昨日については、最も注目されていた英保守党の党大会最終日のメイ英首相の演説内容が、「英国は合意なき離脱を恐れない」などとこれまでの話から変わりない内容だったこともあり、ポンドドルは1.300ドル付近から1.2960ドル付近まで売られたものの、その後は材料出尽くし感から1.3020ドル付近まで買い戻されました。ただ、パウエルFRB議長が「米国経済は極めてポジティブ」「まだ中立的な金利水準には遠い」「中立金利を超える可能性がある」などと述べると、ドルが独歩高の動きを見せポンドドルは1.2920ドル台まで下落しました。
何と言っても、昨日の主役はドルの動きになりました。米・9月ADP民間雇用者数が予想18.4万人に対して23.0万人、米・9月ISM非製造業景況指数が58.0に対して61.6になるなど、非常に強い数字を弾き出しました。ISM非製造業景況指数に関しては、21年ぶりの高水準だったこともあり、113円台後半で伸び悩んでいたドル円が再度114円を上抜ける切っ掛けとなりました。その後も、米10年債利回りが3.185%付近まで上昇し、2011年7月上旬以来の高水準を付けるとドル全面高の展開となり、NYクローズ間際にパウエルFRB議長の発言が決定打となり完全なドル独歩高の状況を作りだしました。
今後の見通し
堅調な推移を継続していたドルですが、パウエルFRB議長自らまだまだ利上げ余地があることを示唆したことは、ドルの買い意欲がさらに強まる可能性がありそうです。また、米国金利の動きとドル円の動きの相関性が非常に高まっています。これまでも現状のマーケットはドル高のマーケットでなくリスクオンのマーケットの動きを見せてきたこともあり、ドル円上昇に連れるようにクロス円も上昇傾向が強まるのではないでしょうか。また、リスクオンマーケットにてプラスの恩恵を受けやすいリスク資産通貨(トルコリラや南アランドなどのエマージング通貨)はさらに上昇傾向が強まりそうです。
強い経済指標に議長自らドルの買い場を提供している状況で、唯一懸念点があるとすれば米中貿易摩擦です。北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に、中国がカナダやメキシコと自由貿易協定を結ぶことを阻止する規定が盛り込まれたと一部で報道されており、引き続き米中貿易摩擦についてはリスク回避要因として捉えられそうです。ただ、ポンペオ米国務長官が8日に中国を訪問することから、米中貿易交渉が再開するのではとの期待感もあり、それまでは現状のリスクオンマーケットが継続すると考えています。
東京時間はクロス円調整も、底堅い動きには変わりなし
引き続き現在の水準はほぼ持ち値と同じ88.70円台の加ドル円ですが、昨日はドル円上昇の動きに連れるように加ドル円も89.20円台まで上昇しました。特段リスクオンマーケットが崩れる材料もないことから、引き続き利食いレベルは89.80円付近、88.20円を下抜けてしまった場合は損切りの戦略は継続します。
海外時間からの流れ
一般的に最もハト派と見られているエバンズ米シカゴ連銀総裁が利上げ継続に前向きな発言をしたことで、FRBが利上げ継続に盤石な体制を築きつつあります。昨日の東京時間に、イタリア財政赤字縮小計画への期待感から1.1590ドル台まで反発したユーロドルですが、本日の東京時では1.1460ドル台まで下落しています。リスクオンのマーケットではありますが、ドル買い基調も強いため、クロス円であれば買い戦略、ドルストレートであれば売り戦略という流れが続いています。
今日の予定
本日は、経済指標としては米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・8月耐久財受注(確報値)などが予定されています。昨日は米国の経済指標が非常に強いものだったため、本日も引き続き経済指標に注目が集まりそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。