育児や家事、時には介護に追われ、世の中の主婦は休む暇がありません。自分がやりたいことをする時間も取れず、ただただ慌ただしい日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。

「自分が自分らしく輝ける場所をつくりたい」。そんな思いを持った6人の女性が集まり2013年に生まれたのが、農産物の加工製造・販売を行う団体「おによめ.com」です。果物や野菜の加工品を販売する彼女たちの今までと、これからの展望を紹介します。

はじまりは「廃棄予定の果物」だった

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(写真=PJ 5156/Shutterstock.com)

山形県東根市にある観光農園「北村果樹園」では、主に贈答用のサクランボやラ・フランス、リンゴを栽培しています。しかし栽培したものすべてが販売できるとは限らず、毎年、規格外の果物が大量に出てしまいます。

夫とともに北村果樹園を経営する北村陽子さんは、「規格外の果物をそのまま廃棄するのはもったいない」という思いを長年抱いていました。

そんなとき、北村さんは県が行う「農林水産業創意工夫プロジェクト支援事業」の存在を知ります。そこで思いついたのが、規格外の野菜や果物を加工・販売する女性団体の立ち上げでした。

もともと北村果樹園の仕事を手伝いに来ていた友人が「おいしい」と評判のジャムをつくっていたこと、そのジャムを販売してほしいという声が周囲から上がっていたことも事業立ち上げの後押しとなりました。

「おによめ」たちの得意を集め事業化

しかし、農産品を加工・販売するための作業を1人ですべて行うことはできません。そこで北村さんは友人や近隣の女性たちに声をかけ、それに応えてくれた5人の女性とともに、加工団体「おによめ.com」を設立しました。

このユニークな団体名称は、当時、北村さんが運営していたブログ「鬼嫁日記」にちなんでいます。加工場は北村さんが以前居住していた住宅を利用し、加工場として整備する資金は県の補助金と自己資金、借入金でまかないました。

おによめ.comでは、営業・販売・雑務を北村さんが行い、その他の作業は北村さん以外の5人で分業しています。漬物名人が漬物をつくり、ジャムは料理教室を営むメンバーが行っています。さらに漬物用の山菜はメンバーが山から調達するというこだわりです。

それぞれの特技を持ち寄りはじめた事業は順調に利益を上げ、現在ではジャムや漬物だけではなく、焼き肉のタレやドレッシングも販売しています。

年数とともに見えてきた課題

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(写真=Nitr/Shutterstock.com)

好調に見えた「おによめ.com」の事業も、開始から数年経つと1つの課題が見えてきました。当初はメンバー全員が子育て終了後ということもあり、時間のゆとりをもって事業を進めてきましたが、それぞれ仕事や生活が忙しくなってしまい、6人が集まり作業するということが難しくなってしまったのです。

以前は1週間に1度、全員が集まり加工品を製造していましたが、現在では「担当制」に変更されています。ジャム担当、漬物担当、焼き肉のタレ担当といったように分業し、それぞれの生活を圧迫しないよう工夫を凝らしています。

しかしいくら忙しくなっても、「おによめ.com」のメンバーは製品のクオリティを下げることも、ポリシーを曲げることもありません。多少手間がかかっても加工に使う果物は必ず完熟したものを使用し、いつでも変わらない味を提供しています。

多くの女性の希望の場に

農業・水産の6次産業化認定は年々増加し、2011年には709件だった認定件数は2016年には2,156件に達していますが、そのすべてが成功しているわけではありません。そのなかで、農家のお嫁さんがはじめた「おによめ.com」は輝かしい成功を収めているといえるでしょう。

当初より「主婦のテーマパーク」を目指していた「おによめ.com」では、加工品製造だけではなく花の寄せ植え教室も開催し、多くの主婦を癒しています。女性がいきいきと過ごせる場を作り上げた「おによめ.com」の活動は、これからも多くの女性の希望となるでしょう。(提供:JIMOTOZINE)