高齢化社会を迎え、アンチエイジングが本格的ブームを迎えた。数年後には、世界のアンチエイジング市場は20兆円産業にまで成長すると期待されている。
60代で現役引退などとんでもない。アンチエイジング効果でいつまでも若々しく、しかも第一線で活躍し続けることができるのだ。アメリカでは「長寿ファンド」が立ち上がり、老化防止の研究を進めている。
それだけではない。アマゾンの創業者で世界一の大富豪ジェフ・ベゾス氏は、本気で「不老不死」にチャレンジするそうだ。
ろうそくの火が燃え尽きない?
ろうそくはやがて短くなり、やがてその火は燃えつきる。人間の細胞も同じで、分裂を繰り返すたびに活性を失い分裂のスピードが落ちてくる。これがいわゆる老化である。やがて、60回ほど分裂を繰り返すと分裂を止め、死を迎えるという。
この法則は、発見したスタンフォード大の解剖学者レオナルド・ヘイフリックの名にちなみ、「ヘイフリックの限界」と名づけられた。「ヘイフリックの限界」には、テロメアという細胞内の染色体物質がかかわっていることが解明されている。テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、やがて一定の長さを切ると老化が始まるのだ。
老化した細胞は、臓器や組織の機能不全を引き起こし、様々な病気も誘発する。一方、近年では、ITやバイオテクノロジーの発展を背景に、老化のスピードを遅くする、さらに老化自体を止めてしまう研究が進んできた。ろうそくが短くなるのを止める試みだ。
アメリカではアンチエイジングがブームに
アメリカでは、1946〜64年生まれのベビーブーマー層(約7000万名・全人口の1/4に相当するボリューム層)が65歳以上の老年期に突入した。この世代は、アメリカの新しいライフスタイルやカルチャーをリードしてきた。
彼ら彼女らの強烈な若返り指向と「生涯現役でありたい」想いが、アンチエイジングを突き動かす。北米では2022年に200億ドルまで市場が拡大するといわれている。
高齢化の進行は、アジアやヨーロッパも同じだ。今後はアメリカがけん引する形でアンチエイジング浸透する結果、全世界での市場規模は2000億ドルにまで膨らむとの予測もある。
最新のテクノロジーが支えるアンチエイジング
有望な市場を狙って、企業は鎬を削る。アンチエイジングの分野は、レーザー・ボトックス注射・ヒアルロン酸注入・ケミカルピーリング・しわ取り・美顔などからフィットネスなどフィジカル強化まで実に幅広い。
日本では2017年、深いしわを改善する美容液が話題を呼んだ。ポーラのリンクルショットと資生堂のエリクシールリンクルクリームは「スキンケアとしては過去最高」の売り上げを記録し、両社の業績に大きく貢献した。
アンチエイジングコスメの進化は、シワ対策にとどまらない。最先端コスメを手掛けるエヌ・アイ・シーは、ヒト幹細胞配合の化粧品を発売した。幹細胞は成長因子(機能性たんぱく)を分泌し、再生医療分野での活用が進む。
化粧の分野では、皮膚細胞の根源に働きかけ、シミ・シワ・タルミ・乾燥などのさまざまなお肌のトラブルに効果を発現する。しかし、若返りの野望は、この程度のアンチエイジングでは満たされない。
不老不死も夢ではない
MIT(マサチューセッツ工科大学)中退の天才女性が立ち上げた「長寿ファンド」は、ジェフ・ベゾス氏をはじめ、ペイパルの創業者ピーター・ティール氏らが神輿を担ぐ。ファンドは、究極として「不老不死」をめざす。現在までに2200万ドルの資金を6社に投資、老化を食い止める技術の開発に血道をあげている。
2017年12月、湖南省の井戸の底から3.6万にも上る木簡(皇帝の命令公布や役所内の文書)が見つかった。その中から始皇帝による「不老不死の薬を探せ」との布告も見つかる。この布告は辺境の地にまで発せられたという。数千年経っても、「永遠に生きたい」人間の欲望は変わらないのだろう。(ZUU online 編集部)