昨日については、欧州通貨に引っ張られるかたちでリスク回避の動きが強まる結果となりました。イタリア極右政党「同盟」の有力議員で下院予算委員長のボルギ氏がラジオで「イタリアが自国通貨を持てば、大半の問題は解決すると本当に確信している」などと発言し、イタリアのユーロ離脱懸念が高まったことでユーロは急落、ユーロドルは1.1550ドル付近から1.1500ドル付近まで下落しました。ただ、ボルギ氏が一部通信社とのインタビューで「イタリア政府はユーロ圏を離脱する意向はない」と表明し、ラジオでの発言を否定すると一転買い戻しが優勢となり、急落の始まった1.1550ドル付近まで値を戻し、その後はビルロワドガロー・フランス中銀総裁が欧金融政策について「漸進的な正常化は正当化される」との見解を示しユーロドルは1.1570ドル付近まで上昇しました。
本日は、英保守党の党大会最終日のため、メイ首相が演説をする予定であり、ブレグジット関連の報道でポンドについてはリスク回避の動きが強まっており、一時1.2940ドル付近までポンドドルは下落する場面もありましたが、ラーブ英EU(欧州連合)離脱担当相が「英国北アイルランドの問題は大げさ」などと発言すると1.3000ドル付近まで反発するなど、非常に敏感なマーケットになっています。時間は未定ですが、本日のメイ英首相の演説が注目されそうです。
ただ、本日の東京時間ではイタリア政府の予算案で財政赤字削減を計画との報道によりユーロが急騰しており、イタリアのコリエレ紙は、イタリア予算計画は2021年に財政赤字比率2%を目指すと報じており、これまでのユーロショートの巻き戻しが入る可能性もあるため、引き続き欧州通貨に振り回される一日になりそうです。
今後の見通し
これまでのユーロ売りの材料としては、イタリアの財政問題が悪材料として意識されていましたが、本日の東京時間のヘッドラインはユーロを買い戻す材料としては十分な内容なため、ユーロのみならず日経平均株価も買い戻されており、引き続きリスクオンの地合いが継続する可能性がありそうです。
ユーロの問題がある程度緩和されてきており、後はポンドという流れになってきそうです。メイ英首相はEU離脱後の移民政策に関する提案を発表し、EU加盟国からの移民に対する優遇策を廃止し、単純労働への従事を目的とした移民は抑制する原則を掲げています。同首相は英BBCラジオで「どの国の出身かではなく、英経済に対する貢献度に基づいて判断する」と述べ、政府は新政策の「白書」を今秋まとめた上で、来年には関連法案を議会に提出する予定です。ただ、ジョンソン前外相は、政府与党・保守党の党大会で演説を行い、党としてメイ首相を支えてもらいたいが、首相のEU離脱案は廃案に追い込むべきだとの考えを示しており、落としどころが見つかればポンド買い、強硬離脱派との軋轢が強まれば、さらにポンド売りが強まる展開になりそうです。
ユーロ発のリスクオン期待も加ドルのサポート材料になりそうだ
現在の水準はほぼ持ち値と同じ88.70円台の加ドル円ですが、昨日こそ円買い基調が強まったことで上値が重くなりましたが、本日の東京時間より再度リスクオンの地合いが強まっていることもあり、このまま戦略は継続し、利食いレベルは89.80円付近、88.20円を下抜けてしまった場合は損切りとします。
海外時間からの流れ
ユーロ関連の報道がマーケットの中心になっていましたが、パウエルFRB議長が「米経済見通しは際立って良好」「米労働市場に過熱するリスクはなく、インフレが急速に進む兆しはない」「段階的な利上げの継続が適切」などと述べており、まだまだドル円は上値を拡大する可能性がありそうです。ユーロ、ポンドを筆頭とした欧州通貨不安が少なくなれば、一気にクロス円は上昇基調が強まるものと考えられます。
今日の予定
本日は、経済指標としてはトルコ・9月消費者物価指数、英・9月サービス業PMI、米・9月ADP民間雇用者数、米・9月ISM非製造業景況指数などが予定されておい、要人発言としてはメイ英首相の演説が注目されそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。