2017年、既存店ベースの百貨店の売上高は「前年比プラス0.1%」と、3年ぶりに前年を上回った。これは一見良いニュースのように見えるかもしれないが、百貨店の未来は決して明るくなったとは言えないだろう。今後の百貨店はどうなっていくのか、百貨店の未来を予想していきたい。

百貨店,デパート,地方
(画像=TK Kurikawa/ shutterstock.com)

百貨店の業績は3年ぶりのプラスに転じた

百貨店の売上は、既存店ベースで前年比プラス0.1%だった。地域別に見ると、都市部がプラス1.2%、特に大阪がプラス6.6%と大きく伸長したことに加え、札幌地区、福岡地区も好調に推移した。

品目別で見ると、化粧品がプラス17.1%と二けた以上の伸長を見せたことに加え、宝飾品がプラス3.6%、最も売上の大きい衣料品では、紳士服がプラス0.4%と前年を上回っている。ここ数年厳しい戦いが続いている百貨店にとっては、いいニュースになったと言えるだろう。

それでも百貨店が苦戦し続ける理由は?

今後、好景気を受けて、百貨店が再び成長する、という未来はあるのだろうか。残念ながら、現時点では、百貨店はやはり今後も苦戦するのではないだろうか。そう思える理由を2つの視点から探ってみた。

(1)都心と地方の差が激しい

一つは、都心と地方の格差が激しいことだ。都市部の売上高は前年比プラス1.2%に対し、地方はマイナス2.3%と、マイナス幅は小さくなったものの、変わらず苦戦を続けている。地方の百貨店は閉店が相次いでおり、例えば伊勢丹の松戸店が閉店したニュースは、記憶に新しいだろう。この傾向は、今後も変わらないと推測される。

(2)主力の婦人服は苦戦

百貨店は、婦人服を売ることで成り立っていた。いくつかの商品分類のうち、婦人服の割合は最も大きく、売上の約20%は婦人服で構成されている。その婦人服はマイナス2.8%と、4年連続のマイナスだ。次に構成比が高い家具もマイナス5.8%と大きく売上を落としている。百貨店で売れるものが、変化していっているといえよう。

この2つのデータから見えることは「百貨店の顧客が変わりつつある」ということだ。端的にいうと、今、百貨店の売上を下支えしているのは訪日外国人だ。2017年の訪日外国人は約2870万人で、前年に比べて約20%増えている。彼らが化粧品や宝飾品などを買うことで、売上が成り立っているといえよう。なので、彼らの来る都心部の百貨店、彼らが買う化粧品は売上を拡大させることができる。一方で、地方の百貨店や家具などの商品群は、大きく売上を落とし続けている。

もちろん百貨店側もこの問題を認識しているだろう。しかし、現時点での解決策は、不採算店舗の閉店しかない。その閉店も、地域行政や雇用の問題もあり、簡単に決断できるわけではない。今後も、大きなビジネスモデルの転換がない限り、厳しい状況は続くだろう。

今後の百貨店が最も大切にすべきことは?

では、今後、百貨店が最も大切にすべきことは何だろうか。今後、百貨店が大事にすべきなのは「場所」ではなく、「顧客」と、その顧客が信頼を寄せる「のれん」になるだろう。それ以外のものは、変革していく必要があるのではないだろうか。

たとえば都心の店舗は、訪日外国人向けの売り場を増やすなど、まだ売場自体の改革の余地があるだろう。外国人のワンストップショッピングを行う場所として、さらなる発展が期待できるかもしれない。しかし、都心の百貨店は、もちろん日本人の顧客も多いため、バランス感覚を持って店舗運営をしていくべきだろう。

一方、地方に関しては、もはや「百貨店」と呼ばれる場所さえ必要ないかもしれない。地方の顧客数は減っており、地方の百貨店の上層階は閑古鳥が鳴くことも多い。思い切って大きく縮小しながら、顧客への訪問販売など、限られた顧客に対し効率的なアプローチをする必要が出てくるのではないだろうか。

百貨店は3年ぶりに前年比プラスに転じたこと自体は喜ばしいニュースだが、外国人観光客が数字の下支えをしているにすぎず、百貨店のビジネスモデルは依然厳しいものと予想される。今後、百貨店は、その形を大きく変えて生き残るのだろうか。今後の動向に注目したい。(ZUU online 編集部)