住宅ローンの返済生活とはいかなるものだろうか。国土交通省の『2013年住生活総合調査』では、「家計にあまり影響がない」と回答している割合が35年前と比べると半減(25.2%→10.3%)している。

住宅ローンを組む世帯はどれだけの額を借り入れているのだろうか『家計の金融行動に関する世論調査2017』ではマイホームの購入額を3167万円とし、うち自己資金を1133万円、借入額は差額の2034万円としている。ほぼ自己資金の2倍だ。住宅ローンは購入額の80%と考えられているため、借入額は2534万円でも可能だ。だが、自己資金が多ければ多いほど借入額は少なくなり、購入後の生活が楽になるのは言うまでもない。

この年収で大丈夫?

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一般サラリーマンの平均年収は422万円(国税庁『2016年民間給与実態統計調査』)。平均月収が29.7万円だから手取り額はこれよりも低い。

審査という金融機関特有のフィルターを通さなければならないので、借りられるかどうかという問題が生じる。

ローンを組む際、限度の返済期間である35年で組む世帯が多いという。30歳でローンを組んだら完済年齢は65歳、40歳では定年後の75歳ということになる。マイホーム購入も若いうちにというのも言い古されているが、こうした理由からである。年収も上位にランクされている。

住宅ローンは4タイプ それぞれのメリット・デメリット

住宅ローン金利だが、タイプ別では証券化ローン、全期間固定金利型、固定金利期間選択型、変動金利型の4タイプだ。証券化ローンというのは商品名『フラット35』のことで、住宅金融支援機構と民間金融機関が住宅ローン債権として市場に回すことにより資金調達に利用している住宅ローンだ。35年という長期にわたる固定金利ローンなので、全期間固定金利型に含めてもよいだろう。

固定・変動のメリット、デメリットをタイプ別に見てみよう。全期間固定金利型は返済額が借入時点で決まっているため、生活設計が立てやすいが、デメリットはその逆で借入時よりも金利が下がったとしても固定されているため返済額が安くならない。

変動金利型は金利が変わるため、下がれば返済額が安くなるし、上がれば高くなるということである。しかも金利上昇の影響は多大で、未払い利息の発生も考えられる。固定金利期間選択型は固定と変動の折衷タイプで、3年型、10年型とあり、3年あるいは10年は固定金利で返済し、これ以降は変動金利に切り替わる。

住宅ローンを考える際、固定にするか変動にするか迷うはずだ。現在は変動金利を選ぶ世帯が増えている。比べると固定よりも変動のほうが金利が低いため、どうしても変動を選んでしまうのだろう。

変動金利は一般にデメリットが強調されやすいが、5年間は固定金利のごとく固定されるし、たとえ上がったとしても25%までという返済額上限も定まっている。率の低さだけではなく、様々な角度から見て選びたい。

住宅ローン控除で節税を

住宅ローン控除とは、所得税から差し引かれる税額控除のことだ。同じ意味ではあるが一時制度廃止で騒然となった住宅ローン減税のほうがむしろ知られているかもしれない。住宅ローンとして金融機関から融資を受けている人が対象だ。

適用期間は2014年4月〜2021年12月。毎年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%の金額が10年間にわたり控除される。控除額は最大で400万円(年額40万円)、このうち長期優良住宅や低炭素住宅については最大控除額が500万円(年額50万円)。所得税から控除しきれない場合は、住民税からも年13.65万円を上限とし一部控除される。

これを受けるための諸条件とは、融資を受けていることのほかに床面積が50平方メートル以上、借入期間が10年以上、年収が3000万円以下であること。増改築の場合、工事費が100万円以上かかること。中古の場合、耐震性を有していることなどだ。

もう一つ消費税の負担軽減で政府が実施しているのが「すまい給付金」だ。通常の住宅ローン控除では軽減効果が上がらない低所得者に対して実施するのが目的で、2014年度から始まった。現時点での年収目安が510万円以下。今後、消費税率が10%に引き上げられると、目安も775万円以下にまで広げられる。

適用期間は現行の住宅ローン控除適用期間と同じ。対象要件は新築と中古で異なり、新築の場合、床面積が50平方メートル以上、住宅瑕疵担保責任保険に加入していること、フラット35Sの基準を満たすなど一定の性能が確保されていること。自己資金で購入した場合、年齢が50歳以上であり、収入が消費税10%時に650万円以下であることなどだ。

入居した翌年には確定申告をしなければならない。一般のサラリーマン・OLを例にとると、必要書類は確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書の2つ、これに必要事項を記入し、源泉徴収票、金融機関等からの住宅ローンの借入金残高証明書、登記簿謄本、売買契約書、マイナンバーカードを添付して申請する。2年目からローン残高証明書を勤め先に提出すれば、年末調整で住宅ローン控除をうけられる。

