「案件管理票」が無意味なワケ
営業現場でよく使われる「案件管理表」。だが、これこそが売れない原因だと船ヶ山氏は指摘する。多くの人はそもそも「見込み客」の定義を間違えており、ここを変えれば売上は一気に上がるという。では、本当の「見込み客」はどこにいるのか?
あなたの見込み客は意外な場所にいる!?
ビジネスの世界では「見込み客」という言葉がよく使われます。しかし、この言葉を本当の意味で理解している人は、あまりいません。
それは、どこの会社でもよく見る、受注確度を示した案件管理表を見れば明白です。営業先にABCなどのランクをつけ、Aなら受注の見込みが高く、Bなら時間と信頼を重ねれば可能性あり、Cなら可能性は低いがゼロではない、といった表です。しかし、このようなやり方は、見込み客の概念を根底から間違えています。
見込み客とは、読んで字のごとくお客になる前の「見込みある人」のことであり、最後は、商品なりサービスを買う人のことです。
では、その「見込み客の概念」とは何か。それは、
● お金を払ってでもその問題を解決したい
● お金を払う心の準備ができている
という人です。しかし、先ほどのようなランク決めはこの概念がそもそも抜けており、非常に曖昧なのです。
とはいえ「そんな都合のいい人がどこにいるのか?」と思うかもしれません。それは、「ライバル」のところにいます。なぜなら、過去、ライバルにお金を払ったことがある人というのは、その分野なり業種に対し「お金を払う文化」がすでにあるということ。ここが非常に大切なポイントです。
ある問題に悩んでいても、それに対してお金を払うかどうかは別問題です。しかし、ライバルのお客は違います。その問題に対し、お金を払ってでも解決したいという文化と習慣を持っているということです。ということは、これこそ誰が疑うことなく「見込み客」だと言えるのです。
「お金を払う文化」がないお客に時間をかけるな
たまに「自分の商品は〝一生に一回の買い物〟なので、ライバルのお客に買わせることはできない」という人がいます。ただ、その狭い視野でいる限り、ビジネスはうまくいきません。お客は、商品を買っているのではなく、その先にある願望や悩みを解消する方法にお金を払っているのです。そう考えれば、十分に可能性が見えてきます。
典型が「住宅販売」です。住宅を買ったことがない人でも、家族を守るため「家賃」という形で住まいにお金を払っている人は多いはずです。支払先が「大家」か「銀行」かの違いだけで、『家族を守るため住まいにお金を払う』という文化は、すでに持っているということです。
このように自社の商品やサービスに固執せず、その先にある願望や結果を見据えれば、誰がライバルかが見えてきます。そして、そこにお金を払っている人こそ、見込み客になるのです。
では、どうすれば目の前の人が「見込み客」かを見極めることができるのかというと、直接、聞けばいいのです。
たとえば、コンサルティングサービスを販売したいという人であれば、「お話を聞く限り、今回は売上アップに関する悩みをお持ちのようですが、これまでに、どこかでコンサルなど受けられた経験はありますか?」
と聞き、相手が「はい」と答えれば見込み客であることが確定。一方、「いいえ」なら、暇なライバルに譲ればいい。なぜなら、2時間やそこらの営業トークでその人の文化を壊すのは並大抵のことではないからです。
これは商品が良い悪いということとは何も関係ありません。肝心なのは、その人に「お金を払う文化」があるかどうか。それが、成否を分けるポイントになるのです。
あなたが新規顧客を獲得し効率的に売上を上げたいと望むのであれば、ライバルのお客、もしくは同じ結果に対しお金を払う文化がある人を狙ってください。それだけで、あなたが会社にもたらす売上は格段に上がること間違いなしです。
船ヶ山 哲(ふながやま・てつ)レムズリラ代表
1976年、神奈川県生まれ。心理を活用したマーケティングを得意とし、人脈なし、コネなし、実績なしの状態から、起業後わずか5年で1,000社以上のクライアントを獲得。その卓越したマーケティング手法は、数々の雑誌やメディアに取り上げられ、現在ではテレビ番組(テレビ神奈川)のメインキャストを務めるほか、ラジオ番組(FM横浜)でもメインパーソナリティーとして活躍中の起業家。また、プライベートでは子供の教育を最優先に考え、マレーシアのジョホールバルに在住。(『The 21 online』2018年04月27日 公開)
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