昨日の海外時間には、トランプ米大統領が「マーケット終了後に対中貿易関税についてアナウンスする」との考えを示したと伝わると、追加関税が正式に表明され中国との摩擦がさらに激しくなるとの懸念が強まったこともあり、ドル売りが強まり、ドル円は112円付近から111.70円台まで下落しました。本日の東京時間に、米政権が2,000億ドル相当の対中追加関税を24日に発動すると発表したとの報道でドル円は一時111.60円台まで下落する場面が見られたものの、影響は一時的となりその後は買い戻し優勢の展開になっています。
今後の見通し
米政権より正式に対中追加関税が発表されましたが、思いのほか影響は限定的であり既に市場はこの状況を織り込んでいたものと考えられます。最も影響を与えるのではないかと懸念されていた株式市場の反応が、一時的には株安に振れたもののすぐさま反発する動きとなっており、米政府の対中制裁関税第3弾に対する影響は微減であったと考えられます。また、これまで中国は米政権が新たな制裁措置を決定するなら、米国との貿易協議を拒否することを検討すると表明していたものの、特段声明などが出てきていないことも好材料として見られているのかもしれません。
もう一つの懸念材料であった欧州経済ですが、トリア伊経済・財務相が来年の財政赤字について「対GDP比率が1.6%を超えないようにする姿勢を示した」と伝わり、同国国債が大幅に上昇したことにより、伊予算への懸念が後退したことでユーロ買いが強まりました。一時は1.1610ドル台まで下落していたものの、その後はじりじりと上値を拡大し、1.16ドル後半まで反発しています。
本日から明日にかけて日銀金融政策決定会合が開かれるものの、事前のコンセンサスでは、今回の会合では大きな動きがないとみられており、そういった意味でも今回の対中追加関税の影響が微減であるとマーケット判断するのであれば、一旦はドル円は上昇するのではないでしょうか。
111.80円のドル円買いポジションは継続
テクニカルでなくファンダメンタル要因でドル円は押し目を付けましたが、111.80円でのドル買いポジションは成立しました。引き続き、損切りは111.50円割れ、利食いについては、113円手前の112.90円付近を想定します。
海外時間からの流れ
前日の欧州時間では、トリア伊経済・財務相の報道をきっかけにユーロ買いが主導し、1.16ドル前半から後半まで上昇しました。また、先週から引き続きブレグジット交渉進展への期待感からポンドも堅調に推移し、ポンドドルでは1.3070ドル付近から1.3160ドル付近まで上昇しています。
NY時間では、WSJ紙が「中国は米国からの通商交渉の提案拒否を検討」と報じたのを皮切りに、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が「中国が真剣に実現性のある話し合いの準備が出来れば、米国は会談に応じる」とコメントし、CNBCも「トランプ政権は17日にも対中関税を発表の公算」など対中制裁関税案を巡る報道が相次いだことで、円の買戻しと豪ドルの売りが強まりました。ただ、上述したように影響は限定的となりドル円はじりじりと買い戻されています。
今日の予定
今日の海外時間には、主要な経済指標は予定されておりません。引き続き、通商協議関連のヘッドラインに一喜一憂のマーケットになりそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp