航空機や船舶を対象とするオペレーティング・リースは、決算や節税対策でも注目が集まるスキームのひとつです。オペレーティング・リースでは、大型物件への投資を1件あたりの金額が少額になるよう小口化する必要があるため、匿名組合契約などの仕組みを活用します。
今回は、こうしたオペレーティング・リースで活用される匿名組合という契約形態がどのような性格の仕組みなのか、税法上の留意点にも触れながら解説したいと思います。
そもそもオペレーティング・リースとは?
オペレーティング・リースは、投資家からの出資金と金融機関からの借入金をもとにして、航空機、船舶、コンテナなどの大型資産を購入し、運用により生じた利益を投資家に分配する商品を指します。
もともと、オペレーティング・リースという言葉は、一定の条件を満たすリース取引をファイナンス・リースとし、それ以外をオペレーティング・リースとするというリース取引の分類に使用される用語です。
こうした専門用語としてのオペレーティング・リースと区別するため、決算対策などに活用されるオペレーティング・リース商品を特に日本型オペレーティング・リース(JOL)などと呼称することもあります。
匿名組合契約の仕組みとは
オペレーティング・リースでは、商法上の匿名組合や民法上の任意組合といった仕組みを活用して商品化されるのが一般的です。このうち匿名組合とは、事業に対してお金を出す投資者は裏方となり、対外的な運営は事業者が行うという契約です。
商法535条では、匿名組合契約を「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」ものとしており、出資する人のことを「匿名組合員」、事業を運営する人を「営業者」と呼んでいます。
こうした匿名組合という形態は、中世ヨーロッパの航海事業で有限責任の出資を募ったコンメンダ(commenda)契約にその端緒を見ることができます。
オペレーティング・リースでの匿名組合契約の活用方法
それでは、オペレーティング・リースでは匿名組合をどのように活用しているのでしょうか。通常、オペレーティング・リース商品においては、投資家が「匿名組合員」として出資を行い、リース商品を組成する会社(あるいはその子会社)が「営業者」として事業を行います。
例えば、リース商品の対象が航空機である場合、匿名組合員からの出資に加え、金融機関からの融資を活用して航空機を購入します。その航空機をエンドユーザーである航空会社などにリースすることにより収益を生み、組合事業の損益を投資家に分配するという仕組みになっています。
借入金を利用することで出資額と比べて大規模な資産を購入することができますので、事業開始当初には多額の減価償却が計上され、匿名組合員に分配される損失も多額になります。これが決算上の利益を抑える効果を持つというわけです。
匿名組合契約を活用したオペレーティング・リースの税法処理
商法上の匿名組合を活用したオペレーティング・リースでは、事業で発生した損益が第一段階としては匿名組合の営業者に帰属するのが原則です。民法上の任意組合であれば、組合自体はスルーして個々の組合員に課税がなされる「パス・スルー課税」という方法が適用されるのですが、匿名組合では損益はいったん営業者に帰属します。
ただし、匿名組合契約に基づいて分配される利益または損失の額は、投資者である法人の益金または損金として処理することになっています(法人税基本通達14-1-3)。つまり、リース期間の前半で損失が生じた場合には、これを匿名組合員である法人で税務上の損金とすることができます。
なお、法人の益金または損金に算入する時期は、匿名組合事業の計算期間を基準とします。例えば、匿名組合事業の計算期間の末日が法人の決算日より前に到来する場合には、その計算期間の末日の属する決算期の損益として処理されることになります。
匿名組合契約の注意点
組合から分配された損失の累計額が投資額を上回る場合には、法人の損金にすることができない点には注意が必要です。実は、ひと昔前には、投資額を上回る損金を計上することのできるレバレッジド・リースという商品が流行したことがありました。まさに、多額の借入金でレバレッジを効かせて、過度に税負担を軽減するものです。
こうした過度の節税を防止するため、「平成17年度税制改正」において、匿名組合員における損金計上額は投資額を上限とする措置が設けられました(租税特別措置法67条の12)。
そのため、オペレーティング・リースを活用する際には、こうした動向にも注意しつつ、専門家のアドバイスのもと活用するのが適切といえます。
匿名組合契約のスキームを理解すれば節税対策も可能か
このように、オペレーティング・リースには匿名組合契約を活用していることが分かりました。匿名組合契約を活用した節税スキームはいくつか種類があります。そのため、このスキームの内容や税法上の処理方法について理解をしておくと会社の節税対策を検討する時に候補のひとつになりやすいといえます。しかし、独断で判断することなしに必ず金融機関をはじめとする専門家のアドバイスを聞きながら、いくら契約し損金計上すればよいのかをよく検討し、会社のためにどうすればよいのか方向性を決めましょう。(提供:企業オーナーonline)
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