このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。
2018年8月2日(木)Market TalkのSummary
今後の相場展望
ピリッとしない相場だが、8月に入ってからちょっと相場の地合いが変わってきたように感じる。任天堂とソニーのような相場の柱となる銘柄が昨日(8/1)あれだけ上がったということは、やっとまっとうな相場になってきたのかなと思う。今までファナックやカルビーのように、好決算なのにひとつ悪いことがあるとそれで全部売られてしまう相場だったので、ソニーや任天堂の決算については素直に額面通りマ-ケットは受け取るか?と思っていたが、ご覧のとおりで、ちょっと弱いところがあっても全体が良ければということで、良い方を見て上がり始めている。
これまでは、ファナックのように最高益で通期の上方修正を出しているのに、「中国景気の減速懸念」の一言で売られてしまう。だがマーケットはその先を読んでいない。中国も通商摩擦で景気が悪くなるのだから当然対策は打つわけで、利下げ、所得税減税などを打ち出している。また下期からインフラ投資にアクセルを踏んでいくといったことも決まっている。アメリカも減税効果が今出てきていて、GDPも4%にのった。今後中間選挙を控えて、さらに減税の第2弾をやる、インフラもやるんじゃないかと言われており、アメリカも強い景気にさらに火がつくのではないか。ドイツも悪化に歯止めがかかりつつある。日本も豪雨、極暑などの影響があるものの、この企業業績の良さをみれば、そこそこの景気がキープできるということなので、年後半は世界中で景気が良くなってきて景気敏感株が強くなってくるのではないか。
米中貿易摩擦への懸念から米株式市場に続き東京市場でも機械株など中国関連株に売りが広がりましたが、このセクターの株は当分厳しいですか?
そんなことはないと思う。中国も政治局の会議でインフラに力を入れる、景気対策をやると決まり、今後景気が浮揚するであろうことを考えると、足元強いのは間違いないので、中国関連株は良いのではないか。
日米の長期金利の上昇を受け、銀行など金融株には運用環境の改善などを期待した買いが入って上昇していますが、これは一時的なものでしょうか?
日本の金利は結局0.2%で頭打ちになる。短期金利がマイナスで長期金利が0.2%ぐらいではほとんど銀行の収益は出ない。短期金利がこれだけ低かったらスプレッドは改善しないので、今は日銀の金融政策の微調整にからむトレーディングで一時的なものであろう。
第1四半期決算発表の前半が終了しましたが、その結果を踏まえて今年度の企業業績や株式市場の見通しをどのようにお考えですか?
出だしは良いのと悪いのが入り混じっている展開だったが、全体として悪くない。武田、商船株などは悪いながらも予想より悪くないということで買われている。任天堂、ソニー、電子部品、半導体など良いものは本当に良い。早い段階で今若干の減益予想になっているところもこれから変わってくるだろう。
一般に夏枯れ相場と申しますが、今年の夏はどうでしょうか?
今年の夏は企業業績を背景に熱い夏になるのではないか。夏休みに入るので停滞するところがあるかもしれないが、逆に夏休みになると悪いニュースは出てこないのではないか。ただ気になるのは、突発的なことが起こることで、8月はアメリカとイランの政情(軍事的に衝突する可能性)に注意。
決算発表が一通り終了した後、自民党総裁選や米国中間選挙に向けて株価が調整するとすると、日経平均でどの程度下げると見ていますか。22,000円を割ることはありそうですか。
22,000円を割るのはちょっと考えにくい。今回も22,500円の節目が意識されていたし、総裁選もここまでくれば安倍総理の圧勝であろうから、総裁選を前に株価が調整することはないのではないか。米中間選挙も波乱なく終わるであろう。トランプ大統領は株価を非常に意識している大統領なので、選挙前に相場を荒らすようなことはしないだろうし、むしろ相場を落ち着かせるようなことをすると思う。
日銀緩和軌道修正の適否とこれによる相場の変化について。為替に影響は出るか
ざっくり言えば現状維持。微調整のみで今後も長く緩和しますというだけの話なので、為替にもあまり影響はないだろう。
米国のフェイスブックやツィターの決算後の暴落でナスダックは天井なのか?それとも単なる調整か?
高値圏にあったからここまで大きな急落になったわけで、単なる調整だと思う。
Jリートの見通しをお願いします。
日銀の会合で今後も金利が上がらない - 長期に渡って緩和を続けることが明らかになったので、低金利が続くなかでは、Jリートのような利回り商品はますます魅力的になるだろう。
ここから年末にかけての日経平均の動きはざっとどのようだと予想されますか?
24,000円の高値を抜けて25,000円に向かう動きになるだろう。これまで企業の業績は右肩上がりで、株価もそれについてきていたが、今は乖離してしまっている。米株の調整、貿易摩擦などの要因で株価が追いついていない。自民党総裁選、米中間選挙が終わり、貿易戦争の着地点を見出し不透明材料が晴れると十分24,000円を抜けていく水準になるだろう。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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