「セミナーに参加する目的が何なのか」について自分に問いかけてみましょう。たとえば、下記のような内容です。

・セミナーに出席することで、どのような情報が欲しいのでしょうか?
・情報は、セミナー以外のソース(書籍・ホームページなど)から得ることはできないのでしょうか?
・セミナーで不動産会社や専門家とコネクションを得たいのでしょうか?
・コネクションは、セミナーでなければ構築できないのでしょうか?
 

他にも、自分自身に問いかけることはたくさんあるでしょう。参加目的を明確にしておくことで、与えられる情報を鵜呑みにせず踊らされにくくなります。セミナーが目的に沿ってなくてもよいのです。「自分には合わなかった」と理解できるだけでも有益です。セミナーでは、不動産投資のよい面を強調する形で説明が進むケースが多いでしょう。仮に「不動産投資のリスクを聞きたい」と目的を設定しておいたとすると、「リスクについての情報がなかった」と冷静に判断できます。

目的があれば、セミナーを有効活用できる可能性が高くなります。事前に、「知りたいこと」「講師に聞きたいこと」「自分の中で注意すべきこと」などを紙にまとめておいて、目的意識を持って参加することで、セミナーはますます有用になります。特に、資産価値や利回りの高い物件の見つけ方、融資を受けやすい金融機関の特徴などは聞くに値する質問です。

専門家と1対1になれるか

専門家と1対1で話せるかどうかは、セミナーの有用性を大きく左右する要素の一つです。1対多人数の関係で提供される情報と、1対1で提供される情報では密度が異なるからです。専門家を独占することはできませんが、少しでも1対1の関係になれるタイミングを見つけ出したいものです。

セミナーの終盤では、Q&Aの時間が設けられるはずです。その機会をつかまえるのが最もわかりやすいでしょう。セミナーの前に目的を明確にすれば、質問事項も自ずと頭の中に生まれてくるはずです。それらをメモ帳に書き留めておき、チャンスが来たら必ず質問できるようにしておきましょう。もちろん、講演の話によって解決したもの以外を質問してください。

Q&Aの時間以外にも、講師と1対1になる機会は見つけられるかもしれません。セミナーの前後や、途中の休憩時間に講師を見つけて、話しかけるとよいでしょう。ただし、セミナーによっては話しかけられないケースもあるので、その場合はあきらめるしかありません。

実は、セミナー終了後にも専門家と「1対1」になれる機会があります。TwitterやFacebook、あるいは直接メールすることで質問に答えてもらえる可能性があります。どうしても聞きたいことが残ってしまったのであれば、こうした手段も有効です。専門家としても、熱心に来てくれる聴衆をありがたく感じることが多いのではないでしょうか。もちろん、しつこくなりすぎないような配慮は必要です。

セミナーから持って帰るべき「戦利品」

セミナーに参加すると、さまざまな「お土産」をもらえることがあります。不動産会社のパンフレットやセミナーのレジュメ、登壇した講師の書籍など、情報をまとめたものであることが多い傾向です。こうしたお土産は一見ありがたく感じるかもしれません。しかし、より大事なのは「目的にかなったセミナーかどうか」「自分にとって有益な情報を得られたかどうか」です。

セミナー中に講師の話をメモに残したりパソコンに打ち込んだりして、セミナー当日か翌日にはノートにまとめましょう。「疑問や不安が解消されたかどうか」について自分なりに復習をしておくと役立ちます。

さらに、セミナーによって新しい疑問が生じる可能性もあります。そうした疑問を書き出し、より掘り下げることにつなげましょう。書籍やインターネットで答えが得られないのであれば、「不動産会社に直接相談する」「専門家にメールする」「投資家コミュニティに参加する」など行動して解消を図るとよいでしょう。

確かに、不動産会社やコミュニティで営業トークを聞かされるのが心配かもしれません。しかし、自分の中で不動産投資の目的がしっかりしていれば、営業トークを聞いても揺らぐことはないはずです。不動産会社の方でも、哲学を持った投資家にはそれに合った提案を用意してくれることが多いので、不快な思いをする可能性は低いでしょう。(提供:Incomepress


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