売れる人と売れない人の差がはっきり出る「営業」

売れない営業マン,一戸敏
(画像=The 21 online)

売れる人はひたすら売上げを上げ続け、売れない人はひたすら売れない……。それが営業の世界だ。そんな中、保険営業の世界でまたたくまにトップに上り詰め、現在は300人もの社員を抱える企業の社長として活躍するのが、(株)エージェントの一戸敏氏だ。厳しさを増す保険営業の世界で快進撃を続ける一戸氏に、「売れない営業マンがしがちな5つの言動」についてうかがった。

「保険代理店」は消えるビジネス!?

「売れる営業マンになりたい」「トップ営業マンになりたい」

営業の世界に飛び込む人は、みんな絶対に一度はこの気持ちを持ったことがあるはず。

しかし……。どこの業界にも売れる営業マンと売れない営業マンが存在する。これは営業の世界で確実に起きる現象で、この格差は販売方法の標準化をしても、人工知能化しても、なかなか縮まらないと言われています。

ある調査によれば、私が22年間携わってきた「保険代理店」のビジネスは、「AIが進化していくとなくなる職業」の第7位にランクインしているそうです。ただ、AI化やオートメーション化により商品説明や重要事項説明、販売における法令遵守はできても、「お客様との距離感」や「お客様との間にある空気を読む力」など、アナログで勝負しなければならない領域は未来永劫残り続けるでしょう。そして、この「営業現場の真実」と向き合えない営業マンは、2100年になっても2200年になっても売れない営業マンとして成果を挙げられず、ほとんどの業種から消えていくのだと思います。

では、どうやったら売れる営業マンになれるのかを突き詰めて考えなければなりませんが、その際には「売れる営業マンがしていることをする」ではなく、「売れない営業マンがしていることをしない」ほうがはるかに簡単です。 その中でも代表的なものとして、売れない営業マンが知らずにやってしまっている「5つの理由(言動)」をお伝えします。

1 清潔感が伝わらない営業マン

これは誰にでもすぐに改善できることなのに、ほとんどの営業マンが手を抜いていることでもあります。

お客様にとって清潔感とは、好印象を根付かせるという効果ではなく、「不快感を与えない」という「マイナス要素を消す」という作用があります。

営業マンはお客様に目の前に座っていただき、話を聞いてもらわなければなりません。それなのに、不快感を相手に与えていてはきちんと対峙してくれるわけがない。そこでもう「The End」なのです。

清潔感を出すことなんて誰でもできるはず。高いスーツを身につけるとか、ブランド物のネクタイをするとかではなく、スーツのパンツにきちんと折り目があるか、ネクタイに汚れがついていないか、そのレベルでいいのです。

ただ、気を付けたいのは「におい」です。

口臭、体臭はもちろんですが、香水も駄目。

売れない営業マンには「におう人」が結構多いし、売れる営業マンは「においがしない人」が多い。営業マンのイメージは「無色透明」で「無臭」がいいのです。

「清潔感」が向上すれば「信頼感」も向上する可能性がより高くなると言われます。にもかかわらず、ここを最初に改善しようとする営業マン、なかなかいないものです。

2 お客様との距離を考えられない営業マン

お客様との距離には2つあり、一つは「物理的距離」、もう一つは「精神的距離」です。このお客様にとってどれくらいの物理的距離が心地よいのか、どれくらい心に寄り添ってあげるのがこの人にとってよいのか、どちらも意識するようにしなければ、絶対に売れる営業マンにはなれません。

相手にとって心地よい物理的距離は、人によって違います。それを知るためにはまず、場数が必要。とにかくどんな人とでも会って話すことです。

その際、単に話すだけでなく、距離感を意識しながら話してみてください。すると、「適度な距離感」を得た時の効果がどれくらい劇的かを体感できるはずです。

もう一つは、「身近の人5人」での訓練。

自分が日常的に会話する人を5人選んで、その人との距離感を常に意識しながら話してみるのです。特にこの辺に敏感なのは子供ですから、子供との距離感を意識するといいかもしれません。目線(目の近さ)、声の聞こえ具合、身体の接触度合い、そんな些細なことが子供との距離感を縮めるということ、誰でも経験していると思います。これはお客様にとっても一緒のことです。

自己開示するからこそ、共通点が見つかる

一方、精神的な距離を縮めるには、まず「自分を知ってもらうこと」です。いわゆる自己開示、情報開示ですね。

「自己紹介シート」みたいなものをお客様に渡している営業マンもいますが、これでは不十分。形式的な自己開示ではなく、通常の会話の中で自分の生い立ちや考え方、思想、なぜこの仕事をしているのかなどをきちんと順序よく伝えることです。

営業という仕事は80%のヒヤリング、20%の情報伝達で成立するものですから、まずは相手から情報開示をどれだけしてもらうかがカギになります。

では、相手の情報を開示してもらうのに一番効果的なのは何かと言えば、「共通点を見つけること」。だからこそ自分の情報を提示することで相手との共通点を見つけ出し、「相手が話しやすい環境」を作るのです。

残念ながら売れない営業マンは、この環境を作るのが下手なのです。

3「守れない」営業マン

これはよく社員教育や営業マン研修でする話ですが、いくらトークがうまくても、商品知識があっても、「大切な3つを守れない営業マン」は10年営業マンをやっても売れません。

その3つとは、「時間」「約束」「期限」です。

そんな当たり前のこと……と言っているそこのあなた、ではこれまでの営業マン人生で、この3つを一度も守らなかったことはないと胸を張っていえるでしょうか?

