前日の海外時間には、英タイムズ紙が「メイ英首相はアイルランド国境問題に関する欧州連合(EU)側の修正案を拒否」と報じると、ポンドが急落しました。ポンド円が148円前半から147円前半、ポンドドルでも1.3200ドル付近から1.3100ドル付近まで急落し、堅調に物事が進むと思われていたブレグジット関連の報道に大きなマイナスイメージを植え付けた形になりました。また、その後もユンケル欧州委員長が「EUと英国はブレグジット合意から程遠い」と述べるとポンド売り売りが強まり、ポンドについては総じて上値の重い展開になりました。
今後の見通し
前日はポンド急落がマーケットの話題の中心になりましたが、本丸の米中通商協議においては、米国政府は2,000億ドル規模の中国製品に対し追加の輸入関税を課すと表明し、中国財務省は従来の計画通りおよそ600億ドルの米国製品に対し関税を課すことを明らかにしました。ただ、中国は当初予定に比べ税率区分を簡素化し、最高水準を引き下げた一方、米国は追加関税に関し年内は10%にとどめるとしており、来年1月から25%に引き上げる見通しとなりました。年内25%の関税を織り込んでいたマーケットは特段ドルを売る材料がなくなりつつあります。
また、、来週はFOMCが予定されています。FRBは追加利上げに踏み切ると考えられており、その後も漸進的な利上げ姿勢は変わらないとの思惑がドル買いをサポートするのであれば、引き続きドル円は上値追いの流れになるのではないでしょうか。
111.80円のドル円買いポジションは継続
ドル円に関しては、上値も下値も限定的になってきたことから動きづらい状況になりつつあります。111.80円のドル円の買いポジションについては、戦略を継続しますが、膠着状態が続くようであれば一旦手仕舞も検討します。ただ、112.40円付近のラインを上抜ければ、まだまだ上昇余地はあると考えています。
海外時間からの流れ
前日の東京時間については、日銀が予想通り金融政策の据え置きを発表し、黒田日銀総裁の記者会見も特に新しい情報はなく為替への影響は限定的となりました。欧州時間に入り、英・8月消費者物価指数が強い内容となりポンドが買われ、ポンドドルについては1.3210ドル台まで続伸し7月中旬以来の水準まで上昇しました。ただ、上述したようにメイ英首相はアイルランド国境問題に関する欧州連合(EU)側の修正案を拒否との報道がポンド急落を招き、ポンドの上値は非常に重い展開となりました。
本日も政治イベントが意識される可能性があります。前日より行われているオーストリアにおけるEU非公式首脳会議を終えた後、各国高官からの発言などが予定されており、ブレグジット関連の話題については市場が敏感に反応する可能性があります。また、米国とカナダ間のNAFTA交渉も注目されそうです。今週中に大きな進展が見られなければ、来週に協議がずれ込む可能性があると報じられており、ヘッドライン次第ではカナダドルの動きが活発化されそうです。
今日の予定
本日は、英・8月小売売上高指数、米・9月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・8月景気先行指数(前月比)、米・8月中古住宅販売件数、南ア中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。引き続き、ブレグジット関連のヘッドラインには注意が必要になりそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp