失敗をもたらす大きな誤解

市場,船ヶ山哲
(画像=The 21 online)

今回の連載で船ヶ山氏が説くのは「市場」というものに対する誤解だ。多くの人は「より多くの市場に打って出たほうが儲かるはず」と考える。だが、それこそがビジネス失敗への道だという。それはいったいどういうことなのか。

市場の数だけお客の願望は異なる

多くの人がビジネスを無残にも失敗させてしまうのは、商品を作ってから「買ってくれる人はどこにいるのか」を探すからです。

成功者は決してこのような考え方を持っていません。まず、戦う市場を一つ定め、その内側に向けてメッセージを打ち出します。「商品は一つでも市場はたくさんあり、どの市場で戦うかで勝敗は決まる」からです。

詳しく説明しましょう。たとえば、街にある店舗とテレビ通販では同じ商品を扱っていても、価格も異なれば、お客も違います。また、インターネット上に数多くあるショッピングサイトも、それぞれ価格も異なれば、お客も違います。

なぜ、このようなことが起きるのかといえば、その市場における「お客の願望」がそれぞれ違うからです。

その証拠に、街の店舗に望むお客の願望は「比べたい」「触りたい」「持ち帰りたい」なのに対し、テレビ通販に抱くお客の願望は「わからないので専門家に選んでほしい」「電話1本で注文できる」「運ぶ手間がない」など。

つまり、まったく同じ商品を扱っていても、市場ごとに「お客は違う願望を持っている」。当然、それぞれの市場に提供すべき価値も、響くメッセージも違うということです。

それがわからない人は、売れないことを価格のせいにして安売りに走りますが、失礼ながらそれは「バカがやる」戦略です。さらに値下げをするバカが現われ、足を引っ張り合うだけです。価格には絶対に手を出してはいけないのです。

では、どうしたらビジネスを成功させ、勝ち組1%に入ることができるのか。それは、今回のテーマである「市場」の存在を知ることです。

「ライバルがいる市場」にこそチャンスあり!

そもそも市場とは何か。簡単に言えば「販売者とお客のたまり場」です。

ビジネスを失敗させる人は、自分の企画やアイデアを過信するあまり、市場のことを考えずに突っ走る傾向があります。そして、ライバルが存在しないほど、「斬新な商品だ」と考え、勝てると思い込んでしまうのです。

実際は逆で、その企画やアイデアがビジネスになるかの判断は「ライバルがいるかどうかを知る」のが第一ステップです。ライバルがいるということは、そこに市場があるからです。

「ゼロから市場を生み出す」ことは、大企業であってもほぼ不可能です。

一つ、例を上げましょう。30年ほど前、ある大企業が「テレビ電話」を発表しました。億単位の広告宣伝費をかけ、街の至るところで大型キャンペーンを仕掛け、大々的に周知活動を行ないました。

が、しかし、その商品は1年持たず街から姿を消しました。

それはなぜか。答えは簡単で、この時期には「テレビ電話」という市場自体がまだ存在していなかったからです。

それから時を経て30年……。今ではテレビ電話は日常に溶け込み、お客だけでなくライバルも存在しています。だからこそ、ビジネスも成り立つ。これが、「市場の威力」です。

だから、あなたがまずすべきことは、「そこに市場があるかどうか」の確認と、どの市場で戦うかを決めることです。

「複数の市場に打って出たほうが儲かるのでは」と思うかもしれませんが、大切なのは「認知」です。あらゆる市場で認知を得ようとしたら、いくら広告宣伝費があっても足りません。

自分の身の丈で勝てる市場を一つ選定し、その市場に対し、認知と信頼を広げる活動を行なう。これが、継続的に勝ち続けている企業の条件なのです。 

さらに言えば、まずは「ライバル」に対して存在を示してください。ライバルに存在を認められない人が、お客に見つけてもらうことは不可能だからです。

船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)レムズリラ代表
1976年、神奈川県生まれ。心理を活用したマーケティングを得意とし、人脈なし、コネなし、実績なしの状態から、起業後わずか5年で1,000社以上のクライアントを獲得。その卓越したマーケティング手法は、数々の雑誌やメディアに取り上げられ、現在ではテレビ番組(テレビ神奈川)のメインキャストを務めるほか、ラジオ番組(FM横浜)でもメインパーソナリティーとして活躍中の起業家。また、プライベートでは子供の教育を最優先に考え、マレーシアのジョホールバルに在住。(『The 21 online』2018年04月08日 公開)

【関連記事 The 21 onlineより】
多くの人が陥る「起業に関する誤解」とは?
誰もが陥る「商品のワナ」とは何か?
ストレス対策は「心」よりも「身体」から
人間関係に悩まないための「魔法の言葉」とは?
疲れを溜めない「ストレスコントロール」の極意