自分にとってベストな勉強法の見つけ方
勉強は、しんどくて当然。そう考える人は少なくない。しかし、自分を追い込んだ挙句、結果が出なかったとき、「こんなに勉強したのに、結果が出ない。やはり自分はバカなんだ」と、気持ちが折れてしまうのではないだろうか。しかし、少し視点を変えれば勉強は上手くいく。そう指摘するのは、「ビリギャル」先生の坪田信貴氏と、京大芸人であるロザンの宇治原氏と菅氏。勉強に行き詰って悩んでいる学生や社会人に向け、「学ぶとはどういうことか」アドバイスいただいた。
理解を深める「エアー授業」とは?
――大人になると記憶力が落ちると感じますが、知識の定着を高める秘訣はありますか?
坪田 僕が提唱するのは「エアー生徒」を想定して勉強することです。たとえば、「参勤交代は徳川家光」と覚えるだけでなく、目の前に生徒がいると想定して「なぜ、家光さんは参勤交代を始めたと思う?」と質問して自分で答える。すると暗記を理解レベルまで落とし込める。理解するから記憶に残るし、ますます面白くなってくるんです。
菅 ちょっと待ってください! それ、僕が本に書いた宇治原の「エアー授業」と同じじゃないですか。学生時代、宇治原は自分の部屋でひとり教師になりきって日本史のストーリーを面白おかしく話す「エアー授業」をしていたんです。
宇治原 これは……坪田先生にパクられてるとしか思えないな(笑)。
坪田 いやいや。(笑) だって、僕は20年前からやってますもん。
宇治原 それ言うならこっちは30年前。僕の母親はアホのふりして「これってどういう意味?」って質問してきましたから!
――なんという偶然(笑)。でも、学ぶ側が「先生になる」という発想は面白いですね。
坪田 カリスマ講師っていますよね。それって結局、「先生」がすごいだけなんです。たとえるならば、Jリーガーのシュートをバンバン見せられて、生徒が「すごい! すごい!」と感嘆しているような状態。ただ、眺めているだけでは本人は上達しません。それよりも、シュートを打つ練習を圧倒的に多くすべきというのが僕の考えです。
つまり、本人が教える側に回れということです。理解していなければ、人に説明できません。それに、説明しているうちに、理解できていないところも見つかってきます。
僕の塾にはカリスマ教師は一人もいません。それよりも生徒の勉強のPDCAをサポートして、宇治原さんのお母さんみたいに「これってどういう意味なの?」と引き出すことができれば十分。勉強嫌いの生徒さんもたくさん集まりますが、最終的にはセンター試験の平均点が80点を超えるまで伸びます。
目標は大きくても、身の丈に合った勉強を
――どんな勉強法も継続には、目標が大事と言われます。目標設定で大切なことは何でしょう?
菅 僕は「身の丈」に合っていることが大事だと思っています。たとえば、まぐれで合格した進学校と自分の実力に見合った普通校――どちらか選べと言われたら、僕は後者を選びます。そのほうが伸びるからです。
勉強が続かない原因の一つは、身の丈に合わず、周りのレベルについていけなくなるからです。
ただ、身の丈は、実力とともに変わっていくもの。みんな変わらないものだと思っているけど、今クリアできそうな目標を設定し、それを更新すれば自ずと実力はついてくる。そうすれば達成できそうな目標も変わってくるんです。逆に、身の丈に合わない無謀な挑戦をし続け、勉強しなくなれば身の丈は変わらないままです。
――一方、坪田先生は本の中で目標設定は「自分の枠を広げる」と書かれています。ここは菅さんとは違うところでしょうか。
坪田 いや、本質的にはまったく同じ意味なんです。僕はいつも、目標は複数持った方がいいということを言っています。
たとえば、僕は小学生の頃に抱いた「世界史の教科書に載りたい」という夢があります。枠を広げまくってるでしょ。でも夢があまりに大きすぎたので、僕はまず「毎日五分だけ勉強しよう!」という、今の実力でも達成できそうな目標を目指すことにしました。それは当時の僕の身の丈に合っていたからです。
僕はこれらを「直近目標」と「最終目標」と呼んでいます。最終目標はどこまでも大きくていい。でも目の前に掲げる目標は身の丈に合わないと続かないし、伸びないんです。
宇治原 これはもう、どちらかがどちらかをパクっているとしか思えないほど同じですね(笑)。
社会人は自分が「楽しい」と思うことを学べ!
――究極の勉強法が見えてきた気がします。皆さんは第一線で活躍する社会人でもあるわけですが、今も勉強していますか?
坪田 していますが、実は「勉強」って言葉あまり好きじゃないんです。〝勉めて強いる〟ってお堅いでしょ。僕はどちらかと言うと、「学習」だと思っています。〝学んで習う〟ですよね。ワインが好きだったら、お酒の本を読んだり、飲みに行ったりして学べばいい。そのうち酒造文化や土壌にまで関心が広がって歴史や地理まで造詣が深くなる。自分が好きなものを進んで学ぶ――勉強するって本来そういうことだと思います。
菅 宇治原は知らないことあると、スマホで速攻調べますね。あと新聞読みながら、クスクス笑ってます。おかしいでしょ?
――宇治原さんは、楽しんで調べ物をされているのですか?
宇治原 もちろんです。たまに調べている途中で「いつかクイズで出題されるかも」と思うこともありますが、それはクイズに正解するのが楽しいから。「正解しなければならない」という強迫観念のようなものはありません。さらに調べたら、「自分ならこう出題したる」「これ正解したら気持ちええやろな」って妄想が止まらなくなるんです。
坪田 僕は、菅さんの本を読んで、楽しみながら学ばせていただきました。正直言うと、菅さんの本を読んで嫉妬したんです。文章で人を笑わすことができるってこういうことだ! って。あちこち線を引いて、折り曲げて、隅から隅まで勉強させていただきましたね。
――菅さんは、文章の書き方をどこで学ばれたのでしょうか?
菅 まったくしていないんです。ただ振り返ると小学校の頃から図書館の落語の本をたくさん読んでいました。こうやってオチをつけるんか、オモロ!って。もちろん、将来本を書くとも芸人になるとも思っていなかった。
宇治原 これもさっきの「学習」の話と一緒ですね。菅さんは本を読みたいから、読んでいたんです。「将来本を書くためには、文章を勉強しなければならない」と思って読んだわけではない。本を読むのが楽しいから、自然と書き方も学んでいたんですね。
――好きこそ、ものの上手なれですね。最後に、坪田先生は勉強に一番大切なのはなんだと思いますか?
坪田 それは「こんなん、絶対できる!」って思うことです。「やればなんとかなるっしょ!」でもいい。根拠はなくとも自分に自信をもつ。これほど成長を引き出す強い方法はない。この気持ちがもてれば、かならず最後は伸びると断言します。
坪田信貴(つぼた・のぶたか)学習塾「坪田塾」塾長
心理学を駆使した学習法により、1,300人以上の子供を個別指導し、多くの生徒の偏差値を短期間で急上昇させた実績を持つ。2013年、著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が大ヒット。その後も受験指導のみならず、企業の人材教育や起業アイデアの指導、講演活動等多角的に活躍中。
菅 広文(すが・ひろふみ)ロザン/お笑い芸人
1976年、大阪府生まれ。大阪府立大学経済学部中退。ベストセラー『京大芸人』をはじめとする著書多数。近著に、『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)。
宇治原史規(うじはら・ふみのり)ロザン/お笑い芸人
1976年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。その頭脳と知識を活かし、さまざまなクイズ番組で活躍する。
(『The 21 online』2018年03月04日 公開)
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