米ブルームエナジーは2001年に創立された経済合理性が高い燃料電池を製造するベンチャー企業だ。同社は、スピードが速い技術革新により、経済性と電力供給の安定化を実現する業務用・産業用燃料電池発電システムで業界を常にリードしている。「クリーンエネルギーの星」であり、投資家の期待も熱い。

目次

  1. ブルームエナジーのビジネスモデル
    1. 大手優良顧客が革新技術を選ぶ
    2. ビジネスモデルはシンプルで従来型 ウリは機器技術の革新性
    3. 2018年7月に上場してから株価は2倍
  2. 黒字化は未達も赤字幅の着実な縮小
    1. 売上総利益率は前年同期のマイナスから上昇
    2. アナリスト評価も低くない
  3. ブルームエナジーの弱みは「補助金依存」
    1. 米トランプ政権が補助金の打ち切りや縮小を打ち出したら……
    2. モルガンスタンレー証券のアナリストは楽観的な見通し

ブルームエナジーのビジネスモデル

大手優良顧客が革新技術を選ぶ

ブルームエナジーが有望な理由のひとつは、クリーンエネルギー推進に熱心な優良大手顧客を多く抱えることだ。通信大手AT&T、ホームセンター大手ホームデポ、小売大手ウォルマート、テクノロジー大手アップル、ネットオークション大手イーベイ、半導体大手インテルなどの名だたるクライアントに対して、都市ガスを燃料とし、発電効率が高い固定設置型のエナジーサーバーを販売し、さらにアフターサービスの運用及びメンテナンスを提供している。

テンバガー
(ブルームエナジーの売上における各顧客の割合。通信大手AT&T、ホームセンター大手ホームデポ、医療大手カイザー・パーマネンテなど、規模が大きく安定した取引が可能な顧客を多く抱える。(出典: Bloom Energy)

ビジネスモデルはシンプルで従来型 ウリは機器技術の革新性

ブルームエナジーのビジネスモデルは、機器販売とアフターサービスという従来型のシンプルなものに過ぎない。同社の2017年における売上構成は、発電装置が48%、設置工事が17%、運用及びメンテナンスが20%と、売上の85%が装置関連で、残り15%が電力の「切り売り」だ。

ウリとしているのは機器技術の革新性だ。天然ガスを燃やすことなく電気に変換することができるクリーンさ。地球温暖化ガスが発生しない。太陽発電より効率的で、サーバーは簡単に増設可能、安全にモジュールを交換でき、現場で独立したメンテナンスも可能と、利点が多い。災害や停電時の非常用電源として、分散型電源の需要も高い。

テンバガー
(第5世代のエナジーサーバーは発電効率が最高65%と、第1世代の最高54%と比較して、数年の間に10ポイント以上と格段に向上している。(出典: Bloom Energy))

現在販売中の第5世代のエナジーサーバーは発電効率が最高65%と、第1世代の最高54%と比較して、数年の間に10ポイント以上と格段に向上している。この技術革新力こそブルームエナジーの強みであり、太陽発電などの競合に対するコスト競争力を確保する源泉となっている。

2018年7月に上場してから株価は2倍

ブルームエナジーの新規公開(IPO)以来、業績は市場予想を上回る好調である。事実、株価も2018年7月25日にニューヨーク株式市場に1株15ドルで上場以来、およそ2倍の30ドルとなった。9月14日現在の時価総額は31億3700万ドルだ。

米エネルギー情報局によれば、米国における商業・産業用電力小売の年間市場規模は1兆6000億ドル。このうち、ブルームエナジーが参入したクリーン電力分野は1750億ドル規模だ。このなかで、同社の売上は、2016年の2億854万ドルから2018年には3億7600万ドルと順調に伸びている。

黒字化は未達も赤字幅の着実な縮小