医師にも人気の高い不動産投資ですが、収益性や将来性が期待できる反面、住宅価格の下落や「借り手・買い手がつかない」といった潜在的なリスクも潜んでいます。
英国の不動産情報サイト「プロパティー・ロード」や豪州シドニーの不動産コンサルタント、アハマッド・イマーム氏など専門家のアドバイスから、特に不動産投資初心者が見落としがちな「不動産投資の基本」を学び、賢く資産を運用しましょう。
コツ1 購入後に必要となる予算を算出しておく
不動産に限らずすべての投資は、自分の生活水準に見合った正しいファイナンス計画を立てることから始まります。「高所得だが出費も多い」という医師も少なくないようです。経済的に負担にならない範囲で投資できる範囲を見極めましょう。
不動産は特に高額な買い物です。「買ったはいいが、想像していた以上にお金がかる」といった誤算に慌てないように、購入する前に公共料金から食費、保険料まで自分のあらゆる支出を見直し、そこに法的手数料や予期せぬ事態に備えた臨時費も上乗せして、購入後に必要な予算を算出しておきます。
購入した不動産を売却した場合に生じるROI(投資した資本に対して得られた利益)や、賃貸収入を視野に入れている場合は利回りを予想することも非常に重要です。不動産投資の最低ラインは、「投資による収入が支出をカバーできるか?」です。
コツ2 人気上昇の兆しが見える地域を探し、念入りにリサーチする
初心者は「人気の地域に投資しておけば間違いない」と思いがちですが、既に人気の地域の不動産は価格が高く手が出しにくいだけではなく、今以上の成長があまり見込めない可能性があります。
長期的なリターンを期待するのであれば、地元のインフラあるいは交通機関の改善などで、人気上昇の兆しが見える地域をいくつかピックアップしましょう。候補地の治安・利便性は勿論、人口や世帯構成、平均所得からどのような層が潜在的な借り手となるかを割り出し、空室率や過去~現在の不動産価値なども念入りにリサーチし、最終的な投資先を決めます。
コツ3 地元の不動産業者や不動産投資家から情報を得る
候補地や物件についての有益な情報が欲しければ、購入を検討している地域の不動産業者や投資家など、知識と経験が豊富な専門家と話すのが一番の近道です。不動産投資は初めて、または土地勘がないのであればなおさらです。
「不動産業者に相談すると、売るために良い点ばかりをアピールするのではないか?」という懸念もあるでしょうが、情報を得るチャンスは最大限に活用すべきです。
コツ4 候補物件は徹底的にチェック
購入したい物件を見つけたら、実際に何度か足を運んでみましょう。一度下見をしただけでは、例えば日当たりや騒音、近所の住人の素行といった細かい背景に気が付きません。二度目以降の下見は初回とは違った時間帯に行うことで、見落としていた重要なことが見えるかも知れません。
購入後の目的(賃貸、転売)に関わらず、こうした細かい背景は不動産の価値自体に影響をあたえるため、後悔したくなければ事前に把握してから購入を決める必要があります。
コツ5 専門家に相談し、最も有利な「不動産投資ローン」を選ぶ
投資を目的とする不動産を担保に金融機関から購入資金の融資を受ける、「不動産投資ローン」の利用を検討している人も多いでしょう。
審査基準は金融機関によって異なりますが、一般的に住宅ローンよりも審査基準が厳しいようです。しかし貸し手は貸し倒れのリスクを抑えるために借り手の返済能力を重視しますので、年収の高さや収入の安定性という点では、特に勤続年数の長い医師は有利な立場に立っています。自己資金や物件の収益性なども審査結果に大きく影響するため、しっかりと下準備しておきたいものです。
注意したいのは「不動産投資ローン」の選び方です。最も有利な条件で融資を受けたいところですが、色々ありすぎて「どれを選べば良いか分からない」と困惑してしまうかも知れません。不動産情報と共に資金調達のアドバイスも提供してくれる、信頼できる専門家に相談することで、自分の経済状況や生活スタイル、投資物件の性質に見合った融資を見つけやすくなるでしょう。
コツ6 バランスのよいポートフォリオでリスクを分散させる
値動きなどによる資産価値減少のリスクを最低限に抑えるために、ポートフォリオに多様性を持たせましょう。不動産のほかに株式や債券、投資信託などの金融商品をバランス良く組み合わせます。
複数の不動産に投資するのであれば収益性の高さだけを追求するよりも、家族向けのマンション、一戸建て、学生向けのアパートなどを、異なる地域に所有することで、長期的なリターンが期待できます。ポートフォリオにバラエティーを持たせるという観点では、海外の不動産に投資するのも一案です。
コツ7 焦らず、チャレンジ精神を忘れない
初めての不動産投資は安全・確実にリターンを得ることに専念すべきですが、慎重になり過ぎるあまり行動に移せなくなっては元も子もありません。数えきれないほどの不動産投資セミナーに参加したり、関連書籍を片っ端から読み漁ったりするなど、必要以上の情報を頭にインプットしてしまうと、逆に決断が鈍ります。
可能な限り多くのことを学び、投資判断を磨くことは大切ですが、始める前に全ての知識を身に付けることはできません。
だからといって最初に出会った物件に「気に入った」という理由だけで安易に投資すると、後悔する結果になりかねません。
チャレンジ精神を忘れず、かつ慎重に。経験を通して知識を伸ばすというバランスが重要です。
(アレン琴子、英国在住のフリーライター / d.folio)