今週の焦点は、まず米・英・仏によるシリア攻撃を受けた週明けの反応と日米首脳会談の成り行きだ。因果なものだが、欧米の選挙など重要イベントの結果が判明する最初のマーケットはたいてい東京である。今回もまた東京市場がシリア攻撃に対する最初のリアクションを試される。
確かに、シリア攻撃による中東情勢の不透明感はリスク回避の円高などを伴って日本株相場の悪材料であることは間違いない。しかし、①今回のシリアへの攻撃は事前に予告されていたものでありサプライズではないこと、②昨年のシリア攻撃を受けた市場の反応はそれほど深刻でなかったという経験があること、③今回も一度限りの攻撃で長期化しそうにないこと、などから市場の反応は限定的だろう。日経平均は25日移動平均が上向きに転じており、25日線の水準2万1500円が下値の目途だろう。
テクニカル的なことを言えば、一目均衡表の雲が垂れ下がる格好で分厚く広がっている。雲の下限に日経平均の頭が抑えられそうだ。ここを抜けて雲の中に入るには、きっかけがほしいところで日米首脳会談が首尾よくいけばそのきっかけになるかもしれない。
米財務省が先週末公表した半期為替報告書では日本が引き続き「監視リスト」に指定されたが、トーンは淡々としたものであり、あまり悪材料にはならないだろう。米国の貿易上の問題は対中国であるのは明らかだから。
その中国から王毅外相が来日し日中外相会談が開かれた。今日16日には8年ぶりとなる日中ハイレベル経済対話を開く。5月の日中韓首脳会談の開催、李克強首相の来日を調整する。その先に年内の安倍首相の訪中と、その後の習近平国家主席の来日も視野に入っているのは当然だ。日中関係の改善 - これが日米首脳会談の「抑止力」になるだろう。FTAなどの話が出ずに、北朝鮮問題を第一の議題にできれば日米首脳会談は成功と受け止められ株式相場にもポジティブとなるだろう。
経済指標では米国の小売売上高に注目。1月2月と低調だったが税還付の遅れのためだろう。3月にはその反動で上振れが期待される。注目したい。
日経平均の予想レンジは2万1500円~2万2000円とする。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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