「商品」に関する誤解とは?

ビジネス常識,船ヶ山哲
(画像=The 21 online)

連載第1回にて、「大企業に勤めていれば安心」という考えがいかに幻想であるかを解き明かした船ヶ山氏。誰もが新たなビジネスを考える時代に来ているが、そのためにはまず、従来の常識を捨てなくてはならないと説く。それは「商品」に対する誤解だ。

あなたは道端の人から飲み物を買うか?

時代は、変わりました。

一昔前のビジネスにおける成功法則は、「いい商品さえ作れば売れる」が常識で、とにかく技術や品質にさえこだわっていればよかったわけですが、今は、いい商品など当たり前で、それだけでは1円の価値にもなりません。

その証拠に、あなたのライバルは、粗悪な商品を扱っているでしょうか。

もちろん、多少の物言いはあるにせよ、お客からしたら違いなどわかりません。ということは、もはや、いい商品だけで勝負することなどできない領域にまで来ているということなのです。

そもそも、今の日本では百円ショップの商品の品質すら世界から見れば群を抜き、安いから粗悪品ということもありません。

では、今後のビジネスをどのように展開していけばいいのか。それは、ビジネスにおける根源的要素をもう一度、振り返ることです。そこにこそビジネスを勝ち抜く秘訣が隠されています。

それを公開する前に、質問です。あなたは、街中で突然声をかけられた見ず知らずのホームレスの人から、ミネラルウォーターを買うことはありますか?

このミネラルウォーターは有名メーカーの出しているもので、賞味期限内であり、かつ、封もしっかりと閉まっているとします。

さらにその人は、迷っているあなたに追い討ちをかけてきます。

「半額の50円でいいよ」

このとき、あなたはどうしますか?

それでも大半の人は、「速攻で断る」はずです。

なぜなら、その商品がいかにいいものであっても、それを扱っている人を信用することができないからです。

「いいもの」よりも「誰から買うか」が問われる

では、もう一つ質問です。

あなたに、30年以上もお世話になっている恩師がいたとします。困ったときにはいつも助け舟を出してくれ、貧乏な頃には何度もご飯をご馳走してくれた、自分の人生にとってかけがえのない存在です。

その恩師があるとき、「理由を聞かずに50万円用意してくれないか」と言い出しました。

このとき、あなたはどうしますか。

「そんなお金など用意できるか!」

と断るでしょうか。

それとも黙って現金の入った封筒を差し出すでしょうか。

もちろん、その恩の深さにより変わるでしょうが、おそらく多くの人は、理由を聞かずにお金を差し出し、しかも、そのお金を返してもらおうとも思わないはずです。

なぜなら、50万円以上の「恩」があなたと恩師を繋いでいるからです。

ただ、おかしいと思いませんか。見ず知らずの他人のときは、いい商品でかつ半額にもかかわらず秒速で断ったのに、恩師のときは、理由すら聞かずにお金を差し出してしまう。

ここにこそ、今回のテーマの真髄が隠されているということです。

それは『信頼』です。

「いい商品」に溺れる人が多すぎる

いい商品に溺れる人は、このビジネスの根源でもある信頼を軽視する傾向があります。しかし、今回の事例を見てわかるように、いい商品を扱い値下げしたところで「信頼がない人からは商品を買わない」ということなのです。

このように言うと、「極端な例を出せば、そりゃそうでしょ」と言う人がいますが、そうではありません。極端に言わないと、こんな大切なことすらわからなくなっている人が、この世の中には溢れているということです。

だから、このような例をあえて出したわけですが、これは今後どんなに技術が進歩し便利な世の中になったとしても変わることはありません。

なぜなら、ビジネスを支える根源は「信頼」に勝るものはないからです。

船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)レムズリラ代表
1976年、神奈川県生まれ。心理を活用したマーケティングを得意とし、人脈なし、コネなし、実績なしの状態から、起業後わずか5年で1,000社以上のクライアントを獲得。その卓越したマーケティング手法は、数々の雑誌やメディアに取り上げられ、現在ではテレビ番組(テレビ神奈川)のメインキャストを務めるほか、ラジオ番組(FM横浜)でもメインパーソナリティーとして活躍中の起業家。また、プライベートでは子供の教育を最優先に考え、マレーシアのジョホールバルに在住。(『The 21 online』2018年02月27日 公開)

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