コアCPI上昇率は0.1ポイント拡大
総務省が7月20日に公表した消費者物価指数によると、18年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(5月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想も0.8%)通りの結果であった。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.2%(5月:同0.3%)と上昇率が前月から0.1ポイント縮小、総合は前年比0.7%(5月:同0.7%)と前月と同じ上昇率となった。 コアCPIの内訳をみると、電気代(5月:前年比3.3%→6月:同3.1%)、ガス代(5月:前年比2.4%→6月:同2.5%)、の上昇幅は前月とほぼ変わらなかったが、灯油(5月:前年比14.3%→6月:同20.5%)、ガソリン(5月:前年比10.5%→6月:同16.1%)の上昇幅が大きく拡大したため、エネルギー価格の上昇率は5月の前年比5.6%から同7.3%へと拡大した。
また、宿泊料(5月:前年比▲1.8%→6月:同2.1%)、外国パック旅行費(5月:前年比5.6%→6月:同11.7%)などの教養娯楽が5月の前年比0.0%から同0.8%へと上昇率を高めたこともコアCPIを押し上げた。
一方、改正酒税法の施行に伴うビール、発泡酒などの値上げから1年が経過したことで食料品(生鮮食品を除く)の上昇率が5月の前年比1.1%から同0.7%へ鈍化したことがコアCPIを押し下げた。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.56%(5月:0.44%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(5月:0.25%)、その他が0.05%(5月:0.00%)であった。
上昇品目数が減少
消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、6月の上昇品目数273品目(5月は281品目)、下落品目数は183品目(5月は178品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数減少の主因は、改正酒税法の施行に伴う値上げの影響が一巡し、ビール、発泡酒などの酒類が軒並み上昇から下落に転じたことである。上昇品目数の割合は52.2%(5月は53.7%)、下落品目数の割合は35.0%(5月は34.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は17.2%(5月は19.7%)であった。
上昇品目数の割合は16年後半以降、50%台の推移が続いている。この間、コアCPI上昇率はマイナスから1%まで変動したが、そのほとんどがエネルギー価格の変動によるもので、物価の基調は長期にわたってあまり変わっていない。
コアコアCPIは3ヵ月連続で上昇率が鈍化
6月のコアCPIは4ヵ月ぶりに伸びを高めたが、その主因はエネルギー価格の上昇率が拡大したことである。日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(コアコアCPI)は、先月公表された6月の東京都区部では前年比0.2%から同0.4%へと伸びを高めたが、全国は逆に前年比0.2%(5月:同0.2%)と3ヵ月連続で伸びが鈍化した。
先行きについては、原油価格上昇の影響が遅れて反映される電気代、ガス代を中心にエネルギー価格の上昇率が高まることから、コアCPI上昇率は9月に1%に達すると予想している。
ただし、企業の価格改定に直結する個人消費の回復が緩やかにとどまり、経済成長率を下回る状態が続くこと、賃金上昇率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力も限られることなどから、上昇率はその後頭打ちとなり、1%程度の推移が続くことが見込まれる。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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