前週末の海外時間では、注目のブランソン牧師については事前の報道通り解放という結果となりました。ただ、期待が大きすぎたのか解放報道後は「Sell the fact」となり、一時トルコリラ円は18.70円台まで下落したものの、その後は再度19円台に回復しています。ブランソン牧師が解放されたことにより、米国のトルコへの関税倍増撤廃があるかどうかが次の焦点となってきており、引き続き米国とトルコの関係には注目する必要がありそうです。

また、同じエマージング通貨である南ランドについては、12日にムーディーズが格付けを行う予定でしたが、急遽「Moody's puts on hold ratings update for SA」格付け更新なしとの報道になりました。結果的には格付けの変更はなかったとの見方から南アランドへの影響は限定的となっています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週については、EUサミットを筆頭としたブレグジットを巡る報道、そしてムニューシン米財務長官が要求した「為替条項(currency provision)」導入警告や為替報告書に代表される日米通商協議に関する報道がマーケットの主役となりそうです。まず、ブレグジット関連だと、「英国とEUは15日にもブレグジット協議の進展について公表する」と報道されているものの、コーヴェニー・アイルランド外相が「まだ何も合意しておらず、ここ最近の楽観的見方は根拠となるものが少ない」と述べたこともあり、ブレグジットを巡る交渉に対する期待が後退しています。18日の日本時間で22時~24時には記者会見が予定されており、合意があるとすればこの日になりそうですが、一部報道にあるように11月17日、18日に臨時EUサミットを開くようなことになると、目先はユーロ、ポンドなどの欧州通貨は売られる動きになりそうです。ユーロについては、ドイツのバイエルン州議会選挙でのメルケル独政権の敗北に加え、エッティンガー欧州委員のユーロ高牽制発言が意識されていることもあり、引き続き上値は重そうです。

ドル円については、週末にムニューシン米財務長官が「物品貿易協定(TAG)」交渉において、為替介入をはじめとした競争的な通貨切り下げを防ぐ「為替条項」を要求する考えを示しました。既に韓国、カナダ、メキシコとは「為替条項」を導入しており、今後の日米通商交渉においても同様の内容を目指すものと考えられます。「物品貿易協定(TAG)」については、自動車関税25%と円安是正25%が焦点となってくることが想定されるため、無風イベントになるかもしれないとの思惑もあった日米通商協議ですが、今回の報道によりドル円の上値は重くなることが想定されます。為替報告書については、一部報道では11月のG20首脳会議の場でトランプ米大統領と習中国国家主席との首脳会談の可能性が模索されており、中国の為替操作国認定が見送られる可能性が高まっています。4月の為替報告書では日本は監視対象国のままでしたが、「実質実効為替レート」では25%の円安、「名目為替レート」でも円安と明記されていたことで、マーケットの興味が中国から日本へ移ったかもしれません。内容によってはリスク回避の円買いが強まる可能性があります。

111.80円~112.80円のレンジを抜けるまでは戻り売り戦略継続

前週末の戦略については、ドル円112.50円でのショート戦略。利食い112円割れ(111.90円)共に機能しました。株価主導でのリスク回避という動きは一旦落ち着きを見せているものの、ドル円については今後の見通しにて上述した理由があるため、引き続き戻り売り戦略が機能しそうです。112.50円付近が理想ですが、112.40円台まで戻りがあればショート戦略。利食いについては引き続き111.80円台、損切りについては112.80円上抜けとします。111.70円を下抜けてくると一旦111.80円のサポートラインが崩れることになるので、追いかけ売りも視野に入れています。

海外時間からの流れ

米・10月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が市場予想100.5から結果99.0に若干悪化したものの、マーケットの反応は限定的となりました。ブランソン牧師の解放が終了し、次の焦点となるブレグジット関連の報道がマーケット全体の上値を重くしたと考えられます。今週予定されているEUサミットにて合意できなければ、来年3月の「合意なき離脱」が現実味を帯びてくることもあり、それまでは積極的に欧州通貨を買う動きというのは控えられる可能性がありそうです。

今日の予定

本日は、米・9月小売売上高、米・10月NY連銀製造業景気指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。