大事なのは「いかに楽しく習慣化するか」

独学,勉強のコツ,本山勝寛
(画像=The 21 online)

TOEICや資格試験など、社会人でも試験のために勉強しなければならない機会はある。そうしたときに、スクールに通うなど特別な対策を取らないとうまくいかない、と思い込んでいる人もいるかもしれない。しかし、実は独学だからこそ目標達成に近づける方法もある。学生時代から独学のみで目標を達成し続ける本山勝寛氏にうかがった。《取材・構成=塚田有香》

自由な「独学」だからこそ気をつけるべきこと

新しいことを勉強するには、スクールに通うなど人に教わることも一つの方法ですが、私は独学であってもやり方次第で結果を出せると思っています。私自身も、独学で東大やハーバードの大学院に合格しました。やり方さえ覚えてしまえば、勉強する時間も場所も自分の好きなように設定でき、しかもどんな勉強にも応用可能です。独学のほうがむしろ成果を出せることもあるのです。

独学を成功させるために重要なのは、まずは目標設定を明確にすることです。自分が到達したいゴールと、それを達成したい期日を設定して初めて、スタートを切ることができます。

英語学習であれば、「英語が話せるようになりたい」では目標になりません。「TOEICで800点を取る」「英語でプレゼンができるようになる」など、ゴールはできるだけ具体的に設定してください。

目標の期日は、1年以内に設定すること。3年後や5年後では先が長過ぎて、勉強は後回しになりがちです。ただし、1年後でも時間はかなりありますから、さらに目標をブレイクダウンし、「四半期」「月間」「週間」での目標を設定し、それぞれのスパンで学習計画を立てます。

適切な学習計画を立てるには、自分の現状を把握することが欠かせません。先生のいる予備校やスクールと違って独学では忘れがちなのがこの部分。現状把握のために、早い段階で模擬試験を受けてみてください。

自分の現在位置と目指すゴールとのギャップを把握できれば、それを埋めるために何をやるべきかも見えてきます。200ページの問題集を3回解く必要があるなら、1カ月に50ページずつ、1週間に12.5ページずつやればいいという具体的な学習計画が立つわけです。

なお、暗記を必要とする学習は、「繰り返し学習」が基本。1冊の英単語帳を教材にするなら、一度で完璧に覚えようとするのではなく、2度、3度と繰り返しインプットすることを前提に学習計画を立てましょう。

「合格体験記」は良質な情報の宝庫!

もう一つ、独学で迷いがちなのは、自分の勉強法が正しいのかどうか確信が持てないという点。そこで私がお勧めするのは、合格体験記や先行事例を参考にすることです。同じ目標を目指し、現在の自分と同じような実力からスタートした人の体験談を研究すれば、「どんな学習計画を立て、どんな教材を使い、1日にどれくらい勉強したのか」といった具体的なノウハウがわかります。

私もハーバード大学院を受験した時は、個人ブログの合格体験記をかなり読み込みました。学習計画を立てるのに役立ったのはもちろん、成功した人の事例を読むことで自分が合格したときのイメージが湧き、「この人も一年前は今の自分と同じだったのだから、私もできるかもしれない」とモチベーションを高めることができました。

勉強を始める前の「ルーティン」を作ろう

時間も場所も自由に決められるのが独学のメリットですが、逆に言えばそれは「自分で勉強時間を確保する必要がある」ということ。人の目がないとサボりがちになってしまう……という人もいるかもしれません。

勉強を続ける秘訣は、「習慣化」です。つまり、学習する時間帯を決めて、毎日同じリズムで学習サイクルを回すこと。日によって時間帯がバラバラだと、なかなか習慣化できません。

私の場合、朝の時間を独学に充てています。夜は仕事で遅くなったり、子供の面倒を見たりと、毎日決まった時間に机に向かうのが難しいからです。そこで、毎朝5時から2時間を勉強や自己研鑽に使っています。  朝が弱い人もいるでしょうから、もちろん夜に勉強しても構いません。その場合も「この時間なら残業があった日も勉強できる」という時間帯を選び、「毎日22時から23時」などと時間を決めて、学習のパターンを作ることが大事です。

勉強を習慣化するには、集中力を引き出すルーティンを作るのも良い方法です。

「コーヒーを一杯飲む」「スマホの電源を切る」など、なんでも構いません。勉強に取りかかる時のルーティンを決めて、毎日同じ時間・同じ場所・同じ動作で集中に入るという一連の流れができると、それが習慣化されて勉強モードに入れます。

勉強が楽しくなる「息抜き学習」の勧め

それでも勉強を続けていれば、飽きてきたり、疲れたりしてモチベーションが下がる時期もあります。そんな時は、学習方法や教材を自分が好きなものに寄せてみましょう。

英語の勉強なら、お気に入りの映画やドラマを英語字幕で見たり、海外ミュージシャンの楽曲をヒアリング教材の代わりにしたりと、自分が楽しめるものを上手に息抜きとして使うのが長丁場を乗り切るコツです。

