転職やキャリアアップのために、ビジネスで使える英語スキルを身につけたいという人は多いだろう。しかし忙しいビジネスパーソンは、なかなか英語学習の時間が取れない。時間制約の壁を克服し、限られた時間の中でできる効果的な学習方法を知らなければ、いつまで経っても英語をマスターすることはできないだろう。独学でビジネス英語を習得するために必要な方法や、おすすめの学習コンテンツについて知っておこう。

まず1000時間の勉強をめざせ

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(画像=PIXTA)

身も蓋もない指摘ともいえるが、すべての基本は量をこなすことだ。まず十分にインプットしなければいけない。

どの程度学習すれば良いかというと、学習時間は「1000時間以上」が目安といわれている。元ソフトバンク社長室長の三木雄信氏 が創設した英会話スクールTORAIZ(トライズ)では「1年1000時間の英語学習」を目標に掲げており 、その理由を以下のように述べている。

「日本人が英語を習得するためには、約2,200時間が必要とされています。多くの日本人は学校教育で約1,200時間の英語授業を受けているため、あと1,000時間は学習しなければなりません」(トライズ公式Webサイトより)

1日1時間ずつなら約3年、1日3時間ずつなら約1年で1000時間の学習時間を確保できる計算だ。忙しい社会人にとって短期間で1000時間もの学習時間を確保するのは至難の業だと感じられるが、スキマ時間をうまく活用した「ながら学習」を取り入れることで案外簡単にクリアすることが可能だ。

ステップ(1) たくさん「音」を入れる

英語の「音」を多く耳に入れる。頭の中に英語を受け入れられる器を築く必要があるためだ。小学生から高校生までの子供に独自のシステムを駆使した英語教育を行っている英語教室などでは、言語を覚える上での音の大切さを指摘している。

大学生までにたっぷり英語を学んだはずの日本人の英語が上達しない原因として、「読み」「書き」にウエートを置いている学習スタイルが挙げられる。圧倒的に音のインプットが足りていないことで、学習効率が下がっているとも言える。これから学習を始めるならこの土台作りを大切にして欲しい。初めのうちは全く意味がわからなくても、うまく聴き取れなくても、とにかくたくさんの「音」を取り入れることが大切である。

これは何か他の作業をしながらでもできる学習法だ。移動時間を利用して流し聞きするのも良いだろう。学習材料は何でも良く、子供向けの簡単なものから始めればOKだし、好きな映画・ドラマ・洋楽も良い学習材料となる。

ステップ(2) 英語独特の発音を覚える

英語には日本語にない独特の発音がある。「r」や「l」、「b」や「v」などはその典型だろう。初期段階でこの音の違いを正しく認識しておくと、リスニングやスピーキングが楽になる。聞き手に余計なストレスをかけることもなくなるだろう。

これをマスターするためには「Phonics (フォニックス)」を使った学習方法が有効とされている。フォニックスとはアルファベットとその正しい発音とを結び付けて覚える音声学習法のこと。日本人が発音しづらい子音の発音もフォニックスのリズムに乗せればテンポよく覚えることが可能だ。

流し聞きが可能なフォニックスソングはYouTubeから簡単に見つけることができる。

これならコンテンツ料は無料だ。学習材料は幼児向けに作られている動画で十分である。むしろ子供向けだからこそシンプルでわかりやすい。

ただし完璧な発音にこだわる必要はない。実際のところ世界中の至る場所で英語が使われているが、国ごとにクセがあり発音にはかなりの違いがある。地方によって言い回しやイントネーションが異なる方言のようなものだ。

ステップ(3) 語彙力を高める

英語ができない日本人は圧倒的に語彙力が足りていないことが多い。 リスニングにしろスピーキングにしろ、英語を使いこなすためには頭の中の英語のストック量を増やすことが必要だ。語彙が増えれば学習はかなり楽になる。ここで言う「語彙」とは必ずしも「単語」だけを指すのではない。「熟語」や「文章」も含まれる。

英語には「a lot of」や「be able to」など、単語一つひとつの意味を考えるよりも、ある程度まとまりで覚えた方が良い表現が多い。 これは日本語でも同じことが言える。普段から使っていた言葉が「主語・述語・修飾語・接続語・助詞・助動詞……」といった、さまざまな役割を持つ単語の集まりで構成されていたことなど、学校で習ってから初めて知ったはずだ。

