もらってうれしい株主優待。最近では自社商品だけでなく金券類を優待品としている会社も増えています。でも、その優待品、課税の対象になるって知っていましたか?

株主優待を税金の面から考えると…

税金,株主優待
(画像提供=トウシル)

個人投資家にとって、株主優待は株式投資の楽しみの1つ。筆者は株主優待にはあまり興味はありませんが、株主優待の有無やその内容により、投資する銘柄を決めている、という方は非常に多いです。(株主優待と値上がり益と配当、欲張り投資に注意!正しい付き合い方とは?>>)

ところで、株式投資では売却益や配当金に対して所得税や住民税といった税金がかかることは皆さんもご存知かと思います。では、株主優待には税金はかからないのでしょうか?

いえいえ、実は株主優待も課税の対象です。株主優待により株主が受け取る金品は、「経済的利益」として所得税や住民税がかかるのです。

株主優待は譲渡所得?配当所得?それとも?

所得税は、所得を9種類に分類して、それぞれの所得ごとに課税ルールを定めています。なじみの深い所得としては、給与所得や不動産所得、事業所得といったところでしょうか。

株式投資の場合、売却益(=譲渡益)は一般に譲渡所得とされ、利益に対して20.315%の所得税・住民税が課税されます。

受け取った配当金については配当所得とされ、受け取り時に20.315%の税率で源泉徴収(天引き)がされます。それで課税を完了させることができますし、所得が少ない人は確定申告すれば税金が還付されることもあります。

では、株主優待はどの所得に区分されるのでしょうか? 譲渡所得でしょうか、配当所得でしょうか。

正解は、「雑所得」です。雑所得は、他の所得のどれにも属さない、いわば「その他の所得」です。ビットコインなど仮想通貨を売却して得た利益も雑所得に分類されていますね。

雑所得の課税はどうなっているの?

雑所得は、総合課税により課税されます。総合課税とは、給与所得、不動産所得、事業所得などの複数の所得を合算し、所得の額に応じて税率が決定するという仕組みです。

所得の額が大きいほど税率も高くなり、住民税を含めた最高税率は50%を超えます。

ただし、会社員で年末調整をした方については、年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告をしなくてよいことになっています。

会社員の方は他に所得がないことが多いですし、株主優待の価値が20万円を超えるようなこともそうそうないと思います。ですから、事実上株主優待には課税されていない、というのが現実です。

株主優待に関する課税の実態は?

とはいえ、給与所得以外の所得が20万円以下の会社員なら確定申告が不要、というのはあくまでも所得税の話です。

住民税についてはこのような特例はありませんので、株主優待についても課税対象となります。

また、「年末調整をしていて給与所得以外の所得が20万円以内の会社員」という要件に当てはまらない人は、原則どおり株主優待品は雑所得として課税されます。

でも実態は、野放し状態となっているのが現状です。株主優待は保有株数が多いほど数量が増えたり内容がグレードアップするものの、大株主だからたくさんもらえる、というほど明確に株数に比例しているわけではありません。ですから、個人投資家1人当たりの所得でみれば、それほど大きい金額とはならないでしょう。

また、誰が株主優待でどのくらいの経済的利益を受けたかを、税務当局が正確に把握することはかなり困難です。こうしたことから、株主優待に対しての課税は事実上できていないのが実態です。

ただ、課税のルールからすれば、株主優待も所得税や住民税の課税対象となると考えられます。

足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。

(提供=トウシル

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