個人的には、マンガで勉強するのもお勧めです。最近はビジネス書や資格試験の内容をマンガ化した書籍がたくさんあり、楽しく学べます。とくに苦手分野は、いきなり難しい教材に手をつけても挫折することが多いもの。マンガから入って専門書や問題集に進めば、内容を理解しやすくなります。好きなように教材を選んで勉強できるのも独学の強み。楽しみながら続けましょう。

ブログで学習日記をつけるという手も

また、インプットだけでなくアウトプットの機会を作ることも重要です。

初期段階で模擬試験を受けることを勧めましたが、勉強を続けるあいだも、できれば月に一度は模擬試験やミニテストなどを受けてアウトプットをしてください。目標達成度の推移を客観的に知ることにより、学習のPDCAを回すことができます。

ブログに書くという方法もあります。本や教材から得た学びを整理し、自分の考えを論理的にまとめて文章にする作業は、非常に良いトレーニングになります。自分が理解できているかどうかのレベルを知るにもちょうどいいですし、コメントをもらえば励みにもなるでしょう。また、書いた記事はストックとして蓄積され、検索すればあとで参照することもできます。毎日書くことを習慣化すれば、アウトプットの機会をどんどん増やすことができます。

本山氏流・「独学」を成功させる4つのポイント

1 「超具体的」な目標を立てる

独学成功のカギを握るのが、目標設定だ。「英語を話せるようになりたい」などの漠然とした願望や主体性のない動機でスタートすると、「自分は何を実現したいのか」が明確ではないため、結局勉強が続かずに終わってしまう。「3年以内に法務の仕事がしたいので、ビジネスコンプライアンス検定上級を半年以内に取得する」などの具体的な目標を立てよう。

そのうえで、まず自分の今の実力を把握すること。模擬試験を受けたり、テスト形式の公式問題集を本番と同じ時間で解くなどして、自分がどのレベルにいるのかを知れば、理想と現実のギャップがわかり、どんな勉強をやるべきかが見えてくる。

2 合格体験記を読みまくる

独学で失敗しやすいのは、色々な教材にあれこれ手を出したり、適切な勉強のペースや時間配分を見誤ってしまうこと。教えてくれる人がいないので、自ら情報を得ないと、勉強法を間違えたまま進んでしまうことに。

独学者が自分に合った有効な戦略を立てるには、体験者の生の情報から学ぶのが一番。どんな目標でも、インターネットで検索すれば、必ず合格体験記や成功事例がヒットする。それらを読み込むことで、教材選びやスケジューリング、モチベーションの高め方まで様々なノウハウが手に入り、自分にとってベストな戦略を立てることができる。

3 自分にとっての「勉強のゴールデンタイム」を見つける

ビジネスマンの独学が挫折しがちなのは、「今日は残業だったから」「仕事で疲れたから」といった言い訳をしやすいから。それでも探してみれば、「これなら毎日続けられる」という時間帯があるはず。それを見つけ、決まった学習パターンを作って習慣化することが重要だ。

「朝食前の朝6時から7時まで机に向かう」「通勤の1時間は英語のリスニングをする」など、「この時間はこれをやる」という習慣ができてしまえば、当たり前のように勉強を続けられる。「勉強+朝食」「英語学習+通勤」など、毎日の生活に勉強をうまく組み込めば、より習慣化しやすいはずだ。

4 定期的にブログでアウトプットする

勉強というと「インプット」に目が向きがちだが、実は「アウトプット」も同じくらい重要。アウトプットすることで、自分の理解度や勉強が足りない部分、苦手な分野などを検証できて、学習のPDCAを回すことができる。

アウトプットの方法には、本番に近いテスト形式で問題を解く、模擬試験を受験する、論述を書くといった方法がある。中でも、ブログは最も手軽なアウトプットのツール。その日学んだことを文章にする習慣をつければ、「アウトプット→インプット→アウトプット」の効果的な学習サイクルを毎日回しながら、学びをしっかりと自分のものにできる。

本山勝寛(もとやま・かつひろ)
日本財団パラリンピックサポートセンター推進戦略部・広報部ディレクター
1981年生まれ。大分県出身。東京大学工学部システム創成学科卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士課程修了。小学校から高校まで地方の公立校に通い、独学だけで東京大学とハーバード大学院に合格。現在は、パラリンピック支援事業や障害者支援事業を手がけるかたわら、個人として教育論や独学法をブログで発信。著書に『最強の独学術』(大和書房)など。(『The 21 online』2018年2月号より)

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