語彙はターゲットを絞って覚える といいだろう。日常会話には日常会話に必要な、ビジネス英語にはビジネス英語に必要な語彙があるためだ。ビジネス英語の中には、どの業界にも共通して使える表現があれば、特定の業界で頻出する独特の表現もある。

限られた時間を使って効果的に学習するためには、情報の取捨選択が必要だ。だからこそ単語帳ひとつにしても、自分にとって必要な語彙を学べるベストな学習材料を慎重に選んで欲しい。まずは「ビジネスで使わない表現は不必要」と割り切り、最短ルートで自分に必要な英語をマスターすべきだろう。

ステップ(4) シャドーイング

「聞く」「話す」「読む」「書く」の英語の4技能の中で、最も難しいのは「話す」ことではないだろうか。反射的に言いたいことがスラスラ出てくるようになるためには繰り返しのトレーニングが必要である。必要な場面が訪れた時、咄嗟に英語が口から出てくるかどうかは当然トレーニング量がものを言う。

そこで実践すべきなのは「シャドーイング」だ。これは耳で聴いた英語を、アクセントやイントネーションを違えずにそのまま復唱する方法である。シャドーイングを行うと英語独特のリズム感が身に付き、ネイティブのスピード感に慣れてくる。また熟語や文章で英語を覚えられるため、頭の中で日本語を英語に変換する手間がなくなり、相手の会話に即座に反応しやすくなる。

シャドーイングに必要な学習材料は何でも良い。自分にとって必要な語彙が詰まったオーディオブックは特におすすめだ。好きな映画のセリフや歌など、なるべく自分の好きなものと結び付けるのも良い。モチベーションを維持しやすく、学習の継続率が上がるためだ。

ステップ(5) アウトプットできる場を設ける

自分からアウトプットする練習をしないと、なかなか英語で話せるようにはならない。とはいえ日本で日常生活を送りながら、英語でアウトプットする場を頻繁に設けるのは難しい。英会話スクールに通うのはスケジュール面でもコスト面でも負担がかかる。それに通ったとしてもアウトプットに充てられる時間は、せいぜい週に1〜2時間といったところだろう。

そこでおすすめなのが「オンライン英会話」だ。オンライン英会話は安価で学べるサービスが多い。また自宅でのスキマ時間を有効に活用できる方法だ。基本的には24時間稼働しておりスケジューリングしやすいため、忙しいビジネスマンほど強い味方となる。通学制のスクールと違って毎日取り組むことも可能だ。

オンライン英会話ならあらかじめ講師の国籍を自由に絞ることもできる。 自分がビジネス展開したい地域の講師を選んでトレーニングすれば、発音のクセ・文化・考え方などその国のバックグラウンドも同時に学べるというメリットも生まれる。

おすすめの英語学習コンテンツ

ステップ(4)でも少し触れたが、学習の継続率を上げるためには自分にとって楽しいと思えるコンテンツ探しが重要だ。本・CD・DVDの他にアプリ・動画サイト・オーディオブックなど、コンテンツの形にはこだわらない。

ポイントはなるべくコストをかけないことだ。むやみにコストをかけてもそれに見合った学習効果が得られなければ、いたずらにモチベーションを下げるだけに終わる。またこれまで紹介した学習法を実践するためには、なるべく「音」が出るものが望ましい。

例えばAmazonの月額制サービス「Audible(オーディブル)」などはどうだろうか。月額1500円で好きなだけ朗読を聴けるアプリだ。洋書だけでなく英字新聞や雑誌などにも幅広く網羅している。iOS、Android、Windows10に対応しており、ダウンロードしておけば自宅でも外出先でも電波を気にせず再生できて便利だ。

「仲間を作る」ことが成功へのカギ

これまで学習継続のためのモチベーション維持の大切さについて度々触れてきた。その最たるものが「仲間を作る」ことにある。志を同じくする仲間を持つことは、学習意欲を高めるための重要なポイントとなる。

モチベーションが下がったときも、仲間とコミュニケーションすることでまた「やる気」は戻ってくるだろう。学習方法をシェアするなど情報の共有を行えば、学習効率も高めやすくなる。何より仲間と共に切磋琢磨すること自体が楽しくやめられなくなる。そうした状況をつくることができれば、成功に近づいたといえるだろう。 (ZUU online編集部)