前日の海外時間には、「米国と欧州連合(EU)は25日にも通商協議を行う」との報道が伝わると、欧米の貿易懸念が後退しユーロが大きく上昇しました。ユーロドルでは1.17ドル前半から1.1780ドル付近まで反発し、本日の東京時間においても堅調な推移となっています。また、この動きは完全にリスクオンの動きとなったため、円安とドル安が同時に進んだこともユーロドルの上昇に拍車をかけたものと思われます。

ドル円については、上記ユーロ高の影響で一時112円付近まで下落する動きが見られたものの、米・9月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想18.0、結果22.9)、米・新規失業保険申請件数(前週分)(予想21.0万件、結果20.1万件)が良好な内容だったことが分かると買い戻しが優勢になりました。NYダウが一時290ドル超上昇し史上最高値を更新したこともあり、全体的にリスクオンの流れを受け継ぎ、ドル円は112.582円と約2か月ぶりの高値を付けました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

前日は、オーストリア・ザルツブルクで開催されたEU非公式首脳会合において、難航している英離脱交渉をめぐって進展らしい進展はなかったものの、英・8月小売売上高指数が予想(前月比-0.2%/前年比+2.3%)に対して、結果が(前月比+0.3%/前年比+3.3%)となり、引き続きポンドは上値を拡大する動きとなりました。トゥスクEU大統領は英国の離脱案は「経済協力に関して提案されている枠組みは機能しないとの見解で全員が一致している」と述べ、依然合意に向けての道のりは険しいものの、10/18-19日のEU首脳会議までに大きな進展が見られた場合のみ、離脱合意に調印するための臨時首脳会議を11月に開くと発表されたことが好感された可能性があります。

リスクオンの動きを受けて新興国通貨も堅調に推移していますが、特に堅調だったのが南アランドです。一時7.863円まで上昇し、下値の底堅さを確認した格好になりました。南ア中銀政策金利発表では6.50%の据え置きが発表されましたが、政策委員会の4人が据え置きを主張した一方、3人が利上げを主張し、金利据え置きは僅差で決まったことがランド買いを加速させた一因だと考えられます。また、クガニャゴSARB総裁がタカ派姿勢を強めたこともプラス材料として考えられました。

注目のアルバイラク・トルコ財務相によるトルコ中期経済対策では、「GDPについては2018年を3.8%、2019年を2.3%、2020年を3.5%、2021年を5.0%とし、また、失業率は2018年末に11.3%、2019年は12.1%。2018年の経常赤字は対GDP比で4.7%」と発表、さらには、「さらなる税制改革の発表はない」との発言もあり、期待感もあって大きく買われたトルコリラが18.20円台から17.50円台まで急落しました。エルドアン・トルコ大統領による金融機関への介入が強まるとの警戒感があるものの、一旦は悪材料出尽くしとの思惑が強まり、トルコ円は18円付近まで値を戻しています。

全体的にリスクオンのマーケットになっていることもあり、少々の悪材料の場面は押し目買いのポイントになってきている可能性もあることから、今後は押し目買いのポイントを模索するマーケットになりそうです。

111.80円のドル円買いポジションは継続

ドル円に関しては、注視していた112.40円のラインを上抜けたこともあり、まだまだ上値余地が出てきました。111.80円のドル円の買いポジションについては、戦略を継続、膠着状態を脱したと考え、113円手前の112.90円付近での利食い戦略も継続したいと思います。

海外時間からの流れ

一部で注目されていたEU非公式首脳会合については、大きな進展なく結論は先延ばしされるかたちとなったため、あまり材料視はされませんでした。ディマイオ伊副首相が来年度予算で五つ星運動が要請している歳出が認められない場合、連立政権を離脱する可能性があると述べた事が報じられ、一時的にユーロ売りになりましたが、上述したように「米国と欧州連合(EU)は25日にも通商協議を行う」との報道が大きなユーロ買いに繋がりました。

NY時間については、NYダウが史上最高値を更新するなど、総じてリスクオンのマーケットとなりました。本日の東京時間に菅官房長官が「日米首脳は23日に会食し、26日に会談を実施する」と発言しているように、一旦マーケットの悪材料は出尽くし、次は日米通商協議に移行しそうです。

今日の予定

本日は、独・9月サービス業PMI(速報値)、加・8月消費者物価指数、加・7月小売売上高が予定されています。ただ、引き続きブレグジット関連、通商協議にかかわるヘッドラインが意識されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。