「勉強しないといけない。でも、記憶力は衰え集中力も続かない。そもそも時間がない……」そんなモヤモヤを抱えて毎日を過ごしている40代。しかし、資格スクールで多くの「40代受験生」の指導にあたった経験を持つ暗記の達人、碓井孝介氏は、「今の40代は勉強するかしないかで将来に大きな差がつく」と語る。そこで今回はそんな碓井氏に、「40代が勉強を始める時に身につけるべき心構え」について話を伺った。

なぜ、40代は50代・60代よりも「覚えられない」のか

40代,勉強のコツ
(画像=The 21 online)

私はこれまで、資格スクールの講師として、多くの「40代受験生」を見てきました。40代の受験生の皆さんは、その多くがやる気に満ち溢あふれていて、大変に勉強熱心です。仕事や家事に追われながらも勉強に没頭するその姿は、若い方々にも見習って欲しいくらいです。

しかしながら、そんな真面目な40代の方々から、頻繁に寄せられる「ある悩み」があります。その悩みとは、とにもかくにも覚えられないということ─。どんな勉強も、まずは覚えることが基本です。にもかかわらず、40代の皆さんは他の世代に比べ、「とにかく覚えられない」と嘆いていらっしゃるのです。

実際に私が見てきた資格スクールの現場でも、40代は他の世代に比べて合格することが難しい状況にありました。このように述べると、「50代や60代以降の人の方が覚えられないはずだ、40代なんてまだまだ若いのだから、記憶力は衰えていない」といわれることがあります。たしかに、年齢が上がれば上がるほど記憶力が低下するという一般論によれば、それが真実のように思います。

ではなぜ、50代や60代よりも、40代の方がなかなか「結果」を出せないのか。その理由はいたって簡単です。50代や60代の方々は勉強の「量」でカバーできるのに対し、40代はそれができないほど、多忙な人が多いのです。50代や60代は仕事をリタイアした方もいますし、リタイアしていないまでも、40代の頃のようにがむしゃらに残業せずに済む、という人も比較的多いはずです。子育ての面でも、50代や60代の方々は、子どもが既にある程度自立していたり手が離れていたりする方が多いのではないでしょうか。

しかし、現実を嘆いて下ばかり向いてもいられません。変化の速い現代において、会社でもどこでも結果が求められているのが40代であることも事実です。では、多忙な40代が記憶力を高めて仕事でも勉強でも結果を出すためには、何を、どのようにすればよいのでしょうか。

まず必要なのは、40代が陥りやすい「記憶の落とし穴」をしっかりと意識すること、そしてその落とし穴をふさいで勉強することです。私は数多くの40代受験生と接するなかで、40代の「記憶の落とし穴」=勉強のウィークポイントを把握することができました。40代で多忙であるにもかかわらず、結果を出した人の勉強の仕方を見ていると、やはりウィークポイントへの対策がごくごく自然にできていることが分かりました。

だとすれば、40代の「記憶の落とし穴」ともいえるウィークポイントを明確にして、落とし穴に落ちないように勉強すればよい。このようにいい切ることが可能です。

40代の記憶の落とし穴① 余計なことを考えてしまい、情報を素直に覚えられない

40代の「記憶の落とし穴」の一つ目は、余計なことを考えてしまって、素直に覚えることができないということです。10代や20代といった若い方々に比べて、40代の方々は、意識を集中させるポイントがズレてしまっているともいえます。

10代や20代は、覚えるにあたって「目の前にある情報」に集中します。誤解を恐れずにいうと、本に書かれている文章を覚えるために、「字面」を覚えにかかるのです。一方で40代の方々は、「目の前にない情報」に集中します。目の前にある文章を覚えなければいけない場面でも、文言から勝手に他の場面を想定し、その情報の前提を「膨らませて」勉強する傾向があるのです。

けれども勉強は、思考する前にまずは「記憶」に特化して取り組むべきです。思考しようにも知識がなければ正しい思考はできないからです。つまり、「思考する→覚える」ではなく、「覚える→思考する」の順番なのです。覚えるのが第一段階で、思考するのは次の段階だと肝に銘じてください。まずは覚えることに特化する。このような割り切りがなければ、多忙を極める40代が勉強で結果を出すことは難しいのです。

40代の記憶の落とし穴② 時間がないと覚えられない、と思い込んでいる

40代の記憶の落とし穴といえば、「時間がない問題」についても言及しなければいけません。ここで述べたいのは、あなたは多忙で時間があまりないでしょうが、勉強する時間がないから記憶ができないというのは、大ウソだということです。

