初対面からクロージングまで、人間心理を徹底分析!

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(画像=The 21 online)

お客様とのコミュニケーションが重要となる営業活動やセールスの中で、商品を買ってもらうために効果的な心理テクニックを知っておくと、成果が期待できる。初対面でお客様に近づく心理テクや、最後のひと押しをするクロージングの心理テクなど、厳選した6つの方法を営業コンサルタントの菊原智明氏にうかがった。

顧客が求めているのは「信頼できる」営業マン

お客様が求めているのは、「信頼できる人」。自分をそのように表現できる営業マンが、売れる営業マンと言えます。

私がダメ営業マンだった頃は、その逆ばかりしていました。たとえば、あえて安い見積もりを提示し、契約後にオプション契約を重ねて予算をオーバーし、お客様をだますようなかたちになったり……。なぜそのような行動を取ったのかというと、自分のノルマ達成のためです。その結果、お客様からは警戒され、クレームも発生し、信頼を得るどころではありませんでした。

その頃の反省から、営業アプローチを大きく見直しました。営業マンにとっては不利に思える情報も、お客様に有益と思えば正直に伝えるなどして、「信頼できる営業マン」を目指したのです。するとクレームは激減、お客様による新規紹介も増えて、成績がグンと伸びました。

ここで紹介するのは、買ってもらうための心理テクニックであると同時に、「信頼できる営業マン」と思ってもらうための心理テクニックでもあります。ぜひ活用してみてください。

「初対面」で役立つ心理テクニック

初対面1

実際よりも「すごい人」と思わせて第一印象をグッとアップする

「営業マンの存在など眼中にない」という素振りでこちらの話にまったく興味を示さないお客様。そのような相手に、「この人はすごいかもしれない、話を聞いてみよう」と思わせるには、営業マンのあなたにプラスαの情報を付加して自己紹介するのが効果的です。私自身、初対面の男性に職業を聞かれて、「営業のコンサルタントと、地元の大学で講師をしています」と答えたら、「大学の先生なんですか!」と驚かれ、尊敬のまなざしで見られた経験があります。大学講師というイメージが、私を実際以上に良く見せてくれたのです。

このように、相手に対して何か一つ良い印象を持つと、全体的に実際よりも高く評価することを「ハロー効果」と言います。もしあなたが何かの資格や珍しい特技を持っているなら、営業トークに交えてみてください。資格でなくても、「最近〇〇を勉強していましてね」と言うだけでもOK。人は、自分ができないことができる人を優秀だと思ってしまうものです。魅力的なひと言を加えるだけで、あなたの評価がグッと上がり、相手はあなたに好印象を持つでしょう。

初対面2

積極的に「自己開示」すれば相手は興味を持ってくれる

商品の説明をするだけでは、お客様が警戒して、なかなか心を開いてもらえない──。そのような場合でも、自分の趣味や家族など個人的な話をすると、偶然にも家が近所だとか、趣味が同じだとかで話が盛り上がることがあります。あるいは、自分の失敗談などちょっと恥ずかしい話を披露したら、かえって相手に親近感を持たれたり、「実は私もそうなんです」と相手も踏み込んだ話をしてくれたりして、一気に関係が深まることもあります。自分に関する個人的な情報を相手に伝えることを「自己開示」と言いますが、自分から自己開示することで、相手との距離を近づけることができます。

また、自己開示された相手も、「そこまで話してくれたのだから、自分も話そう」という気持ちになって、同じ程度の自己開示をするという「返報性のルール」が知られています。ただし、自己開示は自分の会社や上司の話ではなく、自分自身の話にするのがいいでしょう。ましてや、会社や他人の愚痴は聞くほうもいい気持ちがしません。相手と共有できる話を自己開示しながら、お客様との距離を一気に縮めましょう。

「アプローチ」&「商談」で役立つ心理テクニック

アプローチ

「接触頻度」を増やしていけばお客様のほうから近づいてくる!?

