前日については、引き続き24日のBOC(カナダ中央銀行)の金融政策決定会合にて利上げを織り込む動きが主導しカナダドル円は堅調に推移しました。一時86.879円まで続伸し、マーケットが材料過多で混沌としているなか、強いカナダドルを維持したかたちとなります。2月の株価暴落からのリスク回避の動きとは今回は違う旨の寄稿を以前させていただきましたが、VIX(恐怖指数)も17まで低下し、NYダウについても一時560ドル超上昇するなど、目先の株価主導でのリスク回避の動きは落ち着きを見せつつあります。

ただ、米財務省から公表される半期為替報告書が未だ公表されていないこと、17日-18日にかけてEU首脳会談が予定されていること、22日までに公表予定の欧州委員会によるイタリアの2019年予算案の審査結果待ちの姿勢になっており、本日については引き続き方向感が希薄になる可能性があります。明日からいよいよ本格的にビッグイベントが幕開けする可能性がありますが、本日についてはカナダドルの強さに付いていく戦略に妙味がありそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

半期為替報告書については、茂木経済財政相が「為替条項」に関する協議は日米財務相により協議されると述べ、麻生財務相が日米財務相会談の場でムニューシン米財務長官から「為替条項」への言及はなかったと述べたことで、「為替条項」に対する先行き不透明感はやや薄れつつあります。日米通商協議は、来年1月から開始されると既に報じられており、ムニューシン米財務長官が日本との新しい「物品貿易協定(TAG)」交渉において「為替条項」導入に言及したことで、「実質実効為替レートで25%、名目為替レートでも円安」という表現の変更が懸念されていますが、例えあったとしても影響は限定的になるかもしれません。中国に関しては、トランプ大統領の大統領選挙時の公約通りに為替操作国と認定されるのかどうかという点がポイントですが、既に認定されないのではないかとの報道もあることから、リスク回避の材料については以前ほどは意識されていないかもしれません。

EU首脳会談については、今回ではまとまらず11月、もしくは12月などに延期されるのではないかとの見方が多数を占めており、バルニエ欧州連合(EU)首席交渉官が「英離脱移行期間を1年延長する可能性に柔軟姿勢」とも発言しているので、徐々にリスクヘッジの動きを織り込みつつありますが、実際に「合意なき離脱」の可能性が示唆されればポンドは売られる動きにはなりそうなため、明日のEU首脳会談後の記者会見待ちという姿勢に変わりはなさそうです。

地政学的リスクについては、サウジアラビアの反体制ジャーナリストのカショギ氏が、トルコのサウジ領事館での尋問中に死亡した事件が取り沙汰されていますが、ブランソン牧師の解放問題などの問題を乗り越えたトルコリラは19.70円台まで続伸し、南アランド円についても7.90円台まで回復しており、エマージング通貨については引き続き堅調な推移になりそうです。

ビックイベント前にとるポジションとしてはカナダドルが最適

米国、日本、中国、欧州、英国のイベント待ちになっており、目先強い通貨、弱い通貨という観点で見るとカナダドルの強さが目立ちます。85.90円台までの押し目があればベストな状況でしたが、東京時間の高値86.30円を上抜けた時点で追いかけ買いをしております。87円手前で一旦上値が抑えらえていますが、引き続き株価が強い基調を維持するのであれば、87円を上抜け87.30円付近まで続伸すると考えています。損切りレベルは85.90円に引き上げます。

海外時間からの流れ

112円付近で堅調な推移を見せていたドル円ですが、米・8月JOLT労働調査が市場予想690万件に対して713.6万件になったことから、欧州時間の高値を上抜け112.289円まで上昇しました。ただ、半期為替報告書待ちの姿勢に変わりはなく、本日も112.417円まで反発しているものの、大きくポジションを傾けるような動きにはなっていません。NY時間では、EU離脱のバックストップ案が議会を通過しないだろうと報じられるとポンドが売られポンドドルは1.31720ドル、ポンド円は147.70円台まで下落しましたが、こちらもEU首脳会談待ちの姿勢になっており、大きくポジションを傾ける動きにはなりませんでした。

今日の予定

本日は、英・9月消費者物価指数、英・9月小売物価指数、米FOMC議事録公表などの経済指標が予定されています。また、要人発言としてカンリフ・英中銀副総裁、ブレイナード・FRB理事などが会見予定です。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。