前日の注目材料であったFOMCについては、大方の予想通り25bpの利上げを行い、下限2.00%、上限2.25%に引き上げました。FOMC声明文の「金融政策は緩和的」という文言が削除されたことにより、ドル円は一時113.132円(当社レート)を示現しました。また、四半期に一度の経済・金利見通しによると、2018年の想定利上げ回数は4回、19年は3回、20年は1回となり、今回から加わった21年末の金利見通しは3.375%と20年の水準と同じ数字が発表されました。ただ、政策金利が中立水準に近づき、利上げの打ち止めが意識されたことに加え、パウエルFRB議長の記者会見では「経済は強く失業率は低い」「インフレは低く安定している」「金利は依然として低い」「金融政策は依然として緩和的」との見解が示されたものの、金利が2020年、2021年に中立水準を上回る必要があるとの確信は持っていないとの考えを示したことにより、上値が抑えられました。

緩やかな利上げのペースを2020年に一旦打ち止めを行うシナリオが公表され、サプライズを期待したマーケットは利食い先行の動きを見せました。このシナリオが公表されるまでは強い基調を示していましたが、一旦ドルの上値が抑えられたと同時に金融株が売られ、NYダウが引きにかけて大きく失速したこともドル円の下落に繋がったものと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

FOMCの内容はほぼ市場のコンセンサスから乖離するものではありませんでしたが、大きくドル買いに繋がる内容にはなりませんでした。こうなってくると強いドルの基調を中心に展開していた為替市場は次なる材料を探し出すと思われます。筆頭候補としては、米国を中心とした貿易摩擦ということになるでしょう。日米通常協議については、日米両政府が2国間の物品貿易を自由化する「日米物品貿易協定(TAG)」の締結に向けた交渉を始めることで正式に合意したと発表しました。「交渉中は米国から自動車などの関税引き上げは課されることはない」との発言もあり、FOMC後に下落したドル円のサポート材料になる可能性があります。

再び買い材料に売り材料が加わったドルについては、引き続きレンジ内での動きに終始する可能性があります。その中で、ひと際目立つ存在だったのが南アランド、トルコリラを中心としたエマージング通貨です。エルドアン・トルコ大統領が国連総会での所信演説で「高金利に反対」と従来の姿勢を維持したものの、中銀の独立性を認めたほか、「私が金融政策に影響を与えているという考えには反対」と述べるなど中銀に対して柔和な態度を取ったことが好感され、トルコリラ円は一時18.598円まで上値を拡大しました。また、ラマポーザ南アフリカ大統領が「ランドは過小評価されている」、グロエペ南アフリカ準備銀行(SARB)副総裁が「利下げよりも物価安定に注力するべき」と発言したことが好感されており、南アランド円では一時7.994円までランド買いが強まっています。ドル自体は動きづらい状況に変わりはありませんが、エマージング通貨を中心にリスクオンのマーケットへ誘導する可能性は十分ありそうです。

損切りは回避、ある程度想定内の動きに回帰

FOMC発表後に一時113.10円台までドル円は上昇しましたが、113円台からさらなる上昇には至らず、引き続き113円台では上値の重い地合いに変わりはありません。113.20円の損切りポジションも回避できましたので、引き続き112.80円のショートポジションは維持します。また、113円台でNYクローズを迎えなかったことで敵にテクニカル的にはまだまだ下落余地が残されているものと思われます。

海外時間からの流れ

前日の海外時間では、FOMCの発表、および日米首脳会談後の記者会見待ちで様子見ムードが広がっていましたが、トルコリラ、南ランドを中心にエマージング通貨が買われ、クロス円については比較的底堅い動きとなりました。その後に発表されたFOMCでは市場コンセンサス通り利上げを行い、ドットチャート、FOMC声明文においてもドルが売られる材料はあまりありませんでしたが、パウエルFRB議長が金利が2020年、2021年に中立水準を上回る必要があるとの確信は持っていないとの考えを示したことがドル円の上値を抑えるかたちとなりました。ただ、日米首脳会談後の記者会見では、「交渉中は米国から自動車などの関税引き上げは課されることはない」との発言も報道されており、下落したドル円などのサポートになる可能性があります。東京時間にドル円が113円台を回復できるかどうかが大きなポイントになりそうです。

今日の予定

本日の注目経済指標としては、米・第2四半期GDP(確報値)、米・8月耐久財受注(速報値)、米・新規失業保険申請件数(前週分)などになりそうですが、ホールデン・MPC委員、カーニー・英中銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁、プラート・ECB専務理事、パウエル・FRB議長などの要人発言が多数予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。