私は20年以上にわたって営業をしてきましたが、極論すればその間、やったのはこの三つだけです。しかも、「ギリギリではなく、必ず15分前に約束地に到着する」、「約束をしたこと以上の効果や成果を持参する」「それを必ず期限の2日前に提出する」ことをひたすら心がけていきました。こうした小さな「守る」ことが、コツコツと信頼を積み重ねていくのです。

逆に、たった5分でも時間を守れない、期限をどうしても1日過ぎてしまう、という営業マンの信頼や信用は少しずつ崩れ、成約に結びつかないどころか、人間同士の信頼関係すら崩壊していく。営業とはそういうものです。

こういう人によくあるのが、「これくらいのことならちょっと遅れてもいいだろう」という自己中心的な考え方。ただ、自分から見れば些細なことでも、相手から見たら重要なことだった、ということは多々あるもの。自分にだってそういうことがあったはずなのに、思考の軸が相手に置かれていないために「まぁいいか」となり、期限、約束、時間を守れない。自己中心的な人は必ず相手から「自分を見ていない」と見抜かれ、永遠に売れません。

4 何事も「継続できない」営業マン

またもや普通の話です。

「継続は力なり」……本当に先人は素晴らしい言葉を残したものだと心から思います。特に営業マンの世界ではこの言葉に尽きる、そう言っても過言ではないのです。

有名すぎる話ですが、イチロー選手のエピソード。 毎朝同じものを食べることから始まり(最近は「カレー」はやめたそうですが)、球場に入ってからの準備運動、打席に入ってからの動作、寝るまでの生活リズム……。彼には完璧ともいえるルーティン、継続があります。

イチロー選手は自分を評して、「自分には才能はないが、ただ一つ『続ける』という才能はあるかもしれない」と言っています。

才能というのは「天性のもの」と思われがちですが、一つだけコントロールできる才能があります。それがまさにこの「継続」。朝早起きをし、同じ時間に会社に行く。必ずアポイントを1カ月間先まで埋め込む、絶対的優先順位を守り続ける……。どんなことでもいいので、自分で決めたことは必ず守る。そんな「セルフコントロール」ができる人から、お客様は「買いたい」と思うのです。

「継続の天才」、これが営業マンとして成功する人の条件です。

5 大義を語れない営業マン

どんな営業マンにも、少なくともその仕事に就いたばかりのときには、夢や大義があったはずです。でも、日々の苦労や雑念の中、いつの間にか夢や大義を忘れてしまう。すると、行動や発言がこぢんまりしてしまい、周囲の人に「自分がどうしてこの商品、サービスを売っているのか」という大義を語れなくなる。

こうした「こぢんまりした営業マン」「志がない営業マン」からお客様は何も買わない。これは絶対的事実です。

この商品を買うとどうなるかという「説明」も大事ですが、お客様が必要としているのはむしろ、この商品を買っていいかどうかの「納得」です。商品説明や取扱説明なら、ロボットにだってできる。ただ、「納得」をしていただくには、理解に加えて「感心」や「感動」などの感情をお客様に持ってもらう必要があります。

そのためには、この仕事を通じて実現したい大志や、どうしてこの仕事を始めたのかという初志を、常に語れなければならないのです。

そして、そういう営業マンはときに「尊敬」という感情すら勝ち得ることができるのです。

以上が、売れない理由を自分で作っている営業マンの「5つの言動」です。一つでもなくすことで、一人でも多くの「売れる営業マン」が活躍することを祈ります。

一戸 敏(いちのへ・さとし)保険代理店(株)エージェント代表取締役兼CEO
北海道札幌市出身。明治大学商学部中退。会計事務所勤務を経て28歳で保険業界に転身。営業マンとして数々のタイトルを獲得すると同時に、自身が経営する株式会社エージェントを大型化し、グループ全体で300名ほどの組織を形成し、グループ全体で取扱高100億以上の企業にまで成長させる。
住宅・不動産会社(株)FIND会長兼ファウンダー。米国保険ブローカーAgent America co.,ltd Director。保険業界の称号であるMDRT終身会員(18年連続登録)、MDRT COT11回登録、MDRT TOT2回登録。(『The 21 online』2018年3月号より)

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