要旨

●2017 年度補正予算案が閣議決定となった。中心は防災対策をはじめとした公共投資であり、生産性・人づくり革命やTPP対策のための農業支援事業などが並ぶ。補正予算の追加歳出の規模自体は2.7 兆円とアベノミクス始動以後では最小規模であり、相対的に財政規律への配慮がみられる予算といえる。昨年度補正に比べて公共事業費は少なく、18 年度の公共投資はGDPベースで減少する見込みである。

景気好調下で補正予算は抑え気味に

 2017 年度の補正予算案が閣議決定された。内容については、事前報道や筆者が事前に執筆したレポートの内容に沿ったものであり、サプライズはない。追加の政策経費は2.7 兆円、その財源には主に国債費の下振れによる1 兆円のほか、追加の建設国債発行1.2 兆円、前年度純剰余金が充当される。

 追加歳出の中身は、主に防災・災害復旧であり、1.3 兆円が計上される。そのほか、生産性革命・人づくり革命に0.5 兆円が計上、具体的には、先進技術を活用する企業への補助金や保育所の整備に充てられる。TPP 対策として農地整備などの農林水産業支援事業に0.3 兆円、地政学リスクの高まりを背景とした安全保障環境の整備に0.3 兆円が計上される。

 補正予算の規模自体はアベノミクス始動後で最小であり、総じてみれば相対的に財政規律に配慮された予算といえる。足もとの景気好調、前年度税収の不振による財源不足などを背景に、補正予算の規模は抑え込まれた格好だ。

 短期的な経済効果の視点では、GDP押し上げに即効性のある公共事業に1.2 兆円(建設国債発行額)が計上されている。一方、昨年度の経済対策では2.8 兆円計上されており、本日補正予算と併せて閣議決定された18 年度当初予算では、公共事業関係費は6.0 兆円で17 年度から横ばいである。「17 年度補正+18 年度当初」の公共投資は「16 年度補正+17 年度当初」に比べて減額となり(例年、年末に編成される補正予算の公共事業の多くは、翌年度に繰越される)、18 年度のGDP公共投資は減少することとなろう。(提供:第一生命経済研究所

2017年度補正予算案のポイント
(画像=第一生命経済研究所)
2017年度補正予算案のポイント
(画像=第一生命経済研究所)
2017年度補正予算案のポイント
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 経済調査部
担当 副主任エコノミスト 星野 卓也