前日については、米財務省から公表される半期為替報告書が未だ公表されていないこともあり、上下に動きづらい展開となりました。また、17日-18日にかけてEU首脳会談が予定されていることも、欧州通貨の動きを限定的にさせており、ポジション調整主体の動きとなりました。その中で、異質な動きを見せたのがカナダドルです。BOC(カナダ中銀)が公表した7-9月期の業況調査が予想以上にタカ派だったこともあり、24日に予定されている政策金利が利上げになるだろうとの思惑が主導し、カナダドルが急騰しました。また、Bloombergにおいても政策金利予想が25bp利上げ予想になっており、調整主体のマーケットでは、カナダドルがマーケットを牽引するかもしれません。

また、前日までは楽観論が悲観論に一気に転換したブレグジット問題ですが、メイ英首相が「ブレグジット協議は最終局面に入った」と発言しており、一旦落ち着きを見せています。ただ、この落ち着きがさらにEU首脳会談待ちの姿勢を強める可能性もあり、目先注目すべき通貨はカナダドルになりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

通常であれば前週末金曜日、遅くても昨日月曜日に公表されるのではないかと考えられていた半期為替報告書が未だ公表されていません。既に週末にムニューシン米財務長官が「物品貿易協定(TAG)」交渉において、為替介入をはじめとした競争的な通貨切り下げを防ぐ「為替条項」を要求する考えを示したこともあり、半期為替報告書が公表されるまでは方向感が見極めにくく、ドル円は上値の重いまま公表待ちという流れになりそうです。トランプ政権下では3回中2回は期限前、1回は期限2日後に公表(昨年10/17日)されているため、近いうちに公表される可能性が高いと考えられます。

想定外だったのが、独バイエルン州議会選挙における与党キリスト教社会同盟(CSU)の歴史的大敗がユーロの売り材料にならなかったことです。エッティンガー欧州委員のユーロ高牽制発言がユーロ下落の火種となる可能性もありましたが、ドルが半期為替報告書の公表待ちと同じようなかたちで、ユーロについては今週17日-18日に開催されるEU首脳会談の記者会見待ちの可能性が高そうです。ただ、ドルが積極的に買われない地合いである以上、ユーロドルについては一旦調整の戻しがあるかもしれません。ただ、1.16ドル台では上値の重さが確認できるため、ロングであれば1.16ドル台での手仕舞、ショートであれば1.16ドル台まで引き付けての戻り売りに妙味がありそうです。

トルコリラ、南アランドなどが資源国通貨、エマージング通貨の主役になる日が多かったですが、ここにきて再度カナダドルにフォーカスが当たっています。BOC(カナダ中銀)が公表した企業景況感調査が非常に強く、マーケットでは来週の利上げをサポートする内容であったと考えられており、85円半ばから86.30円台まで急伸しており、86円割れなどの押し目の場面ではロングにするのも面白いかもしれません。

上値の重いドル、短期的に買い戻されるユーロ、利上げ期待のカナダドル、どれを選択するか

上述したように戦略的には半期為替報告書待ちで上値の重いドル、EU首脳会談待ちでバイエルン州議会選挙の大敗がユーロ売りにならず買い戻されているユーロ、そして利上げ期待が非常に高まっているカナダドルの中からの戦略になりそうです。ただ、外部要因に左右されない通貨ペアとしてはカナダドルということになり、押し目買いの戦略を優先したいと思います。85.90円台まで引き付けての押し目買い戦略、利食いについては86.90円台、85.50円下抜けを損切りレベルとします。

海外時間からの流れ

米・10月NY連銀製造業景気指数は市場予想20.0に対して21.1と予想を上回ったものの、より重要度の高い米・9月小売売上高が市場予想+0.6%に対して+0.1%となり、ドル売りが強まりました。また、徐々に買い戻されていたユーロについても、この時に1.16ドル台を回復しました。混沌としているブレグジット問題ですが、メイ英首相が議会演説でブレグジット交渉が合意に近づいていると述べたことでポンドドルは1.3180ドルまで上昇しましたが、こちらについてはEU首脳会談が終了するまでは流動的な動きになりそうです。

今日の予定

本日は、英・9月雇用統計、米・9月鉱工業生産、米・8月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。