注意したいのは住宅借入金等特別控除額計算明細書だ。住宅ローン控除の上限が4000万円で、これを超えた分は住宅ローン控除の対象とはならない。まい給付金は給付申請書に必要事項を記入し、全国のすまい給付金窓口に申請するか郵送する。申請期間があり、住居引き渡しから1年以内だ。

繰り上げ返済で早く自分のものに

不動産サービスのアットホームの調査では、借入期間25年で、ローン完済まで13.7年。当初の予定より繰り上げた期間が11.2年となっている。いずれも平均値だが、大体半分の期間を残して完済していることになる。35年ローンだったら、繰り上げ返済によって18年で完済できると考えることもできる。この数字は全国調査ではないが、参考にはなるだろう。

繰上げ返済には2つの方法が考えられる。返済額をそのままにして借入期間を短縮する方法と、借入期間をそのままにして月々の返済額を少なくする方法だ。両者を比較した場合、返済の軽減効果はあまり変わらないという。

借金から早く解放されることを望むならば、借入期間を短縮する方法だろうが、短期での出費額はかさむため、忍耐を要する。一方、借入期間をそのままに返済額を少なくする方法であれば、月々支払う約定返済額が減っていくので気持ちの負担は軽くなるだろう。

借り換えも手段の一つ

繰り上げ返済のほか、借り換えも借入返済額を減らす手段の一つと考えられているのが、住宅ローンの借り換えだ。返済の負担を軽減するため現行のローンよりも金利の低いローンに切り替えるというものだ。

借り換えのパターンや金利タイプは、固定金利選択型から固定金利選択型に切り替わる場合が4割超と高く、固定期間10年の固定金利選択型を選ぶことが多いようだ(住宅金融支援機構「民間住宅ローン借り換えの実態調査」)。

地方銀行・第二地方銀行の提供するローン商品で返済計画が組まれ、融資額は2000〜3000万円で、適用金利0.5〜1.0%という条件での取り引きが目立つ。借り換えの時期は返済をスタートしてから5年以内と、早いうちに借り換えを行っている状況である。

借り換えの基準としてよく挙がるのは3つあって、「金利差1%以上」「残債1000万円以上」「借入残期間が10年以上」である。この条件を満たせば、返済の負担がたいてい軽減されるといわれている。借り換えとは改めて借りなおすということでもあるので、抵当権の抹消や設定等の初期費用がかかること、審査もあることを考慮したい。

旧債務を行っていた金融機関と同じ金融機関は(別のローン商品を提供していない限り)選べない。ケースとして多いのは、地方・第二地銀から地方第二地銀、または都銀・信託銀行から都銀・信託銀行への移行のようだ。

どのような住宅ローンを選べばよいか。一つには借り換え専用の住宅ローンというのがある。東日本銀行を例にとると、返済比率25%以内など銀行提示の諸条件を満たせば「年利0.5%(当初〜3年目)→1.1%(4年目〜10年目)→2.6%(11年目以降)」の3段階固定金利で借り入れできるという商品だ(東日本銀行借り換えローンWebサイトによる)。

保証料不要、団信込み、取扱い手数料などはかかるが繰上げ返済手数料0。借入資格を見ると、団信に加入すること、契約時の年齢が満25歳以上65歳以下(完済時の年齢が81歳以下)であること、前年の年収300万円以上(自営の場合、直近2年の所得が700万円以上)であること、現在返済中の住宅ローンを3年以上滞納がないこと、税金の滞納がないことなど。

このように誰でも借りられるというわけではないので、ぜひ借入の条件については確認しておきたい。

何かあった際の対処法を考えておく

不動産情報会社のアットホームが調査した『住宅ローン完済の実態調査』ではローンを払えない時があった人は1.6%、売却を考えた人は1.3%。皆無ではないことがこの数字で分かる。

例として住宅金融支援機構が年度ごとにまとめているリスク管理債権の状況を見てみたい。破綻先債権額、延滞債権額、3か月以上延滞債権額、貸出条件緩和債権額の合計額が2014年度は1兆4652億円と元金残高の5.87%を占めている。

一方2015年度が1兆2442億円(5.12%)、2016年度1兆583億円(4.52%)となっている。数%ずつ減少し持ち直している感が見られるが、残債が1兆円にも上っている。住宅ローン返済困難者の多さはこの数字から伺える。

返済が難しそうな兆候が見え始めたら、早めにローン担当者に相談するに尽きる。借り換えでしのぐというのも一つの方法だ。例えば住宅金融支援機構では新特例を設け、貸付条件の緩和措置を行っているし、他の民間金融機関でも同様の対応を行っている。(ZUU online編集部)