●民間企業の2017年冬のボーナス支給額を前年比+0.8%(支給額:37.3万円)と予想する。冬のボーナスとしては3年ぶりのプラスになるだろう。

●17年夏のボーナスは前年比+0.4%の微増となった。事業所規模別にみると、500人以上の事業所で前年比▲2.8%と大きく減少した一方で、5~29人で+2.0%、30~99人で+3.6%と、中小事業所での伸びが大きく、全体でみれば小幅プラスを確保した格好である。

●ボーナスの交渉は、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型、秋にその年の冬と翌年の夏の賞与を決定する冬夏型、賞与の度に交渉を行う毎期型などがあるが、大企業では夏冬型が最も多い(次が毎期型)。そして、夏冬型においては、前年の企業業績が交渉のベースとなる。17年の春闘では、円高等での影響で伸び悩んだ16年の企業業績の結果が反映されたことで、主要企業のボーナスは減少の形で妥結されていた。このことが、大企業の夏のボーナスが減少したことの背景にある。

●一方、中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことが多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。そのため、組合が存在しない多くの中小企業では、足元の好調な業績回復の影響を受けて夏のボーナスが明確に増加したものと思われる。また、中小企業における人手不足感の強まりも、人材確保の観点からボーナス増に繋がった可能性が高い。

●こうした「大企業でのボーナス悪化と中小企業での好調なボーナス」といった構図は、冬にも当てはまる。中小企業では、引き続き好調な企業業績と人手不足感の強まりとを背景に、冬のボーナスも明確な増加となる可能性が高い一方、大企業では、17年春闘結果が反映される形で、夏に続いて減少が予想される。もっとも、大企業においても、数は少ないとはいえ毎期型での交渉を行うところも存在する。そうした企業では、足元の企業業績の改善を受けてボーナス増額が見込めるだろう。その分、大企業の冬のボーナスは、夏に比べて減少幅を縮小させる可能性が高い。実際、経団連の調査によると、17年大手企業の冬のボーナス妥結結果は前年比▲1.19%となっており、17年夏の▲2.98%と比べると減少幅はマイルドになっている。結果として、中小企業で夏に続いて高い伸びが見込めることに加え、大企業では夏対比減少幅が縮小することから、冬のボーナス全体としてみれば、夏に比べて伸び率がやや高まる可能性が高いと予想する。

●もっとも、増加が予想されるとはいえ、伸び率自体はそれほど高いわけではない。物価上昇率を考慮した実質賃金でみるとゼロ近傍の推移が続くものと思われる。17年度後半の景気も引き続き好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。

●賃金の回復が実現するのは18 年度と予想している。17 年の春闘は、物価が下落し企業業績も伸び悩んだ16 年の結果を反映したことで物足りない結果に終わったが、18 年の春闘では、物価が上昇し、企業収益も好調な17 年の経済状況をベースに交渉が行われる。18 年の春闘賃上げ率は17 年対比で上昇する可能性が高いだろう。また、17 年度の好調な企業業績を反映して18 年のボーナスは夏・冬とも増加が予想される。18 年については、物価上昇を上回る賃金増加が実現するとみられ、実質賃金も改善するだろう。遅ればせながら家計部門への景気回復の波及が進むことが期待できる。

(提供:第一生命経済研究所

2017年冬のボーナス予測
(画像=第一生命経済研究所)
2017年冬のボーナス予測
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