2018年4月、幕張メッセで開催された「超会議2018」で伝統芸能と最新テクノロジーを融合させた「超歌舞伎」が上演されました。ARなどの最新技術を駆使して中村獅童さんがバーチャル・シンガーの初音ミクがひとつの舞台で共演を果たすということもあり、ネットで視聴していたユーザーは20万人もいたそうです。

一見すると、伝統芸能と最新テクノロジーは真逆に位置する関係のように思われますが、今後はそうした考え自体が古いものとなっていくかもしれません。

伝統芸能の「能」と最新テクノロジーが融合

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先ほど紹介した「超歌舞伎」以外にも、テクノロジーと伝統芸能が融合させるといった試みは様々なところで行われています。

2017年8月に、伝統芸能の「能」と立体映像を融合したスペクタクル3D能「平家物語」が上演されました。観客は能面の形をした特殊な眼鏡をかけて舞台を視聴。背景となる京都の街並みや荒々しい海といった風景と、演者の動きと同期した立体映像が楽しめるようになっていました。

日本人から見ても、少しわかりにくく感じる「能」の世界ですが、今回の試みはハイテクの力を利用して初心者にもわかりやすく「能」の魅力を伝えるところにあったそうです。

また、電通は2016年8月に「伝統芸能×テクノロジー」をテーマにしたプロジェクト「テク能プロジェクト」を起ち上げています。こちらは、日本が世界に誇る文化である「能」を、現代社会で活用していくことを目標にしたものです。

能に最先端のテクノロジーを組み合わせることで、伝統芸能の価値そのものは変えずに新しいものを生み出していきたいという想いから企画がスタート。

伝統芸能のクリエイティビティとデジタルアート、それに日本のものづくりという、普段はあまり関わりのない日本を代表するクリエイティビティを融合させることで、新しい伝統の美しさを伝えていこうとしています。

同じく伝統芸能のひとつに「落語」がありますが、こちらもハイテクの活用が進んできています。今年の4月より、スマホ向け短尺縦型エンタメ動画サービス「30(サーティー)」で、落語家・立川吉笑の落語動画「立川吉笑30落語」が配信開始されました。

持ち時間わずか30秒という制限の中で、どのように落語を表現できるのかという、新しい試みが行われています。

伝統工芸とハイテクで新たな芸術が生まれる

たしかに伝統芸能には、演者以外にもそれを演出する「舞台」があるため、意外なことにハイテクとの融合性は高そうです。しかしそれだけではありません。伝統工芸の世界でも、ハイテクとのコラボレーションを目にする機会が多くなってきました。

3Dプリンターのデータから、プロダクトの製造と販売までを行っているrinkakが、天然漆の工芸技術を受け継いだ若手職人と手を組み、「漆」×「3Dプリント」のデザインシリーズ「urushi」を発表しました。

漆の持つ独特の魅力と、従来までの技法では考えられなかった3Dプリンターによる新たな造形で、新しい芸術作品が生み出されています。

また、葛飾区伝統産業職人会が運営する伝統工芸品の初回と販売するサイト「江戸の暮らしが息づく技と美」を、VRで閲覧しそのまま購入できるといったサービスも公開されています。

こちらはサイトのブラウジングをVR化したというイメージですが、バーチャル世界ならではの3D空間でリアルに体験出来るサービスがもっと充実していけば、より身近に伝統工芸に触れあえる機会も増えていきそうです。

時代に合わせた伝統芸術の表現が新たなファンを獲得する

冒頭にご紹介した歌舞伎では、1986年より従来までの古典芸能とは異なる現代風の歌舞伎を演出する試みとして、「スーパー歌舞伎」が上演されてきました。保守的な人からは批判もされたようですが、その一方で普段は歌舞伎に興味を持たなかった層にも話題を広めることに成功しています。

たしかに、歴史的な財産でもある古典芸能などの伝統や文化を引き継いでいくことは大切なことですが、それを現代の人々に伝えたいという想いから、こうした新しい表現への取り組みに繋がっているのだといえます。

IoTやxR(VR/AR/MR)などテクノロジーや表現方法は、日々新たな進化をし続けています。現代では少し古く感じてしまう部分をハイテクでリプレイスすることで、これまでになかったようなものが生まれてくることもあります。

そして、殻を打ち破るような前向きな試みが、従来までとは異なる新たなファンの獲得に繋がっていくのです。(提供:J.Score Style


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