4-6月期は2四半期ぶりの増産
経済産業省が7月31日に公表した鉱工業指数によると、18年6月の鉱工業生産指数は前月比▲2.1%(5月:同▲0.2%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.4%、当社予想は同▲1.2%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.2%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲1.8%と2ヵ月ぶりに低下した。
6月の生産を業種別に見ると、在庫の積み上がりが続く電子部品・デバイスは前月比2.7%と5月の同3.4%に続き高めの伸びとなったが、国内外の設備投資回復を反映し好調を続けてきたはん用・生産用・業務用機械が前月比▲3.9%と大きく落ち込むなど、速報段階で公表される15業種のうち、12業種が前月比で低下、3業種が上昇した。なお、6/18に発生した大阪府北部地震によって一部の工場が一時的に操業停止を余儀なくされたが、影響が大きかったと見られる輸送機械は前月比0.2%のほぼ横ばいとなっており、地震による影響は限定的にとどまったとみられる。
18年4-6月期の生産は前期比1.2%と2四半期ぶりに上昇した(1-3月期は同▲1.3%)。大雪による工場の操業停止の影響を受けて1-3月期に前期比▲2.9%と落ち込んだ輸送機械が前期比3.4%の高い伸びとなったほか、在庫の積み上がりが続く電子部品・デバイスは前期比0.4%と小幅ながら8四半期連続の増産となった。一方、インバウンド需要の好調を受けて化粧品などを中心に好調が続いていた化学(除く医薬品)は前期比▲0.4%と1-3月期の同▲0.5%に続き小幅ながら減産となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年1-3月期の前期比▲0.5%の後、4-6月は同0.5%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年1-3月期の前期比▲4.5%の後、4-6月期は同3.3%となった。
18年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比0.3%と17年10-12月期の同0.7%からは伸びが鈍化したが、企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は明確となっている。4-6月期の設備投資は伸びが加速する可能性が高い。
消費財出荷指数は18年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4-6月期は同2.7%となった。耐久消費財(前期比4.2%)、非耐久消費財(前期比1.2%)ともに2四半期ぶりに上昇した。
18年1-3月期のGDP統計の民間消費は前期比▲0.1%と2四半期ぶりの減少となった。消費の基調は依然として弱いものの、大雪や生鮮野菜の価格高騰などの一時的な下押し要因が剥落したことから、4-6月期の民間消費は増加に転じることが見込まれる。4-6月期の業界統計、商業動態統計などの消費関連指標も1-3月期から持ち直していることを示すものが多い。
IT関連財の在庫がさらに積み上がり
在庫循環図を確認すると、18年1-3月期に「在庫積み増し局面」から「在庫積み上がり局面」に移行した後、4-6月期も同一局面に位置した。4-6月期は出荷指数が1-3月期の前年比1.5%から同2.0%へと伸びを高める一方、在庫指数の伸びが1-3月期の前年比3.9%から同2.5%へと低下したが、引き続き在庫の伸びが出荷の伸びを上回った。
鉱工業全体の在庫指数の水準はそれほど高くないが、IT関連財の在庫積み上がりには歯止めがかからない。
IT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は、出荷が前年比▲1.5%と1-3月期の同▲3.4%からマイナス幅が縮小したものの、在庫が1-3月期の前年比15.2%から同26.7%へと伸びを大きく高めたため、1-3月期の▲18.6%ポイントから4-6月期には同▲28.1%ポイントへと悪化幅が拡大した。品目別には、半導体集積回路、ビデオカメラ、パソコンなどの在庫が大きく積み上がっている。現時点では、鉱工業全体の在庫調整圧力は限定的だが、IT関連財の調整が長期化すれば、生産の下振れリスクが高まるだろう。
製造工業生産予測指数は、18年7月が前月比2.7%、8月が同3.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲2.2%、▲0.5%であった。
18年6月の生産指数を7、8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、18年7-9月期は前期比3.7%の高い伸びとなるが、生産計画の大幅な下方修正が続いているため、この試算はあまり当てにならない。18年3月速報時点で同様の試算をした際には4-6月期の生産は前期比3.5%となっていたが、実績は同1.2%にとどまった。現時点では7-9月期は2四半期連続の増産となるものの、4-6月期よりも伸びは低下すると予想している。
なお、7、8月の予測指数は7/10時点で調査されているが、7月上旬の西日本豪雨の影響は完全には織り込まれていないと考えられる。西日本豪雨では自動車メーカーを中心に一時的に工場の操業停止を余儀なくされた。また、7月下旬の台風上陸も生産活動に一定の悪影響を及ぼした可能性がある。7月の生産は予測指数(前月比2.7%)を大きく下回る可能性が高い。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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