「社会人になったら生命保険のひとつくらい入っておくべきだ」と親や先輩に教わった人は多いのではないでしょうか。最近は公的年金制度への不安もあり、個人年金への加入を考える人も多いようです。
ところで資産形成として考えたときに、投資信託と保険商品のどちらがよいのか迷ったことはありませんか?今回は両者を比較して有利な運用方法を考えます。将来の資産形成にベストな選択をしたいと思っている人はぜひ参考にしてください。
生命保険や個人年金の特徴
生命保険は「もしものときのために備えるもの」というのが一般的な考え方です。資産形成に役立つと言われてもピンとこないかもしれません。たしかに、保険に加入する目的は自分が死んだり働けなくなったりしたときに、家族にとって必要なお金を残す(用意する)のが主な目的です。しかし、商品によっては預貯金よりも有利な資産運用の手段として利用できます。
例えば、積み立て型の生命保険(終身保険)は保険期間内に解約すると返戻金を受け取ることができます。契約して間もないうちは、支払った保険金に対する解約返戻金の割合(返戻率)が低いものですが、期間を経るにつれて増えていき、やがて支払った額を超えることになります。例えば、契約期間の20年目に返戻率が110%になる商品なら、元本より1割増えて返ってくることになります。
将来に向けての資産運用に役立つ商品として、個人年金保険も人気があります。公的年金と同様に、60歳までなど現役時代に保険料を払い終え、ある年齢以降に毎月一定額を受け取るものです。支払った保険金を保険会社が運用し、その成績によって受け取る額が変わる変額個人年金や、長生きすればするほど多額の保険料を受け取れるトンチン型年金も利用されています。
投資信託との比較
運用結果によって受け取る額が変わる保険は、価額が変動しやすい投資信託と似ています。両者の最も大きな違いは、死亡保障があるかどうかということです。では、資産形成の手段として考えたとき、運用における両者の決定的な違いは何でしょうか?
基本的に運用益については、生命保険は投資信託に見劣りすると考えてください。生命保険は、投資信託より保険というメリットがある分、運用に限るとデメリットがあるということです。保険には大きく分けて、終身保険のように支払う金額と受け取る金額があらかじめ決められているタイプのものと、変額個人年金保険のように運用によって差がつくタイプのものがあります。
終身保険は返戻率が運用結果に代わる指標になるわけですが、長期金利が低迷している中、多くのケースでは、返戻率は低く設定されているのが実情です。変額個人年金保険は投資信託と運用の仕組みは変わらないように見えますが、保険募集や事務処理、保険金支払いにかける人件費など、保険会社のコストが多くかかるため、投資信託よりも不利な運用結果になりやすいものです。
投資信託は投資対象などの選択肢が豊富にあることも、変額個人年金保険に比べたメリットとなります。
なお、税金面に関しては一概にどちらが有利とは言い難い面があります。支払われた保険金、投資信託の分配金や売却益などに通常は税金がかかりますが、それぞれの区分や支払い状況などによって、所得の区分も、利子所得、配当所得、譲渡所得、一時所得、雑所得など様々に分かれ、税金の計算方法も異なるからです。ただし、投資信託で活用できるNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金制度)などは、一般に税制上のメリットが大きいとされています。
資産運用にはどちらが有効か?
「まとまったお金が手元にないが、家族にどうしてもこの金額は残しておきたい」という人は、まず生命保険を検討するといいでしょう。
しかし、ある程度貯蓄と収入があり、運用でさらに資産を増やしたり、将来の備えをしっかりしたりして安心したいと考える人には、保険よりも投資信託がおすすめです。iDeCoやNISAなどの制度を利用して税制優遇を受けたり、運用コストが低い商品を選んだりすることによって運用益を高められる可能性があるからです。
「運用」を重視すると投資信託に分がある
返戻率が高めの終身保険や変額個人年金保険など、資産運用として利用できそうな保険は数種類あります。貯蓄や家族構成を考えたうえで、適したものがあれば保険も選択肢の一つです。しかし、投資対象の選択肢の多さや税制優遇など資産の「運用」を重視すると、保険よりも投資信託に分があるといえます。それぞれの特徴をよく理解したうえで加入や購入を考えてください。(提供:マネーLife Style)
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