小学生の英語学習、3つのポイント
首都圏では6人に1人が中学受験をすると言われているが、近年、その中学入試の教科に英語を導入する私立中学校が急増している。この理由や背景について、また中学受験にむけた英語学習の「3つのポイント」について、英語塾キャタル代表の三石郷史氏に教えてもらった。
この5年で急増した英語での中学入試
具体的な数字を挙げると、中学入試に英語を導入した首都圏の私立中学校は、2014年はわずか13校でしたが、15年に31校、16年に62校と倍増を続け、17年には93校、そして18年には109校と、5年間で約8倍になっています。これは首都圏の私立中学の約3割を占めるボリュームです。
他に、入試の教科としては英語を入れなくても、英検を持っている人は級により加点します、という品川女子学院などのような学校もありますから、中学受験で英語を重視する動きは今後もまだ増え続けるでしょう。
学校は英語ができる生徒を先取りしたい
この背景にあるのは、少子化です。ほとんどの私立の学校は生徒集めに困っています。しかもこの傾向は、誰でも名前を知っているようなブランド力のある学校でも同様です。
一方で、しっかりと時間をかけて改革ができた学校もあります。これらの成功した学校に共通しているのは「国際化」と「共学化」です。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校はその良い例で、30年ほど前までは女子校で、偏差値は高くありませんでした。渋谷教育学園になって共学化し、国際化を進めました。今では姉妹校の渋谷教育学園幕張中学高等学校とともに進学校としてのイメージを確立し、17年の入試では両校合わせ100名以上が東大に合格しています。
このように「英語に強い生徒は受験に強い」という成功例があるので、各学校は「グローバルな人材を育成する英語重視の教育をしています」という実績を作り、英語ができる人たちを早くに囲い込みたい、という共通の思惑があります。また、英語力で合格を掴み取れるような生徒を輩出することにより上位大学への進学率が上がれば、さらに評価が上がって生徒を集めやすくなります。だから、多くの私立の学校は、英語ができる人材を早くから求めているのです。
「上位校」も動き出している
これに加えて、2019年からの新しい動きとしては、上位校にもこの流れが波及したことです。
今までは中位校以下の学校がこの流れを先導していました。しかし、2019年以降は上位校も加わってさらに激化が予想されます。たとえば、慶應義塾湘南藤沢中等部が19年から入学試験に英語の導入を発表しています。一部サンプル問題も出ていて、TOEFLや英検準1級レベルの難易度が予想されます。
中学受験に必要な英語力の目安は英検3級程度
前述した湘南藤沢のような上位校の問題は難易度が非常に高いですが、多くの中学入試の英語力については、英検3級程度だと思われます。
小学校では3年生から外国語活動として導入され、5、6年生の英語が教科化されます。現在の小学校の英語の時間だけの勉強では、英検3級程度の英語力をつけるのは難しいと思われています。
しかし、4年間の英語学習により、初めて英語を学びはじめた児童が、英検3級程度の英語力を身につけることは可能です。各小学校は、社会の基準に合わせてそれに叶う英語力を身につける授業を行うべきです。それができなければ、家や、塾などで学校プラスアルファのトレーニングができる人だけが、英語受験ができることになってしまいます。
いつから始めるべき? 早ければ早いほうがいい?
実際には、小学校3年生からの4年間の勝負で充分間に合います。
長期的な視野で、高校卒業時にアメリカの大学に行ける英語力(つまりTOEFL80-100点)を身につけるのなら、小学校卒業時に英検3級の英語力があれば、次の6年間で充分その英語力に到達できます。
先程お伝えした通り、小学校卒業時に英検3級を目指すのであれば、小学3年から始めれば充分間に合います。8歳9歳という、脳の発達段階で英語を学ぶメリットも大きいでしょう。
また、現在の小学生たちは、幼少時代に英語に触れる機会が前の世代よりも多くあります。これらの幼児教育の効果は少なくないはずです。それらを考慮しなかったとしても、小学3年生から以下のポイントを理解して学習を進めれば、充分に4年間で英検3級レベルに到達できます。
小学生の英語学習の3つのポイントは?
1そのポイントとは、以下になります。
1.フォニックスが身についている
2.自分で本が読めるようになる
3.文章を書く練習を始める
フォニックスとは、英語の文字と発音のルールを覚えること。これができると、今後、本を読んだり、つづりを覚えたりするのに有効なツールとなります。
自分で本を読めるようになれば、今までの英語学習で難しかったたくさんの英語に触れることが自発的にできるようになります。
そして、文章を書く練習を始めることによって、英語をどのように使っていくのか、ということを想定しながら、これからの学習を進めることができます。
中学受験で英語力を問うことは性急すぎるという意見はたしかにあります。しかし、テストなどで問われなければ、真剣にそれに取り組まないという国民性もあるように思われます。中学受験で英語力を問うことは日本の国際化にとって、ポジティブな影響を与えることはあっても、ネガティブな影響を与えることはないはずです。
三石郷史(みついし・さとし)株式会社キャタル代表取締役社長
慶應義塾大学卒業後、メリルリンチ証券に入社。英語に苦労した経験から、「次世代に同じ思いをさせないで学べる場所を作ろう」と「小中高生をバイリンガルにする英語塾キャタル」を創立。海外経験なしの小学校5年生が英検1級に合格、慶應義塾ニューヨーク学院など、400人以上の留学を後押し、IVY LEAGUEの進学者輩出、といった実績が評判を呼んでいる。
現在、教育に携わるゲストを招く教育ラジオ番組『In the Dreaming Class』のパーソナリティを務める。(『The 21 online』2018年03月22日 公開)
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