このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。

2018年4月12日(木)Market TalkのSummary

REIT市場の展望

今までREITについてはあまり良い評価をしてこなかった。世界的にジワリと金利が上がってくるなかで、また日本も今年のどこかでマイナス金利を撤廃する、もしくは長期金利の誘導レンジをあげることが視野に入るなかでは、REITのような利回り商品はパフォーマンスがあまり良くないという見立てだった。それが黒田日銀2期目のスタートで流れががらりと変わった。すなわち(金融緩和の)出口無しということ、今年いっぱい現状維持だろうという中で、REITの再評価がすすんでくるのではと考える。賃料もじりじりと上がっている、不動産価格もしっかりしている、金利は上がらない、という状況ではJ-REITは非常に良い投資環境だと思う。

3月の景気ウオッチャー調査では先行き判断指数が低下し、11カ月ぶりに50を下回りましたが、株価を支える景気に不安は無いのでしょうか?

景気が悪い⇒悪いのをなんとかしようと政府が動く⇒政策が色々出てくる、実際に景気対策が打たれる - それで株価がしっかりするケースがある。安倍政権が支持率を上げるためにしなければならないのは、景気を良くするということ。今まで安倍政権がもっているのは5年間景気を良くしてきたからだ。だから景気対策が一番の政権基盤になることが分かっているので、景気対策を急いで打つだろう。また来年の消費増税での失速を防ぐため、今から助走期間で走っていく。財政出動でもう一度ここでカンフル剤が打たれるだろう。あとは金融政策だが、足元景況感が悪化していることで、一時期、特に為替市場であった(金融緩和)出口論も引っ込んだ。それにより円高圧力も和らいでいるが、これはある意味緩和的な状況が戻ってきたということになる。不景気だからこそ早期の縮小論、出口論が完全に封印されている - 不景気の株高材料 - という状況になってきている。

日本をはじめ、世界中が後ろ向きの雰囲気ですが、一旦市場から撤退した方が良いのでしょうか?

マーケットは良い状況になってきているのではないか。日本市場は米国市場に振り回されなくなっている。そして個別の銘柄を見てもちゃんと業績をみて反応しているので、相場全体、インデックス云々というよりは個別銘柄への投資ということで買い場をさぐっていけばよいだろう。

最近、ダウと日経平均の相関性が無いような気がするのですが。

なぜ相関性がないのかというと、米国市場を動かす材料が東京時間に全部出てきているから。東京市場が材料を先に織り込んで、その後NYが動いてもそれに付き合わなくなった。当たり前といえば当たり前だが、本当に相場が弱いときはそういうことはできない。東京市場の自立性がでてきたということだ。

米中貿易戦争はどのような落としどころを探ることになるのでしょうか?

中国は解放政策のポーズをとり、アメリカも制裁リストを広げたが実際には全部は発動しないだろう。お互いあまり傷が広がらない程度で終わるのではないか。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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