あなたの会社の同僚や先輩を思い浮かべてください。社内の昇進試験にパスしたり、スキルアップのために資格を取得できているのは、ほとんどの場合、仕事ができる人(=普段から忙しくしている人)ではないでしょうか。そうです、忙しい人ほど、自己投資である勉強でも結果を出しています。

時間がないから勉強できないのではなく、まずは勉強するための時間を生み出す努力が足らないのです。けれども、確実に結果を出すためには、このような努力だけでは足りません。そこで必要になるのが、「短時間で記憶できる方法」を用いて勉強することです。絶対的な勉強時間を増やす努力をしつつ、手持ちの少ない時間を密度の濃い時間にするコツを用いて、日々の勉強に取り組むのです。

たとえば勉強時間を無駄にしないように、重要事項だけに絞った教材を選ぶこと、自ら時間的制約を生み出すことで、強制的に集中できるようにすることなど、同じ時間でも有効に活用する工夫をするのです。密度の濃い時間を過ごし、短い時間で多くの情報を記憶できるようにしましょう。

40代の記憶の落とし穴③ 集中力が昔ほど続かない

40代の方に共通する、覚えられない大きな原因は他にもあります。それは「集中力」です。若い頃と異なり、集中力が上手く発揮できないと感じたことはないでしょうか。大学受験や高校受験のために勉強していた頃は2時間や3時間ずっと机に向かっていても平気だったのに、今では30分も机に向かえない。このような悩みを抱えているのは、あなただけではないのです。

40代の受験生の方々とお話ししていると「昔のように集中できなくて……」という言葉がよく聞こえてきたものです。そんな時、私は逆に質問をしました。「集中できない原因は何でしょうか?」と、聞いてみたのです。回答自体は様々ですが、それぞれの答えのなかで共通するのは、勉強以外の「他のこと」が原因で集中力が削がれるということ。

思うに40代は若者以上に情報の洪水のなかにいます。インターネットの世界にある情報はもちろんのこと、リアルな世界でも、多くの仲間・社会とのかかわりのなかで生活しているのですから、そのリアルな世界の情報量も、他の世代と比べて相当な量になります。このような情報が40代の集中力を削ぎ、机に向かっても集中できない環境を生み出しているのです。

「40代の勉強法&記憶術」 =情報を絞り、限られた時間で、集中して覚える

ここまでお話しした40代の「記憶の落とし穴」をまとめると、次の三つになります。

・余計なことを考えてしまい、情報を素直に覚えられない
・時間がないと覚えられない、と思い込んでいる
・集中力が昔ほど続かない

40代,勉強のコツ
(画像=The 21 online)

限られた時間で結果を出すためには、これらの三つの落とし穴を埋めることを意識しなければいけません。まずは「情報を絞ること」です。情報が大きすぎて(あるいは多すぎて)覚えられないのですから、覚える対象を明確にして、絞りに絞っていくのです。

次に時間です。時間を生み出す努力を怠らないのは当然のことですが、結果を出すためにはそれだけでは足りません。短時間で覚えられる勉強スタイルを構築し、そのスタイルで日々の勉強に取り組むのです。

最後に、集中力も大切です。特に40代は集中力を高める努力をするのと同時に、集中を阻害するものを自分の周りからなくす工夫が必要です。プラスを増やす工夫をし、マイナスを減らす工夫も同時にしていくのです。このように40代が陥りやすい「記憶の落とし穴」をふさぐことができれば、今までよりもずっと覚えやすくなります。

新刊『40代からの勉強法&記憶術』では、まず第2章で「情報を絞ること=情報のターゲティング」について解説しています。その後の第3章では「短時間で記憶できる方法」を説明し、第4章では「集中のコツ」をお伝えしています。本書を通して読めば、ここまでにお話ししたような「記憶の落とし穴」に陥ることなく、効率的な勉強・記憶ができるようになるはずです。ぜひ、勉学に悩める40代の方々は手にとってみてください。

40代,勉強のコツ
(画像=The 21 online)

碓井孝介(うすい・こうすけ)
1984年、北海道生まれ。暗記を中心とした独自の勉強法で、難関大学に現役合格。在学中に司法書士試験、卒業後に公認会計士試験に合格。大手監査法人勤務、資格スクール講師を経て、現在は司法書士として実務に携わる。著書に、『頭のいい人は暗記ノートで覚える! 「時間は半分、成果2倍」の勉強法』(三笠書房)など。(『The 21 online』2018年02月23日 公開)

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