訪問しても、電話をしても、まともに取り合ってくれない気難しいお客様。こうした相手に対しては、手紙で細く長くアプローチを継続するのが効果的。私自身の経験をお話しすると、ある“営業マン嫌い”のお客様に対して、情報提供と自己紹介を兼ねた手紙を半年間送り続けたことがありました。その後、仕事が忙しくなり2カ月ほど手紙を送るのを忘れていたら、お客様のほうから「最近、手紙が来なくなったけど、どうしたんだ?」と電話がかかってきたのです。人は知らない相手に対しては攻撃的、冷淡な態度をとりますが、接触頻度が高くなるほど相手に好意を持つようになります。これを「ザイアンスの法則」と言います。このお客様の場合も、私が何度も手紙を送っているうちに、親近感を抱いてくれていたのだと思います。

このお客様はその後、契約となりました。ザイアンスの法則が有効なのは、気難しいお客様に限りません。今すぐには契約せずに長期で検討されるお客様に対しても、アプローチを継続して接触頻度を増やしていけば、お客様のほうから近づいてきてくれるでしょう。

商談

商談を実りある内容に導くには前もって「枠」を示すこと

お客様との商談の場で、話が脱線して進まないことがあります。私自身、ダメ営業マンだった頃は、4時間以上も商談に費やしていたことがありました。話があっちこっちにそれ、長い時間をかけても何も進みません。お客様にとっても営業マンにとっても時間の無駄です。商談を脱線させないためには、商談前に大まかなスケジュールをお客様に伝えておくことがお勧め。たとえば、「今日は最初の10分で商品の概要をご説明して、次の20分で他社の導入事例をご紹介して……」という具合です。このように、前もって枠を示すことを「プリフレーム」と言います。

あらかじめスケジュールが共有されていれば、無駄な時間の使い方を減らすことができます。私の場合、プリフレームを意識するようになってからは、「4回目の商談で決めてください」と契約までの商談回数も事前に伝えていました。商談の前に「今日の商談の目的は何か」を自問し、目的を明らかにしたうえで、お客様にスケジュールを伝えてから商談を始めましょう。そうすれば中身の濃い商談ができるはずです。

「クロージング」で役立つ心理テクニック

クロージング1

迷いや不安を感じていたら「皆と同じ」だと安心させる

お客様はいざ契約を前にすると、「これで本当に大丈夫だろうか」と迷いや不安を感じるものです。ここでしっかりフォローしないと、不安になったお客様が他社にも見積もりを依頼したりして、競合を招き入れる結果になりかねません。実際、私もそういう失敗をしました。お客様の迷いや不安を取り除き、背中を押して契約に結びつけるには、「他のお客様が満足している例」を提示するのが効果的です。「〇〇さんにお願いして本当に良かったです」「アフターフォローがしっかりしていて安心です」など、生の声を紹介することで、「他の人もこれだけ満足しているのだから安心だろう」と思ってもらえる確率が高くなります。

他の人も自分と同じ考えを持ち、同じ行動をするだろうと思うことを「フォールス・コンセンサス効果」と言います。自分の行動が皆と同じであれば、その行動はうまくいくと考え、安心感を得られるということです。契約前に心が揺れ動くお客様に対しては、「他の人も満足しているのなら安心」と思ってもらえる資料を提示して、契約までしっかりと導きましょう。

クロージング2

「残りあと○個ですよ」希少性を示して価値を高める

決断を迷っているお客様の背中を押すもう一つの有効な方法は、「残り少ないですよ」「あと〇個ですよ」と数量限定であることをほのめかす手法です。「残りあと少し」と聞けば、「ここで決めないと損だ」という気持ちになり、必要がないものでも欲しくなってしまうものです。このような心理の裏にあるのは、「希少性の原理」です。希少性の原理とは、入手が困難なものほど価値があるように思ってしまうことで、商品の数が減るほど希少性は高くなります。

この原理は、購入前のクロージングだけでなく、資料請求や見学会、体験会などに申し込んでもらう際にも効果を発揮します。たとえば「お役に立つ資料が残り12部になりました。ご請求はお早めに」とか、「見学会は残り3枠です。最後のチャンスをお見逃しなく」のように限定感を出すことで、資料や見学会の価値が高まり、申し込みが増えることがあります。クロージングの際には、ただ単に「決めてください」と言うよりも、残り少なくなったことを伝えてみてください。希少性の原理によってお客様の買いたい気持ちが高まります。

菊原智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント/営業サポート・コンサルティング㈱代表取締役
1972年、群馬県生まれ。大学卒業後、トヨタホームに入社。クビ寸前のダメ営業マン時代を経て、顧客へのアプローチ方法を変えたことをきっかけに4年連続トップの営業マンに。2006年に独立し、現在は、企業研修や経営者や営業マン向けのセミナーなどを行なう。著書に、『<完全版>トップ営業マンが使っている買わせる営業心理術』(明日香出版社)など。≪取材・構成:前田はるみ≫(『The 21 online』2018年4月